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パタゴニアの環境保全・投票運動「VOTE OUR PLANET」【PR研究所002】

 2019年7月21日参議院選の日、アウトドアブランドのパタゴニアジャパンは全ての直営店を休業し、従業員が投票へ行けるようキャンペーンを行った。

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 「VOTE OUR PLANET(私たちの地球のために投票しよう)」と題したこのキャンペーンの目的は、未来の地球環境のため、選挙に行く従業員のため、投票することの重要性を再考するためだ。このキャンペーンに併せた公式SNSの投稿には #私たちの地球のために投票しよう というハッシュタグも付いており賛同する投稿も多く見られた。

 またInstagram, TwitterのSNSでの発信だけでなく実店舗でもPR施策を行った。「VOTE OUR PLANET」ステッカーの配布を行い、簡単にキャンペーンへの賛同が示せるようにした。またヨコハマ経済新聞によると、選挙や政治から未来について考えるワークショップ「ローカル選挙カフェ」が開催され、様々なバックグラウンドから集まった参加者がディスカッションをする場所も設けられた。
 これらの一連の活動は多くのメディアに取り上げられパタゴニアジャパンの「VOTE OUR PLANET」は2019年を代表するPR事例の成功例となった。

 PRの事例として特に注目すべきは2点ある。


 1点目は、このキャンペーンによる成功は短期的なものではなく長期的なもので図っているところだ。パタゴニアのような大企業ともなると休業することでの短期的な利益の損失は決して少なくないだろう。しかし、目先のことよりもパタゴニアという一貫したスタンスを通すことを優先しファンの賛同と信頼を獲得した。その賛同と信頼は、結果として長期的にファンからの大きな支持を得ることに繋がっている。


 2点目は、オンラインとオフラインの垣根を完全に超えていることである。オンラインについては、SNSでハッシュタグや投稿を中心に簡単にキャンペーンへの賛同が示せる。オフラインでは、実店舗でのステッカー配布やローカル選挙カフェをはじめとした施策が取られている。何よりも面白いのは「実店舗の閉店をSNSに載せる」「VOTE OUR PLANETステッカーをストーリーに載せる」「ストーリーで見たからあえて実店舗に行く」などオンラインとオフラインが垣根なく設計されていることだ。

 パタゴニアの掲げるビジョンや「こうみられたい」というイメージのために全社動員されているところ、インナー広報とアウター広報の強い結びつきを感じます。

 今回はパタゴニアの「VOTE OUR PLANET」一つを切り取って事例研究としたが、パタゴニアがPR観点で素晴らしいのは全体戦略と他にも様々なステークホルダーに対し継続的に行っているキャンペーンの数々である。引き続き、一貫して環境保全に取り組むパタゴニアのPR事例を研究していきたい。

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