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幼いころの不安を和らげてくれるお守り

幼少期のころ、わたしにはとってもお気に入りのねこの人形があった。大人の両手に収まるほどの大きさの茶トラの人形。

気にいって、いつでも一緒だったらしい。小さい頃の写真にもよく映り込んでいて、肌身離さず持ち歩いていたことがわかる。

あるとき、その人形をわたしはなくしてしまった。当時の母は焦って(いまならこのときの母の焦りがどの程度のことなのか理解できる)、全くおなじ人形を急いで購入した。

が、なくしたと思った人形は、あとから出てきて、全く同じねこの人形がわたしの手元に2つ残った。

成長するにつれて人形との距離もどんどんと離れていき、いつしか使わなくなったが、母が大事に取っておいてくれたらしく、30代になったいまも実家に、ふたつ揃って飾られている。

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ときは流れて2019年、わたしはまさかの双子を妊娠した。それを聞いて母が「ねこの人形、ふたつあるからちょうどいいわね」と言った。

確かに。ちょうどいい。

その人形はライナスの安心毛布のように、幼いころのわたしの不安を支えてくれていたものだ。双子の支えにもなってくれるかもしれない。

双子が生まれたらひとつずつ渡そう。そう思った。

しかし、幼い双子は動物をめちゃくちゃに怖がった。わたしはスヌーピーが大好きなのだけれど、部屋に飾られたスニーピーのポスターを見て号泣する始末で、そんな双子にねこの人形なんて渡せるわけがない(スヌーピーを動物だと認識できることがすごい)。

「女の子ってお人形大好きだよー」

と言っていた先輩ママの顔が浮かぶ。お人形が好きかは子による。そんな当たり前のことを、改めて思う。

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ということで、子どもが人形というものを理解し、かわいいと思えるまで、2年ほどの期間を要した。

そしてこの2年の間に、わたしは双子にあのねこの人形をあげる気がすっかり失せてしまった。

なぜかというと、双子は全くものに執着しない子で、ふたりには「ものがお守りになる」みたいな感覚が、いまのところないように見えたからだった。

わたしがそうだったから、当たり前のようにみんなライナスの安心毛布的ななにかが必要なのかと勝手に思い込んでいたが、そんなことはなかった。

人形でなくてもいいから、なにか「これがあれば安心」というものをつくってあげたいと思っていたのだけれど、いまの双子にはあまり必要がないらしい。

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ねこの人形は「お守り」にならなくても人形として活用できるかと思ったけれど、双子はそもそもこのねこの人形を気に入らなかったので(笑)、それなら別にいいかとあげること自体をやめた。

今年5歳になる娘は、いまでも特にものに執着することはない。もしかしたら、このままないのかもしれない。

それで最近ふと、もしかしたら双子は互いの存在をお守りに、支え合いながら生きているのかもしれないと思ったりした。

もちろん双子でなくても、ものに執着しない子はきっといるし、ライナスの安心毛布的なにかを特にもたないまま大人になった人もきっといるだろう。

でも、双子を見ていると、どうも互いの存在がお守りになっているように見えてならない。

本当に幼いころから、まだ言葉も話せないころから、ふたりは互いを大事にしていた。喧嘩することも多いけれど、いつでもふたりはチームのようなのだ。

どちらかが泣いていると、もう一方が泣いている理由を説明してくれる。一方が従兄弟とケンカすると、もう一方はどんな状況でも双子の肩を持つ。どちらかがはじめての体験を前に怖がっていると、「わたしが先にやるよ」ともう一方が前に立つ。

そうやって無意識に、日々助け合って生きている。

もちろん双子だからこその我慢や葛藤があることは、実感としてわかっている。

それでも、きっと双子だからこそのよさもある。これは母の勝手な解釈かもしれないけれど、少なくともいまのわたしにはそう見えることが少なからずある。

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「お守りをもつ」というのは人生において、とても大事なことだと思う。それがなんであれ、個人にとってはかけがえのないもので、生きるのに必要なものだろうと思う。

幼いころのわたしにとって、それはねこの人形だった。

でも、別にそれはものでなくてもいい。というか、もし双子が互いを支えにいまを生きている側面があるのだとしたら、それはすごく豊かな人生だなと思う。

これから先、どんな成長を遂げて、双子の関係性がどう変わっていくのかはわからない。

でも、親ではない誰かに支えられて生きているという感覚を幼いころから持てていることは、きっとこれからの人生に少なからずよい意味を与えてくれると、信じている。

というか、親としてそう信じてたい。勝手なエゴかもしれないけれど。


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