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映画レビュー集【日本映画】

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日本映画の作品について書いたものを集めました。
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#日本映画

【映画レビュー】『あの夏、いちばん静かな海。』:静かな海からいつまでも届き続ける…

 主人公の青年・茂は耳が聞こえず、話すこともできない。ごみ収集の仕事をしているが、ふとし…

MINAMI
3か月前
10

【映画レビュー】『リリィ・シュシュのすべて』:一筋の希望の光さえ見えない陰鬱な絶…

 岩井俊二監督の作品では「ラブレター」がとても好きだ。悲しい話ではあるけれど、見た後に心…

MINAMI
3か月前
16

【映画レビュー】『生きる』:もう少ししか生きられないと知っても生き方を変えられる…

 主人公は、がんになって自分の余命が長くないと知った、市役所勤めの公務員。彼は、それをき…

MINAMI
4か月前
6

【映画レビュー】『永い言い訳』:何重にも深い人間の愚かさの闇

 「自分のことを大事にしてくれる人を手離してはいけない。失うときは一瞬だから」   妻が…

MINAMI
6か月前
12

【映画レビュー】『14歳の栞』:自分だけでなく誰もがみんな必死に生きてる

 実在の中学校の、ひとクラスの35人全員を映し出しているドキュメンタリーである。ここ数年、…

MINAMI
7か月前
2

【映画レビュー】『ラストレター』:みずみずしさにあふれた痛みと救いの物語

 雨上がりに青空が広がって、水たまりがキラキラ反射しているような感じ。そんなみずみずしさ…

MINAMI
1年前

【映画レビュー】『福田村事件』:人間の中にある「社会的なもの」と「私的なもの」

 総体的な話になるが、韓国映画は日本映画に比べて、力があるし、面白いと感じる。その一つの理由として、社会の矛盾や自国の負の歴史といった、目を向けたくない、ときには、隠蔽されるような社会的なテーマをきちんと取り上げ、エンターテイメント性のある映画として仕上げているからだと思う。躊躇したり、遠慮したりしないからこそ、そういうことができるのだと思う。  この映画は、負の歴史と正面から向かい合っていて、ずっしり重いのだが、群像ドラマとしてもエンターテイメント性の高いものになっていて、

【映画レビュー】『愛について語るときにイケダの語ること』:もうすぐ死ぬことがわか…

 この映画について語るのは怖い気がする。何を言っても建前になってしまいそうである。本当の…

MINAMI
1年前

【映画レビュー】『散歩屋ケンちゃん』:現実と虚構が入り混じるアバンギャルドな作品

 もうすぐ閉館になってしまう映画館に、ぜひ行っておきたいと思い、上映中の映画を調べたら、…

MINAMI
1年前

【映画レビュー】『台風クラブ』:多感で気高くて潔癖でもろくて弱い青春時代

 嵐が近づくと、なんとなく気持ちが高ぶってくるというか、揺れ動いてきたりする。そういう状…

MINAMI
1年前

【映画レビュー】『愛がなんだ』:「好き」の度合いはいつも不均等だから…

 恋愛ってぶざまだな、かっこ悪いな、つくづくそう思う。もちろんそうでない幸せな瞬間もある…

MINAMI
1年前
2

【映画レビュー】『ぬいぐるみとしゃべる人はやさしい』:みんな「だいじょうぶじゃな…

 本当にやさしくて繊細な映画だと思った。それはおそらく、この映画を見た人の多くが感じるこ…

MINAMI
1年前

【映画レビュー】『凪の憂鬱』:自分も参加したくなる素敵な日常!

 「いつか懐かしくなる、素晴らしき平凡な日常」というキャッチフレーズがとてもよくて、惹か…

MINAMI
1年前

【映画レビュー】『異端の純愛』:いや、異端なんかじゃない!

 この映画に描かれていることが「異端」だとするならば、ほとんどの人は異端者になってしまうのではないかと思いました。いや、他の人のことはわからないですが、少なくとも私は異端者になってしまいます。一方で、「純愛」というのは、痛いほどよくわかります! 変態のように思えるかもしれないが  映画は、三つの短編で構成されている。  「第一話」:現実のパワハラ・セクハラ上司に耐えられない女性が、空想上の恋人と一緒にイチャイチャしてサディストのように上司の心をふみつけにする。ついには、素