見出し画像

”非接触”社会における新たなコミュニケーションへの適応力を鍛えよ

第二波の不安、ひとりよがりな「Go Toトラベル」

東京都では連日3桁超の新型コロナウイルスの感染者が発表されており、第二波の不安が高まっています(東京近郊のお客様からも、東京からの訪問に不安を感じていらっしゃるご連絡をいただくので、状況が状況だけに悩ましいところです)。
また、大雨による甚大な災害が各地で発生し、Withコロナウイルス禍における復興支援の難しさが露呈しています。

そんななか、観光業界のカンフル剤を打とうと「Go To トラベル」キャンペーンと称した経済対策を講じようとしましたが、感染者数の多い都市部から少ない地方部への移動を促すようなキャンペーンに対して、「No」という姿勢を示す自治体が出てきています。
あまりにも政府のひとりよがりな施策と指摘せざるを得ません("非接触"のコミュニケーションの適応云々以前の問題だと思います)。

個人的な意見としても、「"今"ではないでしょ」、と思っていましたが、結果的に東京を除外して、予定通り実施するということです(羽田空港に到着し、千葉県にあるディズニーランドに行くのは良いという解釈は私には理解不能です)。
単純に休業補償として助成金を支給すれば良いのではないかと浅はかながら思ってしまいますが、いろいろ利害があるのでしょう。

行き過ぎた"非接触"コミュニケーションが引き起こす弊害

感染拡大を防ぐために、ソーシャルディスタンスという新たな言葉が生まれ、人との接触を極力減らすべく、Zoomなどを用いた会議や研修が当たり前のように社会に浸透しました。
しかしながら、Zoomなどで研修を受講しても、あの画面いっぱいに映し出される受講者の映像が、監視カメラのようで、受講者の反応や顔色の方が気になってしまい内容に集中できなくなってきました(苦笑)

状況が状況なので、オンライン研修を何件か控えていますが、内容の焦点を絞り、簡潔にしても手応えがある研修にするために、リアル研修以上に内容や展開、ワークの構成を慎重に詰めないといけないなと感じています。

来年の成人式もオンラインで開催なんていうニュースを見ると、"新しい生活様式"という名の"非接触"がますます進展すれば、飛沫感染を防止する観点で、面と向かった対面コミュニケーションがなくなってしまうのではないか、とふと考えてしまいます。

先日、ある法人の会議の中で「コミュニケーション不足で事故やヒヤリハットが多発している」という職員からの発言がありました。
原因は「コミュニケーション不足」ということでしたが、何が課題になっているのかが分からなかったため、いくつか質問をしたところ、以下のような状況がわかってきました。

・記載してある記録の内容がよく分からない
(5W1Hで記述されておらず、記載者に詳細を確認して補足していた)
・記載してある記録について優先順位がわからない
(必ず押さえておかなければいけない情報が流し読みされていた→結果的に事故やヒヤリハットが起こってしまう)
・カンファレンスを行っておらず、利用者の介助方法やリスクについての見立てが共有されていない
(関わる職員によって、利用者の対応や情報にばらつきがある)
・介護:看護、正規:非正規によって、情報の量・質にばらつきがある
(役割に応じ田、必要最低限の情報の量・質になっていた)

お察しの通り、コミュニケーション以前の問題が現場に蔓延っていました。
誰でも情報にアクセスできるよう業務日誌やケース記録をオープンにしていても、積極的に情報を取りにいく方もいれば、そうでない方もいらっしゃいます。
こういう状況を見過ごしてしまうと、「私は知りませんでした(知らされていませんでした)」という他責のような返事が返ってくるでしょう。
また、せっかく情報を取りにいっても、必要な情報が記載されていなければ、経験や勘に頼った介助や関わりとなってしまい、組織的にサービスを提供している状況とは言えません。

新型コロナウイルス感染防止対策として、人との接触を最小限にすべく、定例会議を中止にしていたり、その日勤務する職員を集めて行う申し送りや引き継ぎを廃止し、自主的に記録を確認し、業務に当たるように切り替えた施設・事業所もあると思います。
一方で人手不足、時間がないといった目の前の状況を優先してしまうあまり、むやみに定例会議の中止や委員会の短縮・廃止、統廃合を行ってしまい、以前のようなパフォーマンス(専門性の向上、重大事故の削減など)を発揮できないとなってしまっては、本末転倒です。
今後ますます”非接触”によるコミュニケーションの機会は増えると思いますが、過剰になりすぎて新たな弊害を生まないよう、今のうちから必要な手立てを打っていきましょう。

言語以外の情報伝達の質・量が問われる

”非接触”のコミュニケーションが増えるということは、言語以外の要するに文字によるの情報伝達の「質」と「量」が問われてきます。
私の文章も偉そうなことはいえませんが、福祉サービス第三者評価で文字制限(東京都の場合は256文字)のある報告書を書き慣れてくると、いかに重複するような表現や修飾語を排除し、伝えたいエッセンスを濃縮した文章に仕上げるかということが求められます。

文字による情報伝達の「質」とは、"内容"や"視点"です。
皆さんの施設・事業所の記録はどういう視点を重要視していますか。
例えば、「ケアプラン」「介護」「看護」という項目に対して、記録を残していけば、「ケアプラン」の項目の記録を遡れば、モニタリングに関する情報を追え、「介護」の項目を遡れば、アセスメントに関する情報を追え、「看護」の項目の記録を遡れば医療的ケアや処置に関する情報を追えるなど、記録を分類することができます。

記載する際のボールペンの色を変えて、「ケアプラン」は緑、「介護」は黒、「看護」は赤、「家族」は青といったように、視覚的に区別できるよう記録の工夫をしている施設もあります。

看護記録方式の一つである「フォーカスチャーティング」という、フォーカス(焦点、項目)、データ(状況)、アクション(職員の働きかけ)、レスポンス(反応)の項目に分けて記録をしている施設もあります。

また、「5W1H」でWho(だれが)When(いつ)、Where(どこで)、What(なにを)、Why(なぜ)、How(どのように)を記載できるように見出しを設定すれば、利用者のどういった様子を観察しなければいけないか、"視点"を絞ることもできます。
例えば、デイサービスで「レクに参加していました」という記録が、「Aさん(Who)が午後のレクリエーション(When)の風船バレーに(What)楽しそうに参加しており(How)、昔バレー部だったという話をされて…」というように内容に厚みを持たせることが出来ます。
"視点"を絞ることで、アセスメントやモニタリングに有効な生きた記録を残せることにつながるでしょう。

このような項目を設定すると記述しにくくなるといった声を踏まえ、自由記述(フリー)にしている場合があります。
しかし、現場の記録の”内容”や”視点”のレベル感を踏まえて、有期限(トライアル的に慣れるまで)で導入するというのも手です。
個人的には自由記述(フリー)はレベルが高いため、観察する"視点"が確立されていないと、かえって記録の"内容"がバラバラになってしまい、よくないと思っています。

もう一つが「量」です。
記述欄全部を埋めないといけないと思い、いっぱい書いてあることがありますが、内容を読んでも「質(内容・視点)」が低いこともあるため、いっぱい埋めるために費やした時間はどれぐらいかかったのかなぁ、と思う時があります。

一方、たかだか3行であっても、"内容"・"視点"が定まっており、「質」も担保され、短時間で内容の濃い記録を残している方もいるので、どちらが良いかは自ずとお分かりいただけると思います。
文章を書く知識や技術は学んでおいて損はないと思いますので、本屋さんに行って、文章力や語彙力に関する書籍を手に取ってみるのも良いと思います(私は「文章力の基本」で勉強しました)。

皆さんは日々の記録は何のために書き記していますか。
アセスメントやモニタリングに活用する情報源であり、事故を防ぐための気づきにつながるかもしれませんし、加算取得のための実績でもあります。
時間をかけ、量が多いことが良いという訳ではありませんので、何の記録を残していかなければならないか、文字による情報伝達の「質」と「量」のバランスを取れるような工夫してみましょう。

新たなコミュニケーションへの適応力を鍛えよ

"非接触"のコミュニケーションが当たり前の社会になれば、これまで面と向かって相手の顔色を察したり、場の雰囲気を読みながら言葉を選んで伝えていたことが、Zoomなどにより顔色を察することができない、場の雰囲気も読めない状況でどう展開していけば良いか、新たなコミュニケーションへのパラダイムシフトは確実に起こっています(ウェブ会議や研修が一時的なブームで終わるということはないでしょう)。

日常生活でマスク着用が当たり前になった今、顔の大半がマスクで隠れてしまっているので、表情を読み取ることが非常に困難です。
マスクの下で口元は笑っていても目元は笑っていない、というようにマスクに隠れていない額、眉、目といった部位の表情を意識的に作っていくことは非言語コミュニケーションとしても大事な視点といえます(職員同士でマスクをつけた状態の表情を見せ合ってはどうでしょうか)。

また、文字にして伝えるのはもちろんですが、あまりに文字量が多いと、読み手も途中で読むのをやめてしまうかもしれません。
文字だけではなく、グラフや図表、イラストなどを追加できれば、細かなニュアンスを伝えられたり、興味を持ってみてもらえるような工夫となるでしょう。
動画で移乗介助や食事介助といったマニュアル作成している施設・事業所もあるので、いかに相手に必要な情報を明確に伝えられるかに重点をおいた手段・方法を選択していくことが重要です(従来の研修では60分、90分が当たり前ですが、作成した研修動画は集中力が持つよう1コマ30分にしました)。

私自身も手探りの状況で新たなコミュニケーションへ適応できるよう日々研究している状況です。

「Zoomで会議?そんなの使ったことがないから分からない(出来ない)」
「ウェブで研修?機材もないし、なんか難しそうだから今年は研修なし」
「テレビ電話を使って家族が面会?直接会わないと満足しないだろう。新型コロナが落ち着くまで面会中止」

というように、初めからネガティブに受け取ってしまっては、現場の福祉・介護機器を含めたデジタル化は進みませんし、新たなコミュニケーションから完全に取り残されてしまいます。

最初からうまくいくことはありませんので、まずはやってみて、うまくいかなければ、うまくいくようにやり直し、続けることが必要です。
”非接触”社会における新たなコミュニケーションへの適応力を高められるよう、今のうちからトレーニング始めませんか。

管理人

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?