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-映画紹介-『サマータイムマシーン・ブルース』 ラスト近くに70年代のあの大ヒット曲が!

《乱れ撃ちシネnote vol.07》 22.10.02

サマータイムマシーン・ブルース

【Introduction】

2006年に観た某ゆるゆる映画で主演の上野樹里に注目し、同じ年の上野樹里主演の本作品にたどり着きました。
何の前情報もなく観てあまりの面白さに大喜びしたことを思い出します。
それから10年後のブログにこんなことが書いてありました。

昨日の夜テレビを付けると同時に「サマータイムマシーン・ブルース」が始まった。数年前にレンタルで観ているけれど最後まで観てしまった。

見事な脚本とセリフのやりとりのテンポの良さと切れ味のいい演出。
エンタテイメントのお手本のようなタイムマシン映画の傑作!
と言うか珍品!と言うべきかな。
タイムマシンを使って探しものをするために昨日と今日をウロチョロ行き来する「バック・トゥ・ザ・昨日」というセコさが絶品‼

原作となった『サマータイムマシン・ブルース 2005 舞台版』DVDも観たいし、3枚組のコレクターズ・エディション盤を手元に置いておきたくなるほど魅了されてしまった。
ー2016年4月10日付け万歩計日和よりー

今や『サマータイムマシン・ブルース2005年 舞台版』だけでなくヨーロッパ企画特別番組『サマータイムマシン・ブルース+ワンスモア U-NEXTスペシャル版』も観られるのですから有り難い。

映画初出演のムロツヨシ、瑛太初の主演映画でもあります。

【Prologue】

奇妙な電子音をバックに真っ青な空でギラギラ照りつける太陽。
急速に湧いては消える雲。

パンダウンすると美しい山並み。
手前には青々とした芝生のグランドと校舎。
樹々の間から校舎の大時計をズームアップすると時計の針は1時35分。
ひとけのない夏休みの校庭でユニフォームを着た数人の若者が野球に興じ、その光景を一脚にのせた一眼レフでシャッターを切る髪の長い女性がいます。

甲本拓馬(瑛太)が打った球を捕りそこねた守備陣。すかさずカシャカシャとシャッターを切る伊藤唯(真木よう子)。
曽我淳(永野宗典)がデッドボールを食らい抗議するためにピッチャーにつめ寄り他の選手3人も仲裁のために集まってきました。
その模様を撮りまくる伊藤唯。

彼らを校舎の中から窓越しに眺めるシルエット。
電子音が大きく響きぱっと暗転。

カキーンと大きな当たり。
「お〜来た来た来た」と空を見上げて球を捕るために集まった5人の俯瞰カット。
真剣な眼差しでシャターを押し続ける伊藤唯。
いざ球が落ちてくると「お〜!危ない危ない危ない」と散り散りになり球を拾えないヘタレな5人。

試合は続行し続く曽我の一球は大きなヒットとなるが校庭の隅に飾られているカッパの像に当たって倒してしまう。

「やっべえ」と曽我淳。
「あ〜あ〜あ〜」と声を出し全員カッパ像に駆け寄る。
「あ〜、やっちゃった〜」
「謝っといたほうがいいぜ」
「カッパ様に悪さするとカッパになるらしいから」
「土下座しとけって」
口々に囃し立てる。

校庭の片隅に飛んだボールを口に加えた犬ケチャ。

そんな彼らの有様を汗をふきふき眺めている一人の男。
校舎の時計は3時5分を指している。
不気味な電子音が大きくなり時計のアップ。

汗をふきふき疲れ切った5人が校舎に戻り、
後から入ってくる伊藤唯にメンバーが声をかける。
「伊藤、伊藤!」
「どうだったオレたち」
「オレらのこの若さのほとばしりは!」
「もうビンビン来てた」と伊藤。
「いいの撮れました?」
「もうばっちり」
「ばっちりばっちり!」
「やったぁ〜」
「ばっちりだってよ〜」
喜び合う5人。
がやがやしながら彼らが入った雑然とした部屋は【SF研究会】部室。
伊藤は「出来たら見せるから〜」と部室内の扉を開けて他の部屋に入る。

クーラーをつけて全員集まって涼みながら「だけどオレたちいい線いってたんじゃない」と新見優(与座嘉秋)
「SF研とは思えない躍動感でしたからね〜」と曽我淳。
「オレも自分でびっくりしたもん。こんなに動けるんだ〜って」と甲本拓馬(瑛太)

汗を流しに銭湯に向かう5人。
部室に戻り「省エネ」とつぶやいてリモコンでクーラーのスイッチを切る新見。

リモコンのスイッチをズームアップ。

画面変わって。

女性の声で「いいですよ〜ありのままで」
一眼レフの画面越しに映る白衣の男穂積光太郎(佐々木蔵之介)。
あらぬ方向を見ながら、
「いや、それがいちばん難しい」

カメラが男に近づく。
「近くない、それ近くない?近いよね、どう考えても」と緊張気味な男。
女性の声。
「だから、こ〜、被写体の艶めかしさを映し出すみたいな〜」
ファインダーいっぱいに映る穂積の顔。
「いや、にしても近いこれ、顔についてるもん」

二人の姿が映って。
「いいの?」と穂積。
「OK、いいの頂きました」と撮影を終えた柴田春香(上野樹里)。
5人揃ってオアシス湯へ入る。
番台のおばちゃん(楠見薫)が、
「あんたたちってさ〜、他に行くとこないの?」
服を脱いでいる5人。
「ないんですよ〜」と曽我。
「そしてフツーも見ないで下さいよ」甲本。

みんみん蝉の鳴く道をニコニコしながらカメラをバッグにしまいながら歩く柴田春香。

「ぷは〜」
いっせいに湯船から顔を出す5人。
「もう死んでもかまわない」
「ずっとこうしてたい」
湯船のふちに置かれたピンクの風呂桶に入れられたVS SASSON(ヴィダルサスーン)のアップ。

5人の様子を見ていた番台のおばさんが風呂場をのぞく人影を見て不信顔。

キュルキュルキュルっと巻き戻す音とともに画面は校舎に入る柴田春香のロングショット。
部室に入った柴田。
「あれ?今日って撮影だったんだよねどうしたの?」

再びオアシス湯。
湯船に使っている中年男性3人。
カメラがパンすると湯船の淵に置かれた先ほどのピンクの風呂桶。
泡だらけの手が風呂桶を探る。
5人揃って鏡に向かって頭を洗っているが振り返って手探りしていた新見が「ない」とつぶやく。

甲本「何が?」
新見「ヴィダルサスーン!」
小泉「ヴィダルサスーン?」
曽我「シャンプーのこと?」
新見「盗っただろう、お前ら盗っただろう」と真剣に怒り始める。
「いやいやいや」
「いやいやいや」
「いやいやいや盗ってないよ」
口々に言う。

曽我「って言うかヴィダルサスーン使ってるんすか」
石松「それすら知らないよね」
「じゃああれか、お前らか!」と泡だらけのまま立ち上がり湯船のおじさん達に怒鳴りつける新見。
「いやいやいや」と手振りで否定するおじさんたち。
いきり立った新見「オレのヴィダルサスーン返せ!」と湯船に飛び込む。

「うるさいんだよ立入禁止にするよ、他に行くところないんでしょう?」と番台のおばさんが扉を開けて怒鳴る。


ここまで活字に起こしてみるとなんだか分かりにくいですね。
っていうか映画を観ていても何か違和感を感じるんです。
キミョーな違和感。
どこかちょっとテンポのずれた演出。
ミョーな映画だな〜と思いながら観ていました。

この後部室のクーラーのリモコンが壊れ暑い夏の一日を過ごしていると奇妙な学生が登場して物語は一気に不思議な展開を迎えます。

冒頭から感じていたキミョーな違和感の中にその後の展開に関わるヒントがいろいろと隠されていたのです。
な〜るほどねそういうことだったのねという映画なんです。


【Trivia & Topics】

◯本作品の原作は上田誠の戯曲です。
京都で活動する劇団ヨーロッパ企画の第8回公演として2001年8月に初演されました。

◯四畳半タイムマシーンブルース!
ちょうどタイミングよく9月30日から3週間限定全国ロードショー、アニメによる『四畳半タイムマシーン・ブルース』が公開されています。

◯四国のある地方都市の大学が舞台です。

◯曽我淳と田村明。
曽我淳を演じた永野宗典と田村明を演じた本多力はヨーロッパ企画のメンバーで、ステージでも同じ役を演じました。

◯ムロツヨシ。
本作が映画初出演です。

◯見事な景観を背景にしたロケ地。
この作品の素晴らしさの一つにロケ地があります。
香川県丸亀市出身の本広監督が選んだのが同じ香川県の善通寺市にある「四国学院大学」。
SF研の部室は校内に建つ「ホワイトハウス」内部。
壁に時計のかかった2号館は旧陸軍第11師団の兵舎で国の登録有形文化財に指定されています。

◯終盤にかかる70年代のあの!大ヒット曲。
物語が終盤を迎えたころ1972年ビルボード誌で6週間連続一位を飾ったあの美しい名曲がBGMとして使われておりベビーブーマーの郷愁をさそいます。

◯みごとに落ちました。
タイムパラドックスものなので物語は複雑に入り組んでいますがラストのオチが見事です。

【6 star rating】
☆☆☆☆

【reputation】
Filmarks:☆☆☆★(3.8)
Amazon:☆☆☆☆★
u-next :☆☆☆☆★

この作品は瑛太の初主演映画でありムロツヨシ映画初出演作ですが、前年に『スイングガールズ』の大ヒットで第28回日本アカデミー賞新人俳優賞を受賞し、翌年はフジテレビのドラマ『のだめカンタービレ』でお茶の間でも弾けた上野樹里主演作でもあります。
冒頭に書きました2006年に観た上野樹里主演の某ゆるゆる映画『亀は意外と速く泳ぐ』を明日は紹介します。


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