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盤面からこぼれ落ちるほどジャズの楽しさがつまっているレコードについて。

昨日の続きです。

1日1枚のレコードを5日間連続で紹介してください。ジャケ写やコメントはなくてもOKです。毎回どなたかにバトンを渡して指名してください。

GW真っ只中にFacebookともだちから「アルバムチャレンジ」というテーマのフリーバトンが回ってきた。

昨日はジュヌヴィエーブ・ウエイトと加山雄三のことを書いたので残るアルバムを。

【きっかけ屋☆映画・音楽・本ときどき猫も 第89回】

「アルバムチャレンジ」3日目
『GEME NORMAN presents JUST JAZZ LIONEL HAMPTON ALL STARS playing STAR DUST』

本日の主役は25センチLPだ。

東京都が35区から23区になり、学校給食が開始され、手塚治虫の描きおろし漫画「新宝島」が出版され、日本国憲法が施行され、石坂洋次郎の新聞連載小説『青い山脈』の連載が開始され、ラジオドラマ『鐘の鳴る丘』や「二十の扉」の放送が開始され、笠置シズ子の「東京ブギウギ」が大ヒットした1947年(昭和22年)。

その年の8月4日、つまりぼくが生まれる183日前にロスアンゼルス郊外のパサディナ市民公会堂で開催された第三回ジャスト・ジャズ・コンサートをライブ・レコーディングしたアルバムだ。

演奏者
・ライオネル・ハンプトン (ビブラフォン) 

・ウィリー・スミス (アルト・サッス) 
          
・チャーリー・シェイバース (トランペット)
              
・コーキー・コーコラン (テナー・サックス)

・スラム・スチュアート (べース)
                 
・バーニー・ケッセル (ギター)

・トミー・ドット (ピアノ) 
                 
・リー・ヤング (ドラムス)

演目
A面:スター・ダスト  15分15秒
B面:ザ・マン・アイ・ラブ 13分36秒

「スターダスト」という曲は1927年にホーギー・カーマイケルが青春時代のほろ苦い思い出を元に作曲し、1929年にミッシェル・パリッシュが詞をつけたスタンダード・ナンバーの傑作。

「シャボン玉ホリデー」のエンディングのザ・ピーナツで思い出深いというご同輩はnoteを読んでいないかな。

このアルバムの「スターダスト」の演奏にはジャズって何ですか?の答えが全て含まれている。

原曲の素晴らしさ、美しい楷書のようなメロディーを独自の崩し字に置き換えていく各人の名人芸的ソロ演奏、ユーモアのセンス、絶妙なスイング感、そしてどん尻に控えしハンプトンの、まるで若い頃の立川談志の落語「源平」を思わせるような圧倒的なソロ。立板に水とはこういうことを言う。

これを聞いて喜べない人はジャズとは無縁な生活をお送りいただきたいということを昔ブログ万歩計日和に書いた。

その考え方は今でも変わらない。

ジャズってなんですか?
たった15分15秒でお答えしますからしばしお耳をお貸しください。
100点満点のジャズがここにあります。


イントロのウィリー・スミスの色っぽいアルト・サックスの音色が堪りません!


「アルバムチャレンジ」4日目
『センチメンタル / 山下洋輔』

○演奏者:山下洋輔

○演目
A面
(1)虹の彼方へ
(2)枯葉
(3)ユーモレスク
(4)ボレロ

B面
(1)トロイメライ
(2)二人でお茶を
(3)スターダスト
(4)サマータイム
(5)P.S.アイ・ラブ・ユー
(6)グッド・バイ

○録音
1985年8月28日 ニューヨークRCA Aスタジオ

1983年12月に山下トリオを解散してソロ活動を始めたジャズ・ピアニストの山下洋輔は1985年夏、約一ヶ月かけてニューオリンズ→セントルイス→カンザスシティ→シカゴとミシシッピーを北上してジャズの歴史を彩る町々のジャズ・スポットに昼となく夜となくいきなり乱入して拍手喝采を浴びる旅を敢行した。

その旅のことはこちらでお読み頂けます。

その乱入旅最終地点ニューヨークで録音したソロ・ピアノ・アルバムだ。

マンハッタンのど真ん中にあるRCAビルのだだっ広いAスタジオに設置してあったのはオスカー・ピーターソンにこのピアノでしかぼくは録音をしませんと言わしめたスタインウエイ。ラフマニノフが寄贈した巨大なピアノだった。

洋輔さんに対する注文は二つ。

・誰もが耳にしたことのある曲を演奏してもらいたい。
洋輔さんのエッセイ集は何十万部も売れるがレコードは数千枚しか売れない。何十万人ものエッセイ・ファンに洋輔さんの演奏を聴いてもらいたかったので耳障りの良い曲を弾いてもらいたいと注文した。

・ユーモレスクを弾いてもらいたい。
大好きなアルバム「ピアノ・スターツ・ヒア / アート・テイタム」と聴き比べたかったという単なるワガママだ。

レコーディングは午後2時にスタジオ入りして夜7時終了。

初めて洋輔さんが人前で弾いた曲を含めて全14曲、28テイクを録音。

録音を始めるとアルバムの企画意図を瞬時に飲み込んだ洋輔さんとは旧知のエンジニア、デビッド・ベイカーさんがリクエストした「虹の彼方へ」をオープニング・トラックに選んだ。

「ユーモレスク」のテイク選びではぼくと洋輔さんの意見が対立し、どちらを選ぶかでぼくも洋輔さんも一歩も引かなかった。

解決策が一つだけあった。

このアルバムを発売した頃はLPとCDを併売していたので、LPには洋輔さんが選んだ4分50秒のテイクを収録し、CDにはぼくが選んだ5分59秒のテイクを収録することにした。

このアルバムを発売したのは86年初頭。この時点ではLPがまだ主流だったが近い将来LPはCDに駆逐されるであろうことが予想できたのでぼくの選んだテイクをCDに入れさせてもらった。

『センチメンタル』から「枯葉」をお聴きください。

洋輔さんの選んだ「ユーモレスク」をお聴きになりたい方はぜひともLPをお探しください。

カッティング・エンジニアは名匠小鉄徹さんですし。

最後までお読みいただき有難うございました。

最後に選んだアルバムは次回のお楽しみということで。

お寄り頂ければ嬉しいです。

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2002年に書き始めたブログ「万歩計日和」です。


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