ショートホープ【超短編小説】
3月というのに、東京は氷点下を記録した。
時刻は22時を過ぎている。
「さっむ・・・」
最近は喫煙者へのあたりがきつく、外階段のむき出しになった喫煙所で
浅田智也は煙草に火をつける。
遠巻きに、東京タワーが見えるこの階段は、密かに気に入ってはいた。
期日ぎりぎりの仕事がようやく終わり、帰宅前に一服しようと、帰り支度のままこの階段に立ち寄った。
智也はあれ、と思った。
いつもは柔らかい赤色で全身を輝かせている東京タワーだが、今日は半身しか輝かせていなかった。
社会人になっ