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水と長期投資② ~各国の水市場と注目企業~

前回の記事では、水ビジネスの将来性と水ETF・投資信託をご紹介しました。

今回は、各国の水市場動向を交えながら、水ETF・投資信託の上位構成銘柄をご紹介します。コロナ禍でも値動きが安定していた銘柄も多く、長期目線でのポートフォリオの参考になると思います。

前回の記事はこちら。


■米国の水市場

経済大国のアメリカ。主力産業である農業やITは大量の水を必要としますが、アメリカ全土で深刻な水不足が起きています。急速な経済成長、人口増加、気候変動に対応するために、流域単位での効率的な水利用や排水再利用、豪雨対策など、水インフラの再構築に迫られています。
最近では、発がん性等が疑われるPFAS(人工有機フッ素化合物の総称)に関する水道水の規制強化などを受け、高度処理の需要も高まっています。

・アメリカンウォーターワークス(AWK)

米国最大の民間上下水道会社です。全米24州で水道水の供給、排水施設・システムの運用保守などの水関連サービスを幅広く提供しています。水不足問題が深刻化するカリフォルニア州では海水淡水化も手がけています。州政府が上下水道事業の新規参入を制限していることもあり、安定的した収益を上げています。軍事施設の供水・排水システムの運用・保守サービスも展開しています。

・アドバンスド ドレナージシステムズ(WMS)

雨水貯留・利用の技術に強みを持つ企業です。
近年急増する集中豪雨への対策は、事業継続の観点で非常にニーズがあります。同社は、雨水の『集水、地下タンクへの貯留、地中への浸透、水源利用』といった技術を武器に、地理特性や産業に合わせた雨水管理システムを商業施設、住宅、農業、林業、空港、軍事施設、鉄道など幅広い産業向けに提供しています。
気候変動関連株としても同社は人気があり、5年前から株価は7倍以上に伸びています。

・A.O.スミス(AOS)

住宅向け・商業向けの給湯・温水機器、ボイラー、水処理製品の製造・販売を行うメーカーです。中国では、給湯器・浄水器のシェア1位です。
2011年以降、給湯器・ボイラーメーカー、水処理製品メーカーを次々と買収しながら水事業を急速に拡大しています。
近年はインドでの事業展開にも力を入れています。新興国での更なるシェア拡大も期待できそうです。

・ザイレム(XTL)

世界150を超える国で、幅広く水関連の機器・装置やサービスを提供している米国の水専門企業です。2023年には、水処理大手のエボクア社を約64億ドルで買収し、事業拡大を進めています。計装・通信技術にも強みがあり、配管の水漏れ検知、料金徴収の効率化が可能な水道スマートメーターなど、”維持管理の効率化”に重要な技術を有しています。
サッカーの名門マンチェスター・シティと提携し、各国で水の教育活動も行っています。企業ブランディングのセンスも抜群です。


■イギリスの水市場

イギリスの水道事業は、世界に先駆けて1989年に民営化されました。消費者の不利益防止の観点から、規制庁「Ofwat」の監視下において、民間企業が主体的に経営効率化に取り組んできた点が特徴です。早期に普及した水道管の老朽化、漏水が課題です。
近年では水市場の規制緩和を受けて、他分野からの水道事業への新規参入、買収、合弁会社設立などの動きが出ています。

・ユナイテッドユーティリティーズグループ(UU)

1989年のイングランド水道事業の民営化に伴い、設立された公益事業会社です。北西イングランドで水道事業を展開しています。2016年には、同業のセバーン・トレント社と合弁事業会社Water Plusを設立し、水使用量削減、BCP計画や水管理戦略等に関する法人向けコンサルティングサービスを展開しています。公共・民間の垣根を越えて、ビジネスを展開している点が特色です。

・セバーントレント(SVT)

英国、欧州、米国で水道、下水道、廃棄物処理といった公益事業を手掛けています。上述のユナイテッドユーティリティーズと同様に、公益事業会社向け各種ITソリューション、エンジニアリング顧問サービスなど、水道、公共、民間の境界をまたいでビジネスを展開しています。

・ペンテア(PNR)

水処理や熱管理などの設備機器、維持管理サービスを米国、欧州を中心に提供するメーカーです。
主要製品は各種バルブや制御システムです。1966年の創業以来、世界各国のプラントで培った長年の信頼と実績が強みです。
株主還元意識も高く、連続増配40年以上を誇ります。


■欧州の水市場

欧州の水市場は、各国政府や産業、EU全体での支援・管理体制が敷かれている点が特徴です。EUの水枠組み指令(WFD)では、2027年までにEUすべての水域で良好な生態学的状態の達成を目指しています。環境意識や技術水準は世界トップクラスです。
特にフランスやドイツでは、PPP事業(官民連携)の歴史も古く、民間企業が上下水道事業~民需事業まで、総合的な運営ノウハウを有しています。

・ヴェオリア・エンバイロメント(VIE)

フランスの世界最大総合水事業会社です。世界70カ国以上に拠点を有しており、約1億人に水道・下水道サービスを提供しています。2021年には、同業の巨大企業、スエズ社を約3兆4000億円で買収し、水業界で大変話題になりました。
世界各国で培った上下水道事業の運営管理ノウハウを武器に、日本にも進出しています。水源~蛇口、料金徴収までの維持管理、経営を総合的にマネジメントする力を持っています。

・ジョージフィッシャー(GF)

スイスに本社を置く配管部品メーカーです。日本を含む世界50カ国以上で事業を展開しています。世界的な脱炭素化のトレンドを受けて、同社の樹脂製配管による脱炭素化への貢献度を積極的にPRしています。カーボンニュートラルの文脈で、同社の更なる成長も期待できそうです。


以上、世界の水関連企業紹介でした。安定性と成長性を両立している企業も多く、ポートフォリオの参考になるかと思います。

最後までお読みいただきありがとうございました。

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