見出し画像

ザ・ベンチャー②

前回の「ザ・ベンチャー」では、頑張って記憶を遡って書いたこともあり、お陰で色々と思い出せたのと意外と反響もあったので、その勢いで続き的な話を書きました。

2002年に新卒でオプトに入社した私は、営業に配属されました。確か第3営業部(新設)だったと思います。営業の仕事は聞いてはいましたが、正直ハードでした。今では想像できませんが、テレアポからの提案、資料作成、クロージング、受注作業、クリエイティブ制作(と言ってもテキスト)or ディレクション、請求書発行、入金確認までを行っていたので、嫌でもビジネスの一通りの流れを理解し、経験する事が出来たと思っています(実際には漏れが沢山あったけど…)。

当時は明確な「分業」にはなっておらず、基本的には営業がアカウントプランナー(AP)として全て行う。これぞベンチャーと言う、とてもカオスな状態でした。3年間営業をやりましたが、荒いながらもこの経験がストレス耐性と足腰を鍛える事になったと今では思っています。

誰の「代理」なのか?

突然ですが、広告代理店って誰の何の「代理」なのでしょうか?
ビジネス的に言えば、広告代理店のマージン(手数料)って何の役務提供の対価なのか? 私は当時、この2つの問いを考えれば考えるほどモヤモヤしていた訳ですが、色々調べてみても意外と納得のいく明確な正解がないと言うか、ここ数年で徐々に変化してきたのではないかと思っています。

基本的には、広告代理店には大きく2つの役割があると考えています。1つは、メディアから広告枠の売買を請け負う「役割」。2つ目は顧客に向き合い課題解決(マーケティングや広告に紐づくものが多い)のお手伝いをする「役割」。つまり、前者はメディアの代理で、後者は広告主の代理になります。

ちなみに、歴史的には元々前者として始まったと言われているようで、現にWikipediaで見ても、元々はメディアの代理として誕生した経緯が書かれています。

一方でお金は上流から下流へ流れると言う意味では、広告主がお金を出さない限りはメディアへも代理店へもお金は流れていきません。そういう意味では確かに広告主の支払うお金から広告代理店のマージンが発生している訳です。

私はメディア(仕入)部署に異動になって、強面の営業の先輩から「顧客が払う広告費で、我々は飯が食えているのだから、A社の枠は死んでも取れ!」と言われた経験が数知れずありました。

最近はこう言った話はまず聞かないですよね。

パラダイムシフトが成長を促す

「広告枠を死んでも取る」という何ともマッチョな考えがなくなった背景には、多くの人が認識している通り、アドテクノロジーの進化が関係しています。まさに、私にとってはアドテク万歳でした(笑)。

恐らく、2010年頃だったと思いますが、アドエクスチェンジと言うプラットフォームが出現し、RTB技術の向上とともにDSP、DMPが進化した事で「枠から人へ」と言う印象的なフレーズが生まれました。

同時に広告は「枠」を仕入れて代理販売するのではなく、「運用」するモノに変わっていったのです。

当時、オプトの取締役会長だった海老根さんが、「もう、俺らは広告代理店じゃなくて広告管理店でしょ!」と言う発言があり、言い得て妙だなと思った記憶があります。

一方で私からすると、メディア部署に異動になり、ようやくメディア知識はじめ事例や経験が積み重なってきて、これからと言う時に大きなパラダイムシフトが起きた衝撃を今でも覚えています。今までの個別の広告枠の知識なんて糞の役にも立たなくなったわけです。

その後、私は奇しくもメディアの責任者として、ディスプレイ広告の「運用」を強みとした戦略を掲げ、「枠から人へ」を実践し結果を出す組織を組成していく事になるのですが、その苦労はまたどこかで話せればと思います。

また、このパラダイムシフトで多くの事が振り出しに戻った事で、当時は競合であったサイバーエージェント(CA)に対抗できる可能性が広がったと感じたのも事実でした。これは業界全体の変革であり、嘆くよりも如何に先にスタートを切るか。比較的早くに気持ちを切り変える事が出来た事は、その後の自分の成長にも大きく関係したと思っています。

立ち止まって考えるべきだった事

話を少し戻しますが、誰の為の「代理」なのか。
この話はこのパラダイムシフトのタイミングで、改めて深く考えるべき事だったと強く感じます。

私が感じる「代理」の変化は、(スマホなど)デバイスやテクノロジーの進化により、有限だった広告枠が、(ほぼ)無限に近くなり、更に「運用」と言うサービスに変わる中で、従来の「メディアの販売代理」ではなく「顧客の運用代理」へ大きくシフトしたと言う点です。

勿論、元々「顧客の代理」であったと言う考えもあります。ただ、そうであるなら、なぜ代理店のマージン率はメディアが決めるのか。そこに微妙な気持ち悪さもあったわけです。

これはあくまでも代理店視点での理想論になってしまいますが、本来この時のパラダイムシフトと同時に広告代理店(特にデジタル)のビジネスモデルを大きく見直すべきだったと今になって痛感しています。

「顧客の代理」であるなら、顧客と代理店でその役務提供に対するFeeは明瞭に決められるべきであると思います。中には予算が大きく違っても、作業工数はそこまで変わらないケースもあります。場合によっては成果報酬型でも良いのかもしれません。

それによって、副次的には無用で過度な値引きも起こり辛くなったかもしれません。短期的、且つ安易な値引きは誰も幸せならない事は皆分かっているはずですから。

更に、今後、会計基準が国際会計基準(IFRS)に変化していく中で純額表示が進む可能性を踏まえるとマージンからFeeへの流れは尚更だと思います。

今、私はハートラスで代表をしていますが、正にこの考えを体現できるポジションの会社にいると感じていますし、個人としてはまだ遅くは無いと言う想いで事業に向き合っているわけです。勿論、その為には多くのハードルやリスクもありますが、そこはベンチャーマインドで乗り越えられると信じています。

ちょっと自分で書いてて無駄にカッコよくなってきたのと、長くなってしまったので今回はこのへんで。





この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?