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ザ・ベンチャー

私の社会人のはじまりは、ラブホテルの横にある会社でした。千代田線の赤坂駅を出て、少し奥まったところにあるビルの1階で、場所も場所だけに怪しげな雰囲気がありましたが、お城のようなホテルの外観は目立つ為、オフィスまでの目印には最適でした。広くはありませんが、駅近と言う事もあり今思えば意外と良い場所だったと思います(笑)

今だから言えますが、かなり学生気分だった私には当時の会社状況はもちろん、業界情報も持ち合わせておらず、何とか自分が志望する業界に入れたことに安堵し、オフィスの場所がどこであれ単純に働ける喜びしかなかったのです。

当時、入社してまず感じたのは、先輩社員の仕事に対する情熱が異様に高かったことです。比較対象がないのでそれが普通なのだと思っていましたが、今思えば社内は常に熱狂状態だったと思います。それは働く時間しかり、コミュニケーションの濃さ、社員の発言や行動から感じることが出来ました。一つ間違えれば喧嘩も起きるぐらいでした(実際に起きましたが…)。

そんな絵にかいたようなベンチャー企業。
それが、私が入社したオプト(現オプトホールディング)でした。


2002年当時のオプトの経営判断を想像してみる

2002年度の新入社員は私を含め5名。4月1日入社のいわゆる「新卒」と言う意味では一期生だったと思います。今思えばですが、当時30名の会社で新卒を5名も採用をするのは結構思い切った判断であり、まさに社運を賭けた採用だったのではないかと思います(中途はもっと採用していたはず)。その判断の大きさは、私も今の立場になって切実に感じます。

現に当時のオプトの業績を見ると、1999年(平成11年)、2000年(平成12年)と赤字が続いている中でオフィスを移転し、FAXのダイレクトメールサービスを撤退・事業譲渡し、「ADPLAN」と言う広告効果測定システムや「e-sumai.com」という不動産メディアを新しく立ち上げた時でもありました。その後、2001年(平成13年)に見事に黒字転換しています。これをチャンスと捉え、一気に採用を強化したのだと読み取れます(鉢嶺さん違ったらすいません…)。

おそらく、その時に思い切った判断が出来たのは、売上の成長率だったと想像します。1999年が売上2.2億円で2001年は売上13億円まで伸びています。粗利率も約23%と広告代理事業のビジネスモデルとしては比較的高い粗利率だったことを考えると、この判断はこの後の業績をみても正解だったと思います。

経営指標2

※株式会社オプト2003年12月期有価証券報告書


タイミングの重要性

ちなみにこの当時の業界状況を調べてみると、日本では短いながらも1999年から2000年頃までは、いわゆる「ITバブル」の時期があり2000年の終わり頃には早くも「ITバブル崩壊」の状態になっていました。サイバーエージェント(CA)がマザーズに上場した時(2000年3月)と言った方がピンとくる人が多いかもしれません。

話は少しそれますが、ITバブル崩壊直前、更にこの後起こる2001年9.11(アメリカ同時多発テロ事件)前のこのタイミングで、CAは売上約4.5憶円、約2,000万円の赤字で上場し、時価総額約800憶円で約220億円の資金調達を行っているわけで、もはや神がかっていると思います。

改めて、何においても「タイミング」は本当に重要であり、経営者にとっても常に苦慮するテーマだと感じています。オプトは業績だけでみればCAに劣るものの、当時は正直そこまで大きな差はなかったと思っています。この後、オプトは2004年にジャスダックに上場するのですが、そのタイミングの違いにより(それだけでは無いですが…)得られる資金調達額は数百憶の差が出てしまったわけです。これは後の2社の成長に大きく関わっていると感じています。

環境に育てられたベンチャーマインド

そんな激動の中、更に環境変化の激しいこの業界に飛び込んだ訳ですが、約20年近くも働いていることを考えると、実は就職活動では安定志向で大手企業ばかりを受けていた私ですが(汗)、毎年ジェットコースターのように変化し、正直何が起こるか分からないヒリヒリする世界が意外と自分の性分に合っていたのかもしれないと、最近になって思っています。または、知らない間に上手く順応できただけなのか…

どちらにせよ今こうして充実した日々を送ることができているのは、自分の運の良さと周りのサポートのおかげです。私は本当に環境に育てられたのだと感じると同時に、それだけ働く会社(≒環境)をどう選ぶかは大事な判断だと痛感しています(特に20代前半は)。

前の会社(同オプトグループ)であるクロスフィニティや今のハートラスの経営に携わる中で、特に実感している言葉があります。それは、『最も強い者が生き残るのではなく、最も賢い者が生き延びるのでもない。唯一生き残ることが出来るのは、変化できる者である。』というダーウィンの進化論の話で、環境変化に対応出来る事が大事である。これが凄くしっくりくるのと、これを聞くたびに少しワクワクした気持ちになるのは、きっとベンチャーマインドに染まってしまっているからだと思います。これまで、色んな経験や想いがあってそう感じられるようになった訳ですが、それはまた別の機会に紹介できればと思います。




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