マガジンのカバー画像

水の空の物語 第2章 空の上に湧く泉

31
第2章をまとめました。 夏澄の夢に憧れる風花。ますます魅かれていきます。
運営しているクリエイター

記事一覧

水の空の物語 第2章 第1話

第二章 空の上に湧く泉  終業のチャイムが響き渡った。  教師が出て行くと、教室内が急に…

近江結衣
1年前
6

水の空の物語 第2章 第2話

 高校からの帰り道の途中に、図書館がある。その図書館の広場に、風花たちはよく寄り道した。…

近江結衣
1年前
7

水の空の物語 第2章 第3話

「隠すことないじゃん。教えてよー」  ひろあはうれしそうに、風花の顔を覗き込む。二つに束…

近江結衣
1年前
6

水の空の物語 第2章 第4話 

「あ、でもね、聞いてよー」  ひろあは眉を寄せて、ベンチに両手をつく。 「あたしたちね、…

近江結衣
1年前
6

水の空の物語 第2章 第5話

「実はさ、私もうまく行ってないんだよね……」  ふいに香夜乃が声をかすらせた。 深くベン…

近江結衣
1年前
7

水の空の物語 第2章 第6話

「では……」  ふいに、ひろあが声に力を込める。鞄からノートを取り出した。  ずっと前、…

近江結衣
1年前
6

水の空の物語 第2章 第7話

「あっ、わたし書きたい」  風花はノートを受け取る。 三人で海に小旅行に行くと書いた。 「風ちゃんって、本当に水辺が好きだね。海に行くとずーっと波を眺めているし」  あたしはねーと、ひろあはソプラノの声を響かせる。  ケーキ食べ放題に行くと書いた。 「香夜ちゃんは?」 「私はどこかのお城で、和装体験なんかしたいな」 「海とケーキとお城かあ。全部行けたらいいね」  それいいと、ひろあは声をあげた。 「海の近くのお城に行って、ケーキを好きなだけ食べるんだよ。そうい

水の空の物語 第2章 第8話

 長い坂道を、風花は自転車で登っていた。  やっと見えた駐輪場に滑り込み、自転車を停める…

近江結衣
1年前
5

水の空の物語 第2章 第9話

 夏澄の優しげな仕草も、透きとおった瞳も、やはりまぶしい。  風花は目を細めた。 「久し…

近江結衣
1年前
6

水の空の物語 第2章 第10話

「ごめーん。でも、すごくきれい」  波紋はそっと押してだけでも、広がっていく。ゆらゆらと…

近江結衣
1年前
8

水の空の物語 第2章 第11話

「う、うん……」  風花はそれだけしかいえなかった。  まっすぐな視線を受けると、どきど…

近江結衣
1年前
8

水の空の物語 第2章 第12話

「霊力って、どうして? なにかあったの? 風花」  夏澄が心配そうな顔をする。  いつも…

近江結衣
1年前
7

水の空の物語 第2章 第13話

「……どんな泉だったの?」  自然と、風花の声にも感情がこもった。 「水の精霊の国の、空…

近江結衣
1年前
6

水の空の物語 第2章 第14話

 冗談めかす夏澄に、少し泣きたくなった。  ずっと願いが叶わなければ、普通は感情を無くすと思う。  それなのに夏澄くんはよくわらったり、泣いたりする。  ……夏澄くんは、思ったよりずっと強いんだ。 「ねえ、夏澄くん」  夏澄くんは、悲しい? つらい?  風花は言葉にできなかった。聞いたら、なにかが壊れてしまいそうだった。  深呼吸して、風花は声を明るくした。 「空の泉って……」 「なに? 風花」  夏澄は、頭を霧にもたせかける。 「空の泉って、どんな色だったの