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水の空の物語 第2章 第9話


 夏澄の優しげな仕草も、透きとおった瞳も、やはりまぶしい。

 風花は目を細めた。

「久しぶり、夏澄くんっ」

 思ったままを口にしてしまい、風花は少し後悔する。

 昨日逢ったばかりなのに、久しぶりはないだろう。だが、夏澄はまっすぐうなずいてくれた。

「風花、早くおいでよ」

「今なら、人目がないわ。泉のそばに来て」
「うんっ」

 スーフィアの言葉で、風花は駆け出す。

 泉を囲っている柵を、夏澄と一緒に越えたとき、空間が歪んだ。

 急に、泉の周りに、水の幕のようなものが見えるようになる。触れると、波紋が広がって消えた。

「ここ、遠かったよね。だいじょうぶだった?」

「うんっ、平気だよ、自転車だったから、早く着いたし。夏澄くん、今日は隠れていないんだね。いいの?」

「ここは霊泉の結界の中だから、外からは見えないよ」

「結界っ。ここ、結界の中なの?」

 風花はぐるっと周りを見回す。

 泉の柵に沿って、水の幕が下りていた。入るときは見えなかったのに、内側からは見えるのだ。

「すごいーっ、わたし、結界なんて初めて!」

 風花は、水の幕を指でつついた。
 また波紋が広がっていった。ぴちゃんと、かすかな音がした。

「遊ぶなよ、風花」

 飛雨が眉を寄せた。




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