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ほんとに走馬灯が浮かんできた〜とっておきの夏の思い出

私は20歳の夏、毎週のように海に行っていた。

あまりに行き過ぎて、夏が始まる前に買った夏用のファンデーションの色が合わなくなる程だった。この時のツケが、今の私の顔にあるシミなのだと思う。本当に日焼けは怖い。うんと時を経て、私の顔に意地悪をしてくるのだから。

海に行くと言っても、海を見に行くのではない。海水浴に行っていたのだ。海に行く時の相棒は、2人いる親友のうちの1人、Hさんだ。

Hさんは、最初に入った会社の元同僚だ。

私が2年目の時に、中途入社で入ってきた同い年の子。年が同じで、笑いのツボみたいなものも同じだったので、私達は割とすぐに仲良くなった。Hさんも、やっぱりしっかりしたお姉さんタイプで、危なっかしい私の手綱を握ってくれる大事な人だ。

私とHさんは、もともとお互いを苗字を呼び捨てで呼んでいた。けれど、2人とも結婚したので、今は下の名前にさんを付けて呼び合っている。でも、昔みたいに苗字を呼び捨てで呼んだ方がしっくりくるかもしれない。

話を海に戻して。

海水浴には付き物の水着。

その年に買った水着は赤だった。赤にオフホワイトのやや大きめの水玉のワンピースの水着。時代的に少々ハイレグ気味だったけど、EAST BOYの水着だったのでキレは控えめではあった。この水着はもちろん、例の行きつけのブティックの水着フェアで買ったものだ。

当時の私の勝負カラーである赤い水着を持って、Hさんと海に繰り出した。

もっとも、私達は平日に行っていたので、人はそんなにおらず、のんびりできて楽しかった。お日様の下、潮風と寄せる波。時折、海に入ってちゃぷちゃぶする。砂浜でビーチボールで遊び、浮き輪で海に浮かび、子供みたいに遊んだ。

その年のお盆休み、私達は旅行に行った。

行き先は長崎県の離島、壱岐だ。

フェリーに乗ってしばしの間の船旅。今回は1泊する事になっている。楽しい旅行になるかな。ワクワクしながらフェリーの時間を楽しんだ。

私達は車は持って行かなかったので、島内ではバスかタクシーで移動する。とりあえず、宿まではバスを利用する事にした。バスの中でも、リゾート気分にワクワクが止まらない。

宿は民宿だ。私は民宿に泊まるのは初めてだったので、ちょっぴり楽しみだった。部屋は意外ときれいだったし、居心地がいい。早速、海に行ってみる事にした。

私達が行ったのは、錦浜。

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とてもきれいな海。写真は、こちらの公式ホームページさんの物。

前の年も別の友達(もう1人の親友Kちゃん)と来ていたけれど、やっぱりきれいな海。ついはしゃいでしまう。リゾート感も満載だ。

さすがにこの時期は人が多い。あっちにもこっちにも、わらわらと人がいる。

私達は女の子2人だったけれど、誰からも声を掛けられる事がなかった。よほど私達に話し掛けるなオーラが出ていたのだろうか。ちなみに、Hさんはきれいな子なんだけど。

その後は、宿に戻りお風呂に入った。

お腹一杯ごはんを食べ、お酒を飲み、明日に備えた。←Hさんも私と同じお酒好き

翌日、朝ごはんを食べた私達。帰る前に一泳ぎするため、海へ行った。

しばらくして、Hさんは言った。

「ねぇ、あれ乗ろうよ!」

あれとは、これだ。

バナナボート。

私は乗った事がなかった。ライフジャケットを着て、バナナボートにまたがる。ジェットスキーにつながれたバナナボート。いよいよスタートだ。

走りだしたバナナボート。スピードに乗って海の上を走る。「なにこれ、凄く楽しいやん!!」と私とHさんは大はしゃぎ。

ところが、世の中そんなに甘くない。

スイスイと進むバナナボート。沖の方まで来た時いったんジェットスキーが止まった。ジェットスキーを運転していた兄ちゃんはニヤリと笑った。その瞬間、私をはじめバナナボートに乗っていた人達は海の中に放り出されるではないか。

まさか、海に落とされるとは思っていなかった。私は、目を開けたまま海の中に沈んでいった。

その時だ。

海の中の私の頭の中には、今までの人生の出来事が次々と浮かんできた。私はぼんやりと「ああ、これが走馬灯なんだね。もう私死ぬのかなぁ」と考えていた。

本当にカラーの映像で、幼い時からの人生が浮かんできたのだ。

時間にしたら大した事はなかったのかもしれない。それに、ライフジャケットも着ている。

でも、そもそも私は泳げない。体育の時間のプールや水泳大会が苦痛で苦痛で仕方がなかった。なのに、プールに遊びに行ったり海水浴に行くのは好きだった。

なんとか浮かび上がった私は、バナナボートに戻ってきた。Hさんは運動神経がいいので、すでにバナナボートに戻ってきていた。

走馬灯が浮かんだと訴える私にHさんは言った。

「お盆は地獄の釜の蓋が開くって言うしねぇw」

そうか、下手したら危なかったのかな。

それに、お盆のあたりからクラゲも出てくるし。そういえば、私昨日から海の中で脚がピリピリするんだけど。あれ、クラゲだったのかな。

はあ。

バナナボートは私達乗客を再び乗せて、岸まで帰ってきた。

なんだか、どっと疲れた。

楽しかったけど、疲れた。

それから、しばらく海にいたけど早めに切り上げる事にした。

チェックアウトして、またバスに乗りフェリー乗り場に向かった。お土産を買ったり、ランチを食べた。

フェリーに乗った私達は、帰りの船でもしゃべり倒したけれど、なんとなくバナナボートの話はしなかった様な気がする。

バナナボート、楽しかったけど。

海に放り出されると知っていたら心の準備もできるだろう。それなのに。

20歳の夏、最後の海の思い出は。

きれいな海とビーチ。

おいしい海鮮。

颯爽と走るバナナボート。

そして、今までの思い出が浮かんだ走馬灯。

私が走馬灯を見たのは、今のところあの1回こっきりだ。

私は、懲りもせずに翌年もHさんと壱岐に旅行に行ったのだった。しかも2泊で。だけど、もうバナナボートには乗らなかった。


今日も最後まで読んで下さってありがとうございます♪


この記事はriraさんの企画「とっておきの夏の想い出」に参加しています☆





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