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[ショートショート]仕方ないよね

中3になった。

でも、仲良しのみなちゃんとクラスが別れてしまった。なんだか、つまらない。私のクラスにも仲良しの子はいるから、いいんだけど。

みなちゃんは2組で、私は4組。

そして2組には、なおくんもいる。なおくんは、私と同じ部活で、私の好きな人。なおくんが好きな事は誰にも言っていない。秘密主義じゃないけど、なんとなく言いたくなかった。私の中だけで大事にしていたい感情だったから。

4組の友達との時間を楽しみつつも、私は日に何回かは2組に通った。みなちゃんに会いに行くのが主な理由だったけど、他にも立派な理由がある。

それは、なおくんの姿を見る事。

私は、なおくんと話した事ってあんまり無い。部活も男女は別だし、クラスも同じになった事は無いから。だけど、一目姿だけでも見たかった。

私が2組に行くと、なおくんとよく目が合う。目が合うと、恥ずかしくて目をそらしてしまう。でも、気付けば目で追ってしまう。
そんな時、やっぱり好きなんだなぁと思う。本当は、みなちゃんにも教えたかった。いろいろ話を聞いて欲しかった。だけど、やっぱりこの気持ちは自分だけで大事にしたいなとも感じていた。いったいどうしたいのか、自分でもよく分かっていなかった。


「ねぇ。あやちゃん?話聞いてるの?」

みなちゃんの声に私はハッとした。
なおくんの方を見ていて、話を聞いていなかった。

「ごめん。みなちゃん。ぼんやりしてた。」
「もうー。しょうがないなぁ。今度、日曜日遊び行かない?」
「うん!行く行く。どこ行く?」

日曜日、みなちゃんと遊びに行く事になった。どこに行くかは、これから決める。午前中は部活があるから、午後から遊ぶ事になりそうだ。


日曜日。
今からみなちゃんとショッピングモールにお買い物に行く事になっている。私は買ったばかりの、白くて長いスカートをはいていく事にした。スカートはひらひらしていて、かわいいデザインだ。これに、男の子っぽいTシャツとスニーカーを合わせてコーディネートするのがお気に入りだった。

待ち合わせ場所には、少し早く着いた。
自転車を止めて待っていると、向こうから見覚えのある人が来るのが見えた。

その人は、なおくんだった。

「あ、あやちゃん。買い物に来たの?」
「うん。みなちゃんと待ち合わせてるの。なおくんは?」
「俺ね、ちょっと本屋に行くんだ。」
「そうなんだ。今日の部活、男子はちょっときつそうだったね。」
「あ、見てた?試合が近いからさ。
でさ、あやちゃんっていつも2組に来てるよね。」

初めて、なおくんとちゃんとしゃべった。ちゃんと、会話になっている。
あまりの突然の事に、驚きと嬉しさで一杯になる。人目が無ければ飛び跳ねたいくらいだ。

でも、そんな時間も長くは続かなかった。みなちゃんがやって来たから。

「じゃあ、俺行くね。またね。」
「うん。またね。」


みなちゃんは、自転車を止めながら私に言った。

「あやちゃん、なおくんと何話してたのー?」

私は、顔が赤くなっていないか気になりながら返事をする。

「あー、部活の事だよー。」
「ふーん。そっかぁ。部活の事ね・・・。」

なんだか、みなちゃんの言い方に引っかかるものを感じてしまった。

みなちゃんと、いろいろお店を見て回った。
服、靴、文房具、本・・・。
そして、今日の記念にお揃いのボールペンを買った。プリクラも撮った。


歩き疲れたので、2人でジュースを飲んだ。
その時、みなちゃんが言った。私が聞きたくなかった事を。

「あのね、あやちゃん。私、あやちゃんに聞いて欲しい事があるの。」
「なに?」
「私ね。私、なおくんの事が好きなの。」
「え、あ、そうなんだ。」
「だからね。あやちゃんも協力して?」

ほら、言わんこっちゃない。
私が自分の気持ちを秘密にしていたからだ。
私も、こんな風にみなちゃんに言っておけばよかったんだ。

こうなっては、私もこう言うしかない。

「分かった。協力するね。がんばってね。」


みなちゃんは、行動が早い子だ。
早速、なおくんに気持ちを伝えていた。
そんなみなちゃんが私は、憎らしくもあり羨ましくもあり、おかしな感情になってしまった。

「あ・や・ちゃーん!聞いて、聞いて!」

みなちゃんの上機嫌な声。私は耳を塞いでしまいたかった。

「あのね。私、なおくんと付き合う事になったんだよ。」
「そう、良かったね。」

私は、そう返事するので精一杯。
もう、私のバカ・・・。
なんで、あの時自分も彼が好きだと言わなかったのだろう。

それでも、みなちゃんは大事な友達だ。私は、自分の気持ちを押し殺して残りの3年生の期間を乗り切る事に決めた。

私は、受験生。恋愛ばかりやっていられない。

今まで通り、2組や部活でなおくんに会う。
私は、なおくんを見るのは少し辛かったけど、なおくんを見ていたかった。

すると、なおくんはいつも何か言いたげな目をして私を見る。そして、目が合う。視線はお互いに外さない。私も視線に気持ちを込める。

だけど、仕方ないよね。
だって、あなたは友達の彼なのだから。




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