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#68|妖怪は今もいる。世代を超えて愛されるわけ。

ホントに妖怪がいる…とは思ってませんよ、そりゃ。

イオンエンジンを搭載した探査機が、直径たった870mの小惑星から地球の起源解明につながる物質を持ち帰る時代です。
月面に人類が長期滞在する計画が、夢物語ではなくなる時代です。


科学の発達は、私たちの生活を隅々まで明らかにしました。
「逢魔が時」でも人はせわしく動き回ります。「べとべとさん」も、人の歩くスピードが速すぎ、付いていけなくて困り顔でいるでしょう。


そう、妖怪なんていません


それでも私たち、特に子どもたちは妖怪に心惹かれます。うちの娘(4)は、今のところ、見えないけれど本当にいると信じています。

なぜ私たちは、妖怪にこんなにも心惹かれるのでしょう?

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妖怪は子どもたちの「癒し」

妖怪は空想上の生き物(?)ですね。この「空想」と言う点が、子どもにとっては非常に重要な意義を持っています。

児童心理学の研究者・村田孝次氏は、著書『児童心理学入門』の中で、子どもの発達における空想力の持つ役割について、3つのポイントを見出しています。

✔ 1つ目は、大人の世界の複雑さを理解し、遊びを通じて身につけることを手助けする役割。
✔ 2つ目は、阻止された感情・動機を解消させ満足させる手助けになる役割。
✔ 3つ目は、望ましい人格を発見し、空想ドラマを創り出すことで自らに人格形成する手助けとしての役割。

特に2つめの役割ににおいて、「妖怪」が子どもたちの情緒面の安定に果たした役割は大きかったのではないかと考えます。

ひとことで言えば、妖怪は「子どもたちの癒し」です。



物質的な豊かさと引き換えに、現代の子供たちは「日々の余白」をなくしまいた。

自由に遊べる場所は減り、ありのままの自然に触れる機会も減り、家に帰ればTVだ動画だと刺激にさらされ続ける子も多いでしょう。

幼児期から習いごとを詰め込んだ忙しいスケジュール、家庭環境と働き方の変容によりあれしてこれして、と急かされる日々。

あるいは周りと比較され、プレッシャーを与えられ…


そんな現代の子どもたちが、一瞬で空想の世界に浸れる対象。それが「妖怪」です。

昔の生活を想起させる佇まいに非日常感を抱きつつ、常識では割り切れない不思議な世界に自分を連れて行ってくれる「妖怪」。

妖怪と交流すると、自然と空想に浸れます。子どもらしく、伸び伸びと。

だから「妖怪は現代の癒し」であり、子どもたちをひきつけてやまないのだと、私は思います。

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過去の「妖怪ブーム」も社会の変革期と重なる

実際、過去の「妖怪ブームを振り返ってみると、社会が大きく変化した時期と重なっています

社会の変化は生活の変化をもたらします。子どもたちにも知らずのうちにストレスがかかり、妖怪のニーズが高まったと見てよいのではないでしょうか。

妖怪への関心は日本の経済が急速に発展し、社会構造が根底から変わった昭和30年代(1955~1964)から徐々に高まりました。
この頃人気だったのが『悪魔くん』『ゲゲゲの鬼太郎』『河童の三平』などの漫画やアニメです。


昭和54年(1979年)に『口裂け女』が全国に出没し、子どもたちを恐怖に陥れました。昭和50年代は第二次ベビーブームと重なります。
都市部への人口流入と核家族化が進行。「家庭」の在り方が大きく変わっていった時期でもあります。


年号が平成に変わった1989年あたりは、共働き世帯が増加し高齢化が日本全体の問題になり始めた時期。バブル崩壊も始まります。

このころに小学校で大流行したのが「学校の怪談」。
トイレの花子さん』が怖くてトイレに行けない子どもが続出しました。
またトイレ以外にも理科室や音楽室、体育館、保健室にも妖怪が出没しました。

これらの部屋は子どもたちが日ごろ使う教室に対して、普段は使わない非日常の空間です。普段は使わない、ひっそりとした場所に妖怪が出る。伝統的な妖怪の出方と共通しています。


最近のブームは『妖怪ウォッチ』(TV放映 2004~2018)ですね。妖怪ウォッチは、そのスタート時点から「子どもたちの悩みからストーリーを編み出す」ことを意図していたそうです。


ここまで見事に「社会の変革期と妖怪ブーム」が重なるのは、やはり妖怪はその非日常性・異世界性によって子どもたちに癒しを与えていると言って良いと思います。

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今日はものすごく真面目に妖怪を論じてしまいました。

まあ、難しいことを考えなくてもいいのです。異形のもの・異世界のものになんとなく惹かれる。それで充分楽しめます。


「好きな妖怪ランキング」とかも書きたいのですが、需要ありますかね。あるいは「妖怪と幽霊の違い」の方が面白そうですか?


とりあえず、また明日。

【参考文献】


一緒に楽しみながら高め合える方と沢山繋がりたいと思っています!もしよろしければ感想をコメントしていただけると、とっても嬉しいです。それだけで十分です!コメントには必ずお返事します。