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#61|「上手だね!」って安易に褒めないで。描けなくなっちゃうから。

12月になった。

ベリべリ…
乾いた音とともに、カレンダーが最後の1枚になる。

剥がし終わるのを待ちきれない娘(4)は、後ろでマジックを手にぴょんぴょん跳ね回っている。

さあ、カレンダーの裏に落書きだ!
私も好きだったなあ、月に1度のお楽しみ!


『ママ、見ててねー…、いまからママのこと、かいてあげるねー!』

キュー、キュキュッ。
油性マジックが紙の上をすべる音とともに
何やら謎の歌を歌いながら
パジャマのまま
ご機嫌で朝からお絵描き。


今日も朝から元気だね、いいことだね。
私は朝ごはんの支度だな、とキッチンに向かうと後ろから呼ぶ声。


『ママー!描けないー!』

なにが?マジックが?


『ちがうー、ママのこと描けないー!』

え?そこに何か描いてるじゃん。描けてるよ?


『ちがうのー!!”じょうずに”描けないのー!!』


あ。
ついに現れたか…
これは「”とりあえず褒め”の弊害」だ。





おととい、義実家で祖父母や従姉妹たちと遊んできた。

コロナの影響でなかなか行けずにいたため、約1年ぶりの訪問。
皆、大喜びだ(ちなみに初孫でもある)。

彼らの記憶にある娘からは、ずいぶんと成長していたはず。娘がやることなすこと、全て拍手喝采。

折り紙をすれば、「上手~!」
おままごとをすれば、「すごいねえ!」
絵本を読めれば「偉い~!」
絵を描けば「上手~!」


久しぶりに会う祖父母や親せきは、嬉しくてたまらないんだろう。嬉しいから、全て「褒めて」くれるんだろう。

褒めるのは悪いことではない。
褒められて悪い気はしない。

しかし褒めポイントを間違えると、逆効果になるとも言われている。


間違った褒め方を続けると、子どもの行動が「褒められることが目的」になる。結果、大人(他人)からの評価ばかり気にし、自分がやりたいことを見つけられなくなってしまうとも…


事実、「上手~!」と”褒められた”ことで、「絵は上手に描かないといけない」という認識が娘に芽生えてしまっていた。たった1日で!

これまで『じょうずに描けないのー!!』と描く手が止まり、訴えてきたことは一度もなかった娘に。


名門小学校受験のパイオニア・伸芽会が出版した「子どもの非認知能力」を伸ばし方についての本にも、同様の記述があった。

(前略)そして、それは「この子はサッカーがうまい」「あなたは絵が上手だね」といったポジティブな言葉でも、その子の可能性を狭める恐れがあるのです。それは「評価」をしているから。評価されるとそれにとらわれてしまい、「次にできなかったらどうよう」と潜在的な不安感にもつながってきます。
ー「伸芽会式 非認知能力の伸ばし方」/佐藤 眞理・著


大人が「とりあえず褒める」気持ちは、よくわかる。
その子のことを深く知っていなければ、適切な声掛けをする方が難しい

瞬発力が命のリアルコミュニケーションにおける最適解が「とりあえず褒める」だ。場の空気を悪くせず、お互いが不快にならない、子どもも嬉しいから。


だから「とりあえず褒めること・評価すること」を子供の周囲から排除したいと思っても、それは不可能

子どもに関わる全ての人に、「今、娘はこういう成長過程にあります。だからこういう声掛けをお願いします」と触れて回ることなんて、無理な相談だから。



「なるほどな、”とりあえず褒め”の弊害は本当にあるんだな」
腹落ちした私は、娘の前に座り伝えた。


「あのね、『上手に描かなきゃ!』なんて思わなくていいんだよ!あなたが、思うように・描きたいように描けばいい。私はあなたの描く絵、そのままでとっても好き!だから自分がこうかな、って思うように描いてごらん!」


そっかー、と言ってまたマジックを動かす娘。
今度は黙って描いていた。
「ごはん、はやく食べちゃいなさい!」と怒られるまで。


娘はとても味のある絵を描く。
このまま自由に、自分が描きたいように、自分らしく伸びていってほしいと思う。

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そして子育ては、知らなかったことをいつも教えてくれる。
だから、面白い。

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