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#74白だしを使いこなす。

ここ半年くらいのことでしょうか、料理に白だしを活用するようになったのは。新しいものを生活に取り入れるのが苦手なわたしは、ずいぶん昔から白だしの存在を知っていたにも関わらず、手を出そうとはしませんでした。ちょっと高級そうだし、使いこなすのが大変そう。そんなイメージが湧いたという、ただそれだけの理由で敬遠していたのです。そんなわたしの煮物の味付けは、もっぱらほんだしとみりん、酒、醤油、砂糖、それから味の微調整のための麺つゆ。

「大体、こんなものだろう」
料理上手だった母のやり方をみていたせいで、わたしも計量スプーンで調味料を計ることは、お菓子作りの時だけで十分だとタカをくくっていました。二年ほど前から、それではいけないと思い出し、あれこれと料理本を手にとって読んでみると、それぞれの料理研究家が自分の調味料の黄金比率のようなものを解説しているではないですか!

「調味料のバランスって、こんなに大切なものだったのね」

人間の味覚は、「甘味」「塩味」「酸味」「苦味」「うま味」の五つが基本になっていて、何かを食べて美味しいとか、味わい深いと感じた時というのは、それらの味覚のうちのどれかを特に濃厚に感じ取れた場合なのかもしれません。わたしが食卓にあげるおかずは和食が多く、みりん、酒、醤油、砂糖を使っているとなると、「甘味」や「うま味」を味わう回数が多くなります。煮物にする野菜の種類に応じ、野菜それぞれの味が違っているとは言うものの、昔とちがい今どきの野菜は本来の味わいが薄まってきていることも否めません。そうなると、毎日違うメニューを考えて料理をしているにも関わらず、あたかも同じものを食べているかのような気分になってしまうということが判明していきました。

これではいけない。そこでまず何から変えていったかというと、「酸味」をおかずを一品に取り入れることでした。漬物はわたしにはちょっとレベルが高いのでナムル作戦の開始です。胡瓜、人参、ナスビ、豆もやし、ナムルにすると美味しい食材を選んで、ナムルを作る毎日が始まりました。ここで利用する調味料といえば、お酢と醤油、砂糖、ごま油、白ごま、そして結構な頻度で生姜を使います。生姜はチューブのものだと香りが弱すぎて、せっかく入れても味に深みが出ないので、わたしは生の生姜を冷凍しておき、使う時におろし器でゴシゴシと削って使うようにしています。

「おお、これはすっぱうまい!」

酸味のあるおかずがあると、他のおかずの「甘味」や「うま味」が対照的に引き立てられて、食事全体がより美味しく感じられるようになっていきました。すっぱいのが苦手なテル坊も、これなら食べられるとパクパク頬張ります。

生姜をすることを億劫がらなくなったおかげで、更に美味しく食べられるようになったのが釜揚げうどんです。大きなお鍋でゆでたうどんをテーブルの上に置いたコンロの上で、熱々にしておいて、それぞれが麺つゆのたれにとって食べるのですが、麺つゆの中に刻み葱やゴマだけでなく、すりおろした生姜をいれると、強くて爽やかな香りがうどんの甘さを引き立ててくれるのです。それに消化も助けてくれます。

こうして少しずつ改善を試みてきたわたしの台所事情でしたが、やはり本丸の和風の煮物たちの味つけ方法は、見直しをせまられる状況に追い詰められていきました(わたしが勝手に自分自身を追い詰めたのですが)。

「なんだか味がしまらない」

何度スプーンで煮汁をすくって味を確かめてみても、ぼんやりとした味にしかなっていない時があり、これに何を加えたらよいのだろうかと、頭を傾げてしまう出来事が何回か続いてしまい、とうとう白だしに手を出す決心をしたのです。醤油とも麺つゆともちがって、塩味の濃い白だしは、入れすぎると大変なことになるぞと思い、ネット検索したレシピの通りの分量で使い始めたのです。すると、なんだ、この味のしまり具合は。いい塩梅に仕上がるではないですか。だし巻き卵も簡単に出来てしまうし、親子丼も、ほうれん草の白和えも、唐揚げの下味も、もう迷わずに分量のままに使えばしっかりとした味がつくのです。

「こんなことならさっさと使えばよかった」と思わないこともないですが、ようやくたどり着いた白だしだからこそ、有難い気持ちがより強くなっているとも言えます。これから先、わたしがチャレンジしたいのは、炊き込みご飯とパスタです。ペペロンチーノもキャベツと鯖缶のパスタも出来るとあっては、挑戦してみないわけにはいきません。

日常のいろいろなことがマンネリ化してしまった時、一番手っ取り早い方法が、「食べるものに変化をもたらす」ことなのかもしれません。食べ物のよい刺激を受けて、気持ちも爽やかに。そんな毎日の小さな努力を楽しみながら続けていきます。




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