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ジモティーで、思い出のソファが教えてくれた

”シェアリングエコノミー”と言われ始めて久しいですが、
よくよく考えてみないと僕たちの生活の中にどのくらい入り込んでいるのかは分かりません。

「ねえ、このソファ・・・」

妻が言いづらそうに僕の顔を見ます。

新居に引っ越して3年が経ち、もうすっかり「我が家」になった僕たち夫婦の家には、あるソファがありました。


今日は、その「ソファ」の持つ”思い出”と、進化する”テクノロジー”の間で揺れ動いた感情を書きたいと思います。



不安な上京と長い道のり

5年前、僕は単身で上京しました。

といっても、今の会社に内定をもらい、どちらかというと「恵まれた」環境の中での上京でした。

”来月末には給料が振り込まれる”ことが決定した状態で、
家賃や生活費を心配することも特段ありませんでした。

一般的な「新卒」社員の風景だと思います。


でも、僕は不安でした。


荷物も最小限で引っ越し、ダンボールの空き箱をデスクにして、鍋のままラーメンを食べ、お腹いっぱいになればベットに寝っ転がります。

片付けや整理整頓が病的にできない僕の部屋は、床の”茶色”がほとんど見えません。


6畳3畳の1K、風呂トイレ別。

東京23区内でこの条件ならかなりの金額がしますが、なんとか安いところを見つけた僕の家賃は6万円。
それでも、田舎者の僕にとっては、”住むだけで毎月6万円もかかるのか!!”と驚愕する金額でした。

下町の住宅街にある、築45年のマンション、お隣さんの家はどうやらゴミ屋敷のようでした。

ベランダにはたくさんの廃棄物が置かれ、匂いこそしませんが、異様な雰囲気でした。
挨拶に行ってももちろん出てきてくれない。
3日連続で行っても反応がありませんでした。


ベットに寝っ転がりながら、

”こんなところから早く抜け出したい!”
”成功したい!”

今よりもっと未熟だった僕は、「東京」という何者かわからない大きな存在に、片手落ちの期待をしていたのかもしれません。


そんな期待と不安に挟み込まれた心を、少しでも癒そうと、僕は歩いて20分のところにある「ニトリ」に行きました。

何か、新しい家具を買えば気持ちも変わるかもしれない。

家具専門の売り場に向かった僕は、いくつかのソファに心惹かれました。


L字型の黒いレザーのソファ。
高級感がなんとも”東京風”ではありませんか。

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確かこんな感じでした。


”いいなあ〜買いたいなあ〜”

値札を見ると、

”¥150,000円”


”・・・うーん。”


新卒の少年にそんなお金はありません。


”無理かあ・・・”
”バスタオルでも買って帰ろうかな・・・”


一般雑貨が置いてある売り場に行き、食器やタオルを物色していました。


その時目に入ってきたのが、今回のソファでした。

布地で二人掛け、大きさも僕の部屋らしいくらいでした。

値札を見れば、”¥3,980円”。

”これなら買える!”


早速レジに持って行きました。

「配送されますか?」と店員さんに聞かれましたが、さほど重さも感じなかったので、”持って帰ります!”といい、箱に取手をつけてもらい、持って帰ることにしました。


片道20分、少し急げば15分、小走りなら10分。

160センチしかない僕の身長には不釣り合いなくらい大きな箱を持って、国道沿いを歩いていました。

けれども、軽いと思っていた箱はどんどん重く感じてきて、足取りも重くなってきました。
振り返れば、まだニトリはすぐそこ。
出発して150メートルほどで後悔しました。

”配送にすればよかった・・・”

戻ることも面倒なので、そのまま家を目指しました。


長かったです。


もう二度とソフアを持って歩くことはないだろうと思います。



出会いと距離感

上京してすぐに買ったソファ。

お世話になったものです。

色や形はダサかったけど、長く使っていると愛着も湧いてくるし、
初めは座り心地すら”こんなもんか”と思っていたのに、
朝までソファで寝てしまったこともあります。


妻と出会ってからも、狭いソファに二人で座って、小さなテレビを観たりしていました。

もしもL字型のソファだったら、少し離れて座ったかもしれません。

”しょうがなく買ったソファ”は、二人の距離を縮めるのに一役買ってくれました。


新居に引っ越し、同棲するのとほぼ同時に婚約し、新生活が始まりました。


この頃から、ソファとの距離感が生まれてきました。

生活スタイルは、「ソファに座って小さなテレビを観る」ことから、
「こたつでテレビを観る」になり、
そして、昨年くらいから、「別の部屋にもともとあったソファ(義妹がくれたもの)に座って、大きなテレビを観る」に変わってきました。


思い出のソファは、洗濯物やカバン置きになり、役割を失っていました。


旅立ち

「ねえ、このソファ・・・」

昨年秋、妻からの一言により、”思い出のソファ”の運命が動き始めます。


メルカリで売ることも提案しました。
「お金になる」からです。

しかし、それは、妻によって却下されました。

「もうそんなに綺麗じゃないから、売れないし、売れても・・・」
”そうか。。”
ジモティーで出そうと思ってる」

無料でモノやスキルを取引できるサイト「ジモティー」です。


”無料か・・・”

そんな気持ちでいました。



それから間も無く、妻から”最後の一言”が出ました。

「ジモティーで引き取り手が見つかったよ。」


いよいよ旅立ちです。



都会の片隅で

当日、何食わぬ顔で映画を観ながら、僕はそわそわしていました。

どんな人が取りに来るんだろう?
どんな顔で、どんな声で取りに来るんだろう?
僕は何て言えばいいんだろう?

珍しい感じの緊張でした。


”ピンポーン♪”

家のチャイムが鳴りました。


「あ、え、夜分にすいません(汗)ソファの件で・・・」

玄関先に立っていたのは僕より少し年上の清潔そうな男性でした。
スーツを着ていたので、仕事終わりかな?と思いましたが、玄関先で話し込むのも何なので、”じゃあ、早速運びますか?”と提案しました。

すると、男性は申し訳なさそうに、細長い紙袋を出してこられました。

大人なら分かりますよね。
多分ワインです。

え??と困った顔をしていると、

「この度は本当にありがとうございました。お納めください。そんな高いものじゃないんですけど・・・」

恐縮しながら受け取り、早速ソファを運び出しました。
始めた断られましたが、一緒にマンションの下まで運びました。

エレベーターの中、ほんの数十秒ですが、少しだけ話をしました。

地方都市にお住まいだったみたいでしたが、ご家族を残して単身赴任してこられたそうです。
最低限の荷物しか持ってきていないため、家具の準備もままならなかったそうです。


その表情は、
「これから頑張ろう!」なのか、
「家族と離れて寂しい」なのか、
「家族のためにも頑張ろう!」なのか、

僕には真実はわかりませんが、複雑な表情をされていました。


僕は22歳で上京して、自分なりに苦労しながら、ここまできました。

でも僕とは違う形の苦労や頑張りを、そのお兄さんから感じることができました。


お兄さん頑張ってるんだな・・・

僕もがんばんなきゃなあ・・・


ジモティーがなければ、このお兄さんのことを知ることもなかったでしょう。


大都会東京の片隅で、僕とお兄さんは少なくとも共鳴できることがありました。



みんな、みんな頑張って、現実に向き合って、たまには逃げながら、それでも頑張ってるんだなあ。



「東京って思ってるよりあったかいかも」


応援してくれている、地元の家族や仲間の顔が浮かびました。



<終わり>


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