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低酸素が脳に与えるダメージ。今日からできる3つの改善策

1分当たりに脳組織100gあたりで消費される酸素量のことを、「脳酸素消費量」と言います。脳血流量と脳動脈・脳静脈の酸素含有量から算出されるこの数字は、成人の安静時の脳酸素消費量は1分につき、脳100gあたり約3.5mlが一般的な数字です。これは、全身酸素消費量の約20%にも消費します。他にも、脳は人間が取りこむ酸素量の約25%を消費するとも言われているほどです。

脳の重量は全体重の約2%(人によります)であることを考えると、どれだけ脳が酸素を必要とする臓器であるか分かりますね。脳がいわゆる「低酸素」になってしまうと、本来の脳機能が発揮できないどころか、重大な障害につながってしまうことも。

今回は、そんな脳の低酸素状態が起こってしまう原因や、非常に怖い病気である「低酸素脳症」、そして脳の低酸素状態を解消する方法なども紹介していきたいと思います。

脳にこれだけ大量な酸素が必要な理由

まず、大前提として「人体における酸素の役割」から考えていきましょう。酸素はいわば、細胞のエネルギーを作るのに欠かせない存在です。呼吸によって取り込まれた酸素は、ヘモグロビンの鉄分と結びつき、血管をめぐり全身の細胞へ届けられます。そして、細胞内のミトコンドリアが酸素を用いて生命活動に必要なATP(アデノシン三リン酸)を生み出すわけです。

そして、もう一つの大前提である「脳の役割」ですが、これは言わずもがな「生命維持に必要なありとあらゆる活動のコントロール」です。知的活動、運動制御、消化器系・循環器系といった各種臓器の制御…。ありとあらゆる活動に、脳が深く関わっているわけです。

そして、脳は筋肉と異なり酸素を貯蔵できません。脳神経細胞では、血管を通じて供給された酸素が常に消費され、活用されつづけています。生きる上で、脳は「常に」「大量の」酸素を欲しているというわけですね。

脳にいきわたる酸素量が減ってしまう=低酸素の状態になったら、当然脳機能は低下します。いわゆる「呼吸が浅い」状態でも、集中力の低下、いらいらしやすい、運動能力の衰え、判断力・意思力の低下など、いくつもの弊害が起こることとなります。

脳の低酸素の原因

そんな脳の低酸素を引き起こす原因を、いくつか見ていきましょう。

①呼吸が浅い

そもそもの話として、呼吸による酸素を取り込む量が少ないという問題が挙げられます。特に現代人は、呼吸が浅く慢性的な酸素不足に陥っているという話はよく聞きますね。肺機能の低下は、40代頃から加齢とともに低下すると言われていますが、一般的に24歳男性の平均的な肺活量が4,520CC(女性は2975CC)である程度ピークになるのに対して、10年後の35歳ではそれが3,930CC(女性は2,700CC)に低下します。

20代半ば以降は社会人としても忙しくなる時期で、運動機会が減る+デスクワークが増え、姿勢も悪化しやすいです。様々な要因が重なり、呼吸の低下が心配されるようになります。呼吸が浅いという話からはややそれますが、特に男性で心配したいのは「睡眠時無呼吸症候群」。睡眠時に呼吸量が減るというのは、脳に深刻なダメージを与えるので、不安な人はなるべく早めに診察を受けましょう。

②ストレス

ストレスによる刺激が、呼吸活動に悪影響を及ぼすというのは有名な話です。ストレス状態とリラックス状態での呼吸運動を調べた研究では、ストレス状態だと呼気後のポーズ時間が、ストレス刺激が強いほど短くなったそうです。

これはつまり、呼吸のペースがストレス状態だと早くなるということ。その分酸素も取り込めているのでは?と思ってしまいますが、実際には腹式呼吸など大きく息を吸う運動ができないため、結果として体内の酸素量は低下していまします(この研究でも、リラックス状態では腹式呼吸での運動が増えたのが確認できたそうです)

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