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手塚治虫 (火の鳥 太陽編)

(1986/01-1988/02 「野性時代」(角川書店)連載 )

手塚治虫のライフワーク『火の鳥』の第12部で、実質的な最終話となった作品。

一見全く関係のなさそうな7世紀の日本と、21世紀の未来とを交互に描きつつ、
さらにそこに産土神と仏教の神の戦いを重ねあわせるという、三重構造の物語。
手塚治虫お得意の手法だ。

いつものことながら、一見無関係な物語が次第に関連性を持ち始め、最後に見事にぴったりと合わさっていくのは気持ちがいい。

今回の太陽編では、宗教戦争というものが描かれている。

手塚治虫自身はこの作品について、こう語っている。
信仰というものは人間がつくったものであって、宇宙の原理とか言ったものではなく、時代とともにどんどん新しい文化として取り入れられていき、そこで必ず古い宗教、文化との葛藤が生まれ、それによってまた新しい世界が生まれてくる。その繰り返しなんだということを描きたかったのです

私自身は特定の宗教を信仰しているわけではない。
あえて言うならば、手塚治虫の宗教観に影響を受けているのかもしれない。
子供の頃からずっと慣れ親しんできたせいか、手塚治虫が語る宗教観と言ったものに共感を覚えるのだ。

この太陽編で火の鳥が犬上に語るシーンがある。
火の鳥:人間というのは何百年何千年たっても
どこかでいつも宗教のむごいあらそいをおこすんです
きりがないのです
とめようがありません

犬上:きりがないって?
なぜなんですか?

火の鳥:それはねえ
宗教とか人の信仰ってみんな人間がつくったもの
そしてどれも正しいの
ですから正しいものどうしのあらそいは
とめようがないでしょ

犬上:あの侵略者の仏教を正しいっていうのか
おれはだんじて正しいとは思わないぞ!!

火の鳥:わるいのは宗教が権力とむすばれた時だけです
権力に使われた宗教は残忍なものですわ

テーマをそのまま火の鳥に語らせてしまって分かりすぎるぐらい分かりやすいメッセージになっている。
頭の固い人間は、ありがたみがない?からとわざと自分のメッセージを難解にする輩もいるかもしれないが、手塚治虫はそういうことをしない。
誰にでもメッセージが伝わるように敢えて明確に表現している。

一見、簡単そうに見えるかもしれないけれど、
深い!・・・本当に深いです!!
流石、手塚治虫です!!!こういう作品は誰にも描けません。


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