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原稿料の交渉が、わりと気楽になる。「自分の記事単価」を割り出してみた

ライターとして活動すると、原稿料について悩む時期が訪れる。この原稿料は妥当なのか。自分が書いた記事の価値… どれくらい? 見積もりを依頼されたり、原稿料を交渉したいけど不安しかない。そして頭を悩ませる。

「自分の記事単価」は一体いくらが妥当なのだろう?

これ永遠の課題ですよね。

なぜなら、上を見ればキリがないから。

責任を背負うくらいなら、安いままでもいっか?とか、最低でも生活費は稼ぎたいとか、ライター自身の置かれた環境や心理的ハードルによって目指すレベルや求めるラインが変わると思います。


自分の実力に見合う ”妥当な” 記事単価を把握しておくと、見積もりを依頼されても、原稿料を提示する際のモヤモヤから開放されると思います。

自分の基準を把握して、状況によってプラスα(または差し引き)する。見栄を張らず、ハッタリもなく、純粋に「自分の原稿料ルール」を決めておくと、心理的な負担が減ると感じてます。

だって、自分の能力を金額に換算するって、恐れ多くないですか。モヤモヤどころじゃない。この記事だと原稿料いくらです?と毎回聞かれて計算していたら、ヘトヘトになりそう……


ライター駆け出しの頃。

ビビリな私は「この記事だと単価どれくらい?」と聞かれて即答できず、家に持ち帰り、考えに考えました。それでも能力より低い金額を提示してたと思います。相手の出方を見ながら、ギリギリのラインで単価交渉する。こういった駆け引きが苦手でした。

そして、ライター2年目以降。

東京や各地のライターさんに話を伺い、過去の執筆実績を数値化してみました。そして分類・検証…… おお、なるほど!これはわかりやすい。

自分の「原稿料の単価」を割り出すためにこんな作業をしました。


1. 1本の記事作成に費やす、各タスクの時間を算出する

自分の作業時間を把握しなければ、時給も単価も弾き出せない。そう思ってタスクを細かく洗い出し、作業ごとに時間を図り、一覧表(Excel)を作成しました。

① まず、表を作成(Excel/スプレッドシート/Notion)
② に、タスクを細かく書き出す
③ 作業時間を図り、毎回入力する
④「作業工程 × 作業時間の一覧表」完成

記事URLを入力すれば、執筆実績一覧表も代替できます。他には、文字数、記事タイプ(※3で説明)、ジャンル、メディア名(or 企業名)、トータルの作業時間などを追加しました。

2.「作業工程×作業時間」一覧表を検証する

次に、作成した一覧表を検証しました。時間配分の精査、改善点や効率化、イレギュラーで費やした時間。こだわりたい・時間をかけたい作業を洗い出して分析しました。

① 各作業の平均時間(+時間幅)を把握
② 作業時間と時間配分の精査
③ 効率化できる作業はないか
④ 逆に、時間をかけたい作業は何か
⑤ どんなイレギュラーがあったか

3. 記事タイプごと、時間を割り出す

ある程度の実績がたまった段階で【1】の一覧表をもとに、記事タイプごとの「各作業時間/合計作業時間/文字数」を目安に検証しました。

私の場合は、取材ありきで執筆しているため、下記のような記事タイプが該当します。

●観光コンテンツ・長文(1スポット/撮影込/2,000文字前後)
●観光コンテンツ・短文(1スポット/撮影込/150〜200文字/冊子系)
●人物インタビュー(2,500〜4,000文字前後)
●企業インタビュー(2,000〜5,000文字前後)
●採用・求人の記事(雑誌/Web)
●サービスの導入事例
●SEOライティング(企業のオウンドメディア)
●地域の特集記事(雑誌・Web/取材・撮影込)
●地域のまとめ記事(Web/取材・撮影込)
●企画込みのコンテンツ制作

インタビューのみ、写真撮影込み、企画込み、企業への事前ヒアリングあり…… クライアントにとって重要な記事であるほど、事前準備に時間を要し、作業内容が増えていくイメージです。

ジャンルも追加すれば、検証時の参考になります。あとはExcelのフィルタ機能、降順⇔昇順でソートする。それを別シートにコピペして、最後の行に計算式を入力しれば、平均値を割り出せます。

<記事タイプ別|参考になる平均値>
・タスク別の作業時間
・1記事の合計作業時間
・文字数

記事タイプ別に算出すれば一目瞭然。作業時間の増減を比較したり、時間を要した or 時短でできた理由、イレギュラーの内容と費やした時間を把握できたり、応用が効くデータが取れると思います。

4. 過去記事の時給を割り出す

あまりにも古い過去記事に触れると、単価の低さに少々モチベーション下がりるかもですが(笑)、くわあ…マジかあ(こんなに安かったか…)と気づけたのは大きな収穫でしたね。

「過去/現在/未来」の時給を割り出します。

●現在の継続案件
●今までに最も受注が多い記事タイプ
●今後、積極的に引き受けたい記事タイプ
主に、このあたりを検証してみました。

①同じ記事タイプから数記事をピックアップし、総作業時間を「時給別」で換算する(時給1,000円の場合、2,000円、3,000円〜)
② 逆に、もらった原稿料と作業時間から「実際の時給」を割り出す
③ ①と②を比較して、妥当な時給を模索する
④  妥当な時給 × 平均的な総作業時間=妥当な原稿料
  ↓
④ さらに原稿料(or 時給)を数パターン考えます。
●最低限ほしい金額(過去・現在)
●直近の金額(現在)
●理想の原稿料(未来)

・何が何でもやりたい仕事なら、多少安くても…
・先方事情や予算が少ない場合、最低限ほしい金額を提示
・アナタにお願いしたい!と言われたら、理想的な金額

案件ごとに原稿料を調整したり、金額を提示しやすくなりました。

5. さらに「自分のスキル」を洗い出す

① どんな作業をしていたか(タスクの洗い出し→一覧表より)
② 時間がかかる or「苦手なこと」を把握する
③ 逆に「得意なこと」は何か

得意なこととは、人より早くできること。楽にできること。時間を忘れて夢中になれること。好き・楽しいと思えること。人から褒められることなど。

②は別の方にお願いする
③の得意な作業を増やす

自分の強みを知ると、プラスαを提案したり、交渉手段が増えます。自分の強み・得意分野を把握することでプラスαの提案ができ、原稿料アップにつながりました。

6. 過去記事の成果を分析する

自分が執筆した記事が、どんな成果をもたらしたか。実績の提示・記事の訴求力・説得材料として分析しておきます。

主な指数はPV数が多いと思いますが、正確には「売上アップ」「認知拡大」「顧客拡大」に寄与する記事の拡散が入口です。資料請求や登録者数、サービス・商品の売上アップといった数字的な成果は訴求力があります。

また、業界内での知名度アップから第一想起につながり、UGCの増加によって指名検索が増える。SNSでの口コミ/購買・利用者の感想をまとめて実績として提示すれば、原稿料の交渉に有利に働くと思います。

記事を公開して終了ではなく、数字的成果を確認しておきたいところです


そんなこんなで……
記事単体の原稿料であれば、ある程度の情報を伺うだけで原稿料を即答できるようになりました。

しかし、即答できるのが重要なのではなく、「正確な自分の記事単価」を把握するのが目的です。クライアントが考える原稿料(+能力)と自分が思う希望単価(+実力)に乖離があれば、案件受注に至らないからです。

とはいえ、エッセイやコラムを書いてファンが増えれば、note有料マガジンとか、運が良ければ夢の書籍化!なんてことも在り得る時代。文章を書き続ける楽しさを多くの方に体験してほしいなと思ってます。

<結果として>
① 内容を聞くだけで、ギャランティが弾き出せるようになった
② 自分の原稿料を把握したら、受けるべき案件が見えてきた
③ 自分の得意+αを提案し、案件受注に至った
④ 複雑な内容 or 重い案件には、高い金額を提示できるようになった
⑤ この経験を若手ライターに引き継ぎたい

検証に時間を費やしますが、自信がつくというか、正確なデータが根拠となって「自分ルールの相場」を把握てきるため、見積もりも、原稿料の交渉も、現在はわりと気楽に打診しています。

7. 最後に、原稿料に関わるアレコレ

◾原稿料と経費は、別々に請求しよう
受注時に毎回確認、基本は原稿料と経費は別々に請求してます。

沖縄ですと、高速代・ガソリン代を含む「交通費」、飲食店取材の「飲食代」、離島取材の「宿泊代」など。ギャランティが数十万と高額な場合、領収書を何十枚も提出するよりは、交通費込みで対応したりします。

◾原稿料は税別で請求する
インボイス制度が始まり、未登録のライターには「原稿料は税込みで」と消費税が内税にされるケースが発生しているようですね。ただ基本は「税別」で請求することを念頭に置きたいところです。

実際には、(法人ではない)フリーランスのインボイス登録者は「消費税」を税務署に治めるため、原稿料1万円(税別)の場合、消費税1,000円→税務署に支払う。源泉徴収税(10.21%)1,021円→差し引かれて入金される。手元に残る金額が8,979円です。

インボイスは未登録。だから、原稿料は内税!と言われた場合、原稿料1万円(税込)から源泉徴収税(10.21%)1,021円を差し引かれて、8,979円の入金。最終的に手元に残る金額は、インボイス登録 or 未登録どちらも同じ金額になる計算です。

インボイスに登録するメリットは、仕事の受注が安定すること。デメリットは経理が複雑化することでしょう。

以下、原稿料の「税別 or 税込み」、経費についてまとめてます。

◾どんな情報があれば、見積もりできるか

作業工数と作業時間、自分の時給、記事タイプ別「自分の記事単価」を把握できると、ある程度の情報があれば、記事1本分の見積もりが簡単にできると思います。

こちらのnoteにまとめてます。


原稿料アップへの早道は、自分の原稿料を把握すること。いろいろ検証・分析を行いましたが、実は未だに検証中です(どれだけ検証好きやねん…

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