三浦紀夫

真宗大谷派僧侶/上智大学グリーフケア研究所非常勤講師『グリーフケア援助論』/文化時報『…

三浦紀夫

真宗大谷派僧侶/上智大学グリーフケア研究所非常勤講師『グリーフケア援助論』/文化時報『紙上セミナー』講師

マガジン

  • 福祉仏教の現場から

    文化時報で連載しています。

  • 安住荘日記

  • 塀の外の教誨師

    教誨師は、刑務所などを訪問し受刑者と面談する宗教者である。筆者は、一般社会で元受刑者や執行猶予者の生活に伴走する僧侶。つまり”塀の外の教誨師”というわけである。 このマガジンは、そんな”塀の外の教誨師”の実務を書いた記事を集めてある。

最近の記事

2022年 初稽古

安住荘の2022年が始まりました。 昨夜は「民謡教室」がありました。皆さん熱心にお稽古されていました。 この部屋は先々代理事長が開かれた安住荘の中心「聞法道場」です。今は聞法会だけでなく、文化教室としても使ってもらいます。

    • 「忘己利他(もうこりた)」な伴走型支援

      大阪府協力雇用主会連合会の会長をされている日本商運・田中社長をお訪ねしました。更生保護の世界で超有名な御仁です。 僕は、福祉的支援者として大阪弁護士会さん等と協働することを始めました。「地元(八尾市)の雄」に今後ご指導いただきたいと考え、八尾市議の畑中先生にお連れいただいた次第です。 田中社長の武勇伝を「へエ〜」とお聞かせいただきながら、支援のヒントもたくさんもらってきました。もちろん、同じことなどとてもできません。「男前な」支援に強い憧れを感じますが、僕の持ち分で真似を

      • 4月1日

        今日から新年度。 僕の授業の履修状況を確認してみた🤓 今のところ60名弱で昨年度と同じくらい。2学部しかない小さな大学。必修科目でもない「死」と向き合う授業。これくらいの人数が履修してくれたら上等だね。名簿を見ながら「どんな学生かな」とワクワクしている。 例年にない傾向を発見。昨年後期に単位認定した学生の名前が今年前期にも数人あった。昨年前期は「リモート授業」だったので、諸事情で単位を落とした学生が再履修しているのだ。 『できるだけ単位を取りやすくするから、頑張るんやで

        • インプット情報①

          2021年3月24日(水)13時30分~15時30分 「刑務所の中の作業療法~地域社会に向けた塀の中の取組」 講師:足立 一 先生(大阪保健医療大学・大学院准教授/作業療法士) よりそいネットおおさかさん主催のセミナーに行ってきた。 おおまかな内容受刑者は栄養と休養には充分配慮されているが、「脳の活性化」には見向きもされていない。号令と単純作業の繰り返しの私語禁止空間に何年もいたら社会復帰が難しくなる。近年はSST(ソーシャルスキル・トレーニング)が実施され、作業療法士が

        2022年 初稽古

        マガジン

        • 福祉仏教の現場から
          40本
        • 安住荘日記
          2本
        • 塀の外の教誨師
          5本

        記事

          刑事司法と仏教

          明治41年に制定された「監獄法」は一度も改正されることなく平成の時代まで続いた。平成になっても明治時代にできた法律で刑務所が運用されていたのである。 平成14年あたりに(21世紀になってやっと)受刑者の処遇が問題化し、平成18年に「受刑者処遇法」が施行され「監獄法」が廃止へと向かう。そして、「司法と福祉の橋渡し」という必要性が生まれ、平成21年から「地域生活定着支援事業(現・地域生活定着促進事業)」が厚労省の管轄として始まった。 * 法律や制度が変化しても「人の心に染み

          刑事司法と仏教

          福祉仏教とは

          ここでは、福祉領域での仏教活動と定義する。 仏教活動とは「抜苦与楽」を行うこと。相手の痛みを「我がこと」と感じ、痛みを和らげようとする働きかけである。身体的痛みは医療との連携、社会的痛みは介護や行政との連携が必要となる。 福祉仏教の担い手は、主に僧侶となる。「慈悲と智慧」を宗に、痛み苦しむ人々に寄り添う。「伴走型支援」という。 理屈はさておき、実際に活動していく方法の研究と実践者の開拓がこのnoteの目的だ。「福祉仏教実践研究」と名づけた。 文化時報社「福祉仏教入門講

          福祉仏教とは

          文化時報社「福祉仏教入門講座」開講

          2021年2月1日、文化時報社「福祉仏教入門講座」が開講した。第1講として「福祉が宗教者に期待すること~現状と課題」の講義が行われた。 初回から白熱の講義張り詰めた空気の中、第1講が始まった。一言も聞き漏らすまいと食い入るように画面を凝視する僧侶の受講者。ディスカッションも盛り上がった。 内容を講師自ら公開するわけにはいかない。目指すのは「困っている人がいたらお寺へ駆け込む」という文化を作ること。 予想以上にポテンシャルの高い超宗派の僧侶が集まった。とても面白いネットワ

          文化時報社「福祉仏教入門講座」開講

          2021年を福祉仏教元年に!!

          明けましておめでとうございます。 皆さまにとって素晴らしい1年であることをお祈りいたします。 本年もどうぞよろしくお願いします。     * 重い空気の中、2021年が始まりました。自粛がしばらく続きそうです。今年はどんな1年になるのでしょうか? 昨年は「人間の力に限界がある」ことを思い知らされたように思います。疫病や災害のたびに、人間の無力さが浮き彫りになります。 僕は大きな目標を掲げています。 「2021年を福祉仏教元年に!!」 希望をもって新しい年を歩みたいと思

          2021年を福祉仏教元年に!!

          失敗を隠さなくてもいい職場

          地域共生ケア生野推進委員会というのがある。今日は役員会があった。 同委員会は、生野区内にある某府立高校の就労支援に取り組んでいる。今回はそこを掘り下げて話し合った。 「失敗を隠さなくてもいい職場を作ろう」 役員の1人からそう提案があった。失敗を他の人がカバーすることで、そんな雰囲気を作ることで、働きやすい環境になる。利用者のエンパワメント(秘めた能力の発揮)につながる。 そうだ。我々が目指すのはそこだろう。そんな職場を作って、若い力を迎えよう。 合掌

          失敗を隠さなくてもいい職場

          大学生は「真珠湾攻撃」を知っているか?

          今日の授業は「戦争」について学生と考えてみた。 日本で暮らしていると、広島、長崎に原子爆弾が投下されたことをよく見聞きする。特に8月。それに比べて12月はおとなしい。 「12月8日は、何があった日ですか?」 学生に尋ねた。 仏教学科の学生は成道会(釈尊が悟りをひらいたとされる日)を思うかもしれない。音楽好きはジョン・レノンの命日かな。 「1941年12月8日、日本軍はハワイの真珠湾を攻撃し米国と戦争状態となった」 「その攻撃で、アリゾナ号という米国戦艦が海に沈んだ。

          大学生は「真珠湾攻撃」を知っているか?

          傍聴席が高校生でいっぱい⁉︎

          弁護士さんから更生支援計画書の作成を依頼されている案件がある。今日は初公判なので大阪地裁へ。 早く着いたので、前の裁判中でしたが傍聴席で待つことに。でも、ドアを開けてビックリ。なんと高校生がいっぱい。 しかたなくローカで待つことに。ほどなく担当弁護士さんがやってきた。『なんで外でいるの?』って顔なので、「傍聴席がいっぱいなんですよ」と説明した。 すると、どこからか7〜8人の男女高校生が集まってきた。たまりかねた僕は「君たち次にこの部屋へ入るの?」と尋ねてみた。 迷惑そ

          傍聴席が高校生でいっぱい⁉︎

          ぼくの心境にドンピシャの作品

          偶然みつけた。 『前科者1』 著者 香川まさひと・月島冬ニ 発行 小学館2018 主人公は若い女性の保護司。 実際の保護司はここまでできないだろう。マンガの世界といえばそれまで。しかし、ぼくの心境にドンピシャだった。読みながら、ぼくの活動とダブってきた。 1巻P 91 ぼくは、計算でやっているわけではない。でも、相手にはこう見えるのだろうと思った。保護観察中の家に、真夜中に走ったりする。バカに見えるかもしれないが、放っておけないのだ。 1巻P 155 そう、ぼくの

          ぼくの心境にドンピシャの作品

          幼いわが子を亡くしたママの話

          もう20年近く前の話になる。 今でいう「グリーフケアができる人」として、少しは知ってもらえるようになってきた頃のこと。 幼い女の子が亡くなった。そのママを紹介された。生まれた時から大きな病があり、数年の命と覚悟はしていたという。短い時間だったがママは女の子と精一杯生きた。 「○○ちゃんのお家を作ってあげたい」 ママはそう言った。ぼくは、ママを連れて仏壇屋さんに行った。昔ながらの金仏壇や唐木が並ぶなか、当時流行りだした「モダン仏壇」を選んだ。 お仏壇は仏様をご安置する場

          幼いわが子を亡くしたママの話

          毎週木曜「大文字」に向かって走るわけ

          ぼくは、京都にある仏教系大学で週1回だけ授業を担当している。「臨床死生学論」という科目である。将来住職になる学生向けの授業だが、、履修しているのは社会福祉学部の学生の方が圧倒的に多い。よって、「ソーシャルワーカーを目指す学生への実践トレーニング」と位置づけしている。 大阪から京都への移動は乗用車に 大阪駅から京都駅までは新快速で30分。またこの区間は料金も特別に安い。ちなみに、ぼくの自宅付近の八尾駅から京都駅までJRだけで行くと1100円。それが、途中で地下鉄を利用すると

          毎週木曜「大文字」に向かって走るわけ

          拘置所では「弁護士が超VIP」な話

          ​ 大阪拘置所に行ってきた。守秘義務があるので面会内容は書けない。ぼくは仕事柄(なんの?)拘置所には時々行くが、今日同行した弁護士さんの超VIPさにたまげたので報告する。 身体検査スルーなの!?拘置所にスマホは持ち込めない。アップルウォッチもダメ。受付にあるロッカーに預けることになる。次に金属探知機(空港で通るアレ)をくぐるのだが、弁護士さんはなんと脇をすり抜けた。係員は何も言わない。もちろんぼくは通ることになる。 「ビー」 不愉快な音が鳴り、カバンを広げボディチェック

          拘置所では「弁護士が超VIP」な話

          ”塀の外の教誨師”とは・・・

          世の中の刑務所や拘置所には、教誨師と呼ばれる宗教者が出入りする。その数1820名(2020年1月現在、全国教誨師連盟サイトより)。しかし、刑務所や拘置所から釈放された後を「教誨(教え諭す)」する宗教者はどれだけいるのだろう。ぼくは、あえて”塀の外の教誨師”と名乗り自分の活動を記録していくことにした。 <ご注意>プライバシーには細心の注意をはらうつもりです。この仕事を広めたいという思いから記事を公開しています。ご寛容くださいませ。 ”塀の外の教誨師”の仕事 大きく分けて2

          ”塀の外の教誨師”とは・・・