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短歌

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連作『ポスト』

招待状や入学証は届かないまま壊される実家のポスト

赤ペンとばあちゃん以外から手紙こないかなって考えていた

一晩で決意出来るの?デニーズもテレ東もない世界に行くって

魔女に近い制服を着て大学院までついている学校に行く

教室で心の中で唱えても意味がないから忘れた呪文

プリンセスというよりプリンセスがいる世界に憧れていたあの頃

死後よりも遠い世界にいることを信じたままで大人になった

↓初出

最近読んだ短歌🌸

見たことのないスーパーで見たことのあるものを買う 旅が始まる

マシュマロを敷き詰めて焼く この町でいちばんあまい朝食にする

花びらを踏みしめながら イメージの通りのことは起こらないから

眠ってるはずの時間に音楽を聞けば私の中のあなたが

覚えてることの一つに友達でなかった頃のきみの微笑み

少しだけ日々を楽しくしたいから1DKにしろいかいじゅう

左手をご覧ください私たち同じ記憶を残しましょ

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連作『車窓から見えるコーポに暮らす夢』

車窓から見えるコーポに暮らす夢 自分でつけるピリオドは染み

車窓から見えるコーポに暮らす夢 弱にしたことない扇風機

車窓から見えるコーポに暮らす夢 角を曲がればフリーダイヤル

車窓から見えるコーポに暮らす夢 ストーブよりは賢い私

車窓から見えるコーポに暮らす夢 裸眼で君を見たことがない

車窓から見えるコーポに暮らす夢 機械に敵わないのが誇り

車窓から見えるコーポに暮らす夢 溺れても変わ

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連作『飴玉』

ポケットに入れっぱなしの飴玉を舐めてしまったくらいには鬱
どの街を歩いていても吸い殻が落ちてて鳩は二足歩行
会議から戻れば冷めたコーヒーとふせんまみれの資料と 私
九十分制のコメダで立ち直ることに何度も失敗してる
涙だけ足りない私 忘れずにドラッグストアに寄れるとことか
マネキンの通りに服を揃えても気付いたら下向いちゃってるし
朝だっていきなり光るわけじゃない 始発のためにドアを開ければ
お揃いに

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九月の自選短歌🌕

幸せかどうかはわからないけれどあなたと歩く小路はきれい

アンカーとして走るから棒切れになったバトンも渡してほしい

便利屋を始めたけれどサポートで入ったバンドでそのままデビュー

一人ずつ願いを叶えてあげたのにいつまでも訪れない平和

俯いた人たちばかり街中に誰かのための何かの印

寮からは青い夕焼けお母さん私のとこはまだ大丈夫

視聴率90%を目指しますまずは司会に喋るペンギン

七月の自選短歌🍉

制服で行ける場所には限界があって リュックを前に抱える

文化祭の準備に誰も来なくって後ろの黒板綺麗にしてた

野球部がテレビに出てる同級生って言葉はなんて脆いんだろう

あの人が好きなバンドを好きな君を好きな僕。あ、ここで終わりか。

アラームが鳴り続けてる朝がある遠い遠い遠い教室

六月の自選短歌☂️

カーテンを閉めたままLINEを返す パキラの花言葉は「快活」

外国の言葉で何か書かれてる悪口だったとしてもきれいだ

夏の始まりは例えばあなたから届く手紙の一行目とか

もう一度オムレツを焼く大切なことが段々わからなくなる

アレクサに出来ないことはなくなって例えばあたしにおやすみのキス

五月の自選短歌

君のこと信じているよ天気予報よりも明日が来ることよりも

ンジャメナ、で回避したのに内申、と言ってあなたは角を曲がった

何もかも共有してるはずなのに君だけ泣いているラストシーン

水曜に必ず着てる服がある 校則の亡霊に抱かれて

アルバイト募集中の貼り紙のターゲットから外れて 五月

四月の自選短歌🏢

朝、起きたい 昼、光りたい 夜、きみと同じことを思い出したい

「一度だけ話しかける」を何回も繰り返したら友達になる

大丈夫 軌道修正できる矢に変えたから指、離してみてよ

室温もフォントも文末も決められていて けれど まだ歌が好き

春なんてみんな仮面を被ってる残したくない桜餅の葉

三月の自選短歌🌸

先輩が奢ってくれたコンポタが消えて自販機ごと春になる

花道をみんなで歩く地元から出る人も出ない人も私も

白いこと冷たいことを知りたくて雪という字に何度も触れる

電源を切ってこれから夜になる夜になるあなたを許したい

いつまでもフラッシュモブが終わらない 私だけ守っている校則

二月の自選短歌🍫

丁寧に危険に加担することを美しいって呼ぶ 化学室

放課後にしか使わない筋肉のためにプロテインまた飲んでいる

嵐って調べてまずはアイドルが出るからこれが平和なんだろ

店長へ こんな景色の連続の先にあるのが夢なんですか

お客様、いつものやつじゃないんすね 変わらないのは俺だけっすね

恋人へ 君は世界に振り仮名を振って私に読ませてくれる

母になる以前の母が歩いてる父より優しそうな男と

作文

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一月の自選短歌🍶

海老名にも東京ばな奈が売っていて引き返すなら今だと思う

てかセンセ、ウチらがメイク落としたらマジで見分けがつかないんじゃね

引き出しを開ければすぐに行けるけど明日が来るのを君と待ちたい

青信号ばかり続いて靴紐を直せないまま走り続ける

「空白」と空白に書く必要があるから少しだけ生きづらい

十一・十二月の自選短歌🌰🎄

ぶつかってまた歩き出す それだけの縁があなたでなくてよかった

卵均一200円 孵化すればそれぞれ与えられてた名前

君のこと信じているよ天気予報よりも明日が来ることよりも

デザートにデザートつけて夕食と呼ぶには少し甘いテーブル

出会う人みんな私を知っていてパチンコの景品までくれる

東京に売ってないでしょ 瓶入りのフルーツオレを頷いて飲む

ぬいぐるみ忘れてますよ(縁側で柿と一緒に干してる写

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九月の自選短歌🍐

あの人の私服を知らないまま夏が終わってしまう 欠けたミンティア

制服の重さを取り払うようにメトロが風を起こしてくれる

パンプスで軽やかに行く人もいる絆創膏が足りない私

あなたへのおすすめばかり選んでるハッピーエンドに溺れていたい

ベランダに置きっぱなしのサンダルがきれいな星を見れますように