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三浦豪太の探検学校

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冒険心や探究心溢れる三浦豪太が世の中について語った日本経済新聞の連載記事「三浦豪太の探検学校」(2019年3月に最終章)の、リバイバル版。わずか11歳でキリマンジャロを登頂。フリ…
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2022年1月の記事一覧

父と同じ景色眺めて

2013年5月25日日経新聞夕刊に掲載されたものです。  エベレスト登頂への長い道のりの第一歩を踏み出した時、日本の皆の思い、チームの思いを背負いながら、父と一緒に同じ景色を眺め、世界の最高峰に立てるようにと願った。  初登頂の2003年は、70歳の父の前を歩き、頂上近くで父に譲り、後ろにぴったり付いていった。その重い足を引きずりながらゆっくり登る姿に感動したものだ。遅くとも、この確実な一歩がこの世界の最高点まで導いてきたのだと。  前回の08年は、僕が脳浮腫になって、足

年齢という面白み

2013年5月18日日経新聞夕刊に掲載されたものです。  今月10日、エベレスト山頂アタックへ向けての最終順化トレーニングとしたプモリ山の高所キャンプからベースキャンプへ戻る途中、世界的登山家のラインホルト・メスナー(イタリア)と再会した。彼はエベレスト登頂60周年となる今年の記念イベントに招待されてきたという。  メスナーは不可能とされていたエベレストの無酸素登頂を1978年に成し遂げ、さらに世界にある8千㍍峰14座すべての無酸素登頂だけでなく、これらの山々のバリエーショ

標高5300㍍の世界会議

2013年5月11日日経新聞夕刊に掲載されたものです。  4月下旬、標高5300㍍のエベレストベースキャンプで公募隊の大手IMG(International Mountain Guides)にはロープ等の登山ルート工作装備がずらりと並んでいた。そこに各国登山隊の代表らが次々と集まり始めるとIMG代表のグレッグが「ここにはエベレスト登山のための6400㍍のロープ、(途中で分かれる)ローツェ登山のための2400㍍のロープ、100のアイススクリューとカラビナ、150本のアイスバー

受け継がれる冒険史

2013年4月24日日経新聞夕刊に掲載されたものです。  エベレスト・ベースキャンプへのトレッキング中、ラクパ・チリシェルパに会った。  彼とパートナーのバブ・スヌワは2011年、エベレスト登頂後、8848㍍の山頂からパラグライダーで飛び降り、42分のフライトの後、シャンボチェ空港に着陸した。その後、2人はネパールからインドのベンガル湾まで850㌔をカヤックで下り、彼らはナショナルジオグラフィックの冒険賞を受賞した。  この大冒険について、僕は以前、有人で世界的パラグライ

器用なシェルパ

2013年4月20日日経新聞夕刊に掲載されたものです。  エベレストに向かう途中、いつもシェルパの里「ナムチェバザール」に数日滞在する。高度順化を行うため近くの山や丘に登って過ごすのだ。  山を登っていると、制服を着た子供たちに追い越される。僕達がトレーニングで登る、その坂道は通学路でもある。彼らは毎日朝8時にナムチェを出発して、クムジュンにあるエドモンド・ヒラリー卿が設立した学校に向かう。8時50分の始業に間に合うよう、僕たちの足で2時間ほどかかる道程を半分以下の時間で飛

ウィルス しっかり対策

2013年4月13日日経新聞夕刊に掲載されたものです。  今回のエベレスト遠征に先立ち国際山岳医である大城和恵先生の強い勧めで、狂犬病のワクチンを打ってきた。狂犬病は犬のワクチン投与と徹底した野犬駆除により近年、症例が少ないが、ネパールなどの発展途上国ではまだまだ深刻な問題で、致死率が95%にも及ぶため侮れない。  これだけネパールへの遠征を繰り返してきた、わが三浦隊は今まで一度もワクチンを打っておらず、その現状を知った大城先生はあきれていた。  狂犬病のリスクが依然として

いざエベレストへ

2013年3月30日日経新聞夕刊に掲載されたものです。  3月9日未明、僕と父・三浦雄一郎(80)はエベレスト登頂を目指すため日本を出発、ネパールのカトマンズへ向かった。  70歳から始まったエベレスト挑戦はその後、5年の周期で行われ、それぞれのプロジェクトに挑戦があり、意義があった。  3度目の今回のテーマは「希望の軌跡」。70歳での登頂は当時の最高齢記録であったが、それからさらに10年、80歳という人類未知の領域で目指す地球上最も高い頂、その一歩一歩が人類の希望の軌跡と

9回目の体力測定

2013年3月23日日経新聞夕刊に掲載されたものです。  エベレスト遠征出発を間近に控え、様々な準備があるが、先日、鹿児島の鹿屋体育大の山本正嘉教授の元へ体力測定に父と行ってきた。鹿屋体育大では2001年からほぼ毎年体力測定を行い、今回で9回目になる。東京からはるばる九州の突端まで行く理由は登山生理学の専門家である山本先生のアドバイスをもらうためと、毎年同じ施設と測定者で行うことで経年の流れと対策を確保できるからだ。  80歳にして3度目のエベレストに挑む三浦雄一郎の経時

スキーで老化防ぐ

2013年3月16日日経新聞夕刊に掲載されたものです。  「北海道アンチエイジングクラブ」という学会が、北海道ニセコグラン・ヒラフスキー場で行われた。毎回スキー場で開かれ、アンチエイジングの最新事情に触れながら参加者がスキーをしっかりとできる時間が設けられている。  医学的な学会がスキー場で行われるのは珍しい。この学会は「運動、食事、ゴキゲン」がアンチエイジングに密接に関係していると提唱する慶応大学医学部眼科学教室教授・坪田一男先生の意向が反映されている。僕もスキーがゴキゲ