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いざエベレストへ

2013年3月30日日経新聞夕刊に掲載されたものです。

 3月9日未明、僕と父・三浦雄一郎(80)はエベレスト登頂を目指すため日本を出発、ネパールのカトマンズへ向かった。
 70歳から始まったエベレスト挑戦はその後、5年の周期で行われ、それぞれのプロジェクトに挑戦があり、意義があった。
 3度目の今回のテーマは「希望の軌跡」。70歳での登頂は当時の最高齢記録であったが、それからさらに10年、80歳という人類未知の領域で目指す地球上最も高い頂、その一歩一歩が人類の希望の軌跡となるべく命名されたものである。
 先週、雄一郎の集大成とも言える今回の遠征に先立ち、明治神宮に参拝し、これからの道のりを胸に、心を込めて手を合わせた。澄み渡った青い空に大鷲の姿を感じたと父は言う。

 その翌日、遠征をサポートしていただいている企業の方々や「三浦雄一郎エベレスト応援基金」へご寄付いただいた全国の支援者と共に激励会を開催。
 エベレストを取り巻く環境はこの10年で大きく変わった。ネパールは王政が廃止され、民主化の方向に向かっている。現在、その過渡期にあり、政治的、経済的な混乱があり、人件費や物価が高騰、これが登山費用に直接影響を及ぼしている。
 そのためにこうした企業スポンサーや応援基金がどれほどありがたいか、プロジェクトに協力してくれた一人一人に心から感謝を申し上げたい。
 エベレストのベースキャンプでは応援をいただいた方々の名前が書かれた「支援隊」旗を掲げることで、また大きな勇気が湧いてくる。

 出発前の慌しい準備中にも大切なのは、それぞれの思い思いの時間を作ることだ。
 父は都内で例年よりも早い桜の開花に喜び、一人自転車で都内を1日ぐるりと回り、満開の桜をめで、楽しんでいた。兄・雄大は菅平でスキーレースに出場している子供の応援のため、準備の合間をぬって家族サービスに余念がなかった。僕は遠征準備最終段階に漏れがないかなどの確認と不在時の間の仕事に追われた。しかし、少しでも家族との時間を大切にしたいと心がけた。
 応援してくれる人々、家族、そして仲間たち、帰ってくる場所があるからこそ世界最高の高みを目指すことができる。では皆さん、行ってきます。

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