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ウィルス しっかり対策

2013年4月13日日経新聞夕刊に掲載されたものです。

 今回のエベレスト遠征に先立ち国際山岳医である大城和恵先生の強い勧めで、狂犬病のワクチンを打ってきた。狂犬病は犬のワクチン投与と徹底した野犬駆除により近年、症例が少ないが、ネパールなどの発展途上国ではまだまだ深刻な問題で、致死率が95%にも及ぶため侮れない。
 これだけネパールへの遠征を繰り返してきた、わが三浦隊は今まで一度もワクチンを打っておらず、その現状を知った大城先生はあきれていた。
 狂犬病のリスクが依然として高いネパールでは登山中、山ですれ違うヨダレを垂らしているような犬には近づかない方がいい。狂犬病にかかっている犬の唾液腺にはウィルスが巣を作っていて興奮しやすくかみつきやすい。狂犬病ウィルスは犬の脳にも影響を及ぼし温和な犬も狂犬に変えてしまう。

 こうしたウィルスが宿主の行動を変えてしまうのは何も狂犬病だけではない。
 カタツムリの一種であるオカモノアラガイがレウコクロリディウムという寄生虫に感染すると、その寄生虫はカタツムリの目に移動して大きく膨れ上がる。そして縞模様が出てきて、それが上下にまるで鳥の大好物の餌である芋虫のように振る舞う。カタツムリは普段日陰を好むが、寄生虫.に感染すると日当たりのよい葉っぱの上に出てきて、まるで自らの身を鳥に差し出すようにして鳥に食べられると、その後レウコクロリディウムはお腹で卵を産み、フンとして排出される。それを食べたカタツムリがまた感染するというライフサイクルとなる。
 また身近な例では、風邪を引いたとき、くしゃみが伴う場合が多い。これは風邪の症状であるが、ウィルスが最も拡散しやすい方法でもある。一説ではウィルスが人の反射を利用して広めているという。

 人の腸内には600兆個もの細菌がいるという。この数はヒトの細胞の数60兆個を大きく上回る。そのため腸内環境にも独自の生態系があり、これらが人の情感や体調、行動を大きく左右する。こうなると人と微生物、どっちが主導権を握っているのかわからなくなる。
 しかし、僕たちはこうしたウィルスの特性を知ることにより、拡散を防いだり、未然に重篤にならないように工夫をする。今回も狂犬病の予防注射のおかげで、安心して登山に専念できている。

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