ナイちゃんの華麗《カレー》なる人生の記録 第9話
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「そう。これが伊丹《いたみ》奈衣《ない》の開発した伝説の爆弾カレーもといボムカレーの誕生秘話でした」
ナイちゃんは、あのとき、確かに生き返った。
わたしは「会場」でボムカレーの誕生秘話を語り終えた……もちろんマイクを持って話したんだ。
そして、わたしは爆発から再建した「伊丹さんちのカレー屋さん」本店の店長をやっている。
「会場」での出来事はテレビで特集を組まれ放送された。
『世界中のカレー好きな皆様、初めまして、わたしの名前は伊丹《いたみ》亜留《ある》。
今から、わたしの双子の姉である伊丹《いたみ》奈衣《ない》の華麗《カレー》なる人生の記録を公表します。
そして、伝説の「あのカレー」ができた理由についても、公表します』
ナレーターが言う。
『「伊丹さんちのカレー屋さん」の「あのカレー」ができた理由とは?』
わたしはテレビでナイの生き様を話す。
『これがわたしの姉の人生でした』
「会場」での出来事は特別だった。
わたしたちが歩んできた人生の中で、とてもとても大切な日だった。
わたしたちの存在が認められた、そんな日。
だからこそ刻んでやったのだ。
『そう。これが伊丹《いたみ》奈衣《ない》が開発した伝説の爆弾カレーもといボムカレーの誕生秘話でした』
心の中を吐き出すように。
『ナイちゃんは、いつも一人でした。いつも一人で十七年の人生を謳歌しました。誰と仲良くなることもなく』
心の中の憎しみを吐き出していく。
『おまえたちのせいだ。おまえたちはいつもナイちゃんをいじめていた。なにもかも、おまえたちのせいだ』
テレビに映るわたしの顔には怒りが見えた。
『おまえたちのせいでナイちゃんは狂ってしまった。十年間わたしの分までいじめられて壊れてしまった。自身が華麗神《カレーしん》の生まれ変わりであるなんて虚言を吐くまでに変化してしまった。ナイちゃんは神様じゃない。ちゃんと人間だったんだよ。痛みがないからとかじゃない。ナイちゃんは痛がっていたんだ。十七年間の人生の中で言葉にならない悲鳴を上げていたんだ。なのに、おまえたちは……ナイちゃんを認めなかった。ボムカレーをつくるまで、ずっと』
みんなだけじゃない。わたしは否定する。自分自身を。
『でも、わたしだって悪い。わたしはナイちゃんを守れなかった。臆病だった。自分がかわいかった。だからなにもできなかった。見ていることしかできなかった。わたしは仲間はずれにされるのが怖かった。みんなと仲良くなりたかった。そんなだからナイちゃんを殺してしまった。世界から消してしまった。こんなこと、望んでなかったのに』
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