キミが存在しないラブコメ 第67話

「つまり、夜の時間が長くなればなるほど、太陽が地球を飲み込むという心配はなくなるわけだ」

「そういうことになるね」

「でも、ヴィジョンは、どうして《影》に人間を襲わせるんだ?」

「《影》は人間の体内に存在する魂のエネルギーを利用して、その魂のエネルギーを夜に変換する能力を持つ。要は人間を電池にして太陽に飲み込まれる時間を延ばすということになる」

「それがヴィジョンの目的なわけだ」

「太陽の光は確かに恵みをもたらすであろう。しかし、終末へ向かうと太陽は地球を飲み込み、やがて太陽系は消滅してしまうのだ。すべては地球という世界の存続のためだ。多少の犠牲は仕方がないと思ってくれ」

「これでヴィジョンの目的は、はっきりしたな」

それで……だ。

「《機関》のみんなは僕が名も無き太陽神の転生した存在であることを知っていたんだな」

「……それは」

萌瑠が言葉を出そうとするが。

「本当は神憑武尊という存在は、この世界から追放されなければいけない存在だったのです。伝播大学附属病院によって閉鎖空間に入れられたときから、もうキミの運命は決まっていたのだから」

椎菜さんが口を挟んだ。

「閉鎖空間で太陽を引き寄せる存在だったからこそ、閉じ込めたということか。まるでアマテラスの天岩戸伝説の逆のことをやっているということか」

「もう、人間は神に近い存在になったのですよ。夜の時間で《影》を能力で倒すことができるようになり、夜の時間に対応できるようになった」

「でも、僕に薬を飲ませたり、飲ませなかったりしたのは、なにか理由があるのか?」

それに対しては萌瑠が言ってくれた。

「太陽が必要なときと、太陽が必要のないときの、バランスを取るためですよ」

「バランス?」

「人間は元来、太陽の光が必要な生き物なのです。そのために薬の飲まないという選択を取らせることで神憑先輩の脳に仕込まれたリミッターを解除する必要があったのです」

「もう、よく、わかんないよ……」

結局、キミたちは……。

「なにがしたいんだよ!」

『――!』

「もういいよ! とにかく僕は人間を超えた存在だったってことだろ!? だったら、もう、やることは決まってるんだよ!」

「なにを、するんですか?」

御琴が僕に質問するが。

「この世界を救うってことだよ! 今から《習合》能力を最大出力にする! これで、すべてが終わる! 人間も《影》も、もともと、生き残るすべが欲しかっただけなんだ! だから、僕がやることは、ひとつだ……」

これが、たったひとつの希望になればいい……!

「すべての生物を僕が吸収する! そして、新たなる世界を創り上げるんだ!」

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