超常異能の改変作家 第11話

  *

 ――まず、僕と生萌《イクモ》に、なにが起きたのか?

 それについて説明しなければならないだろう。

 生萌《イクモ》の異能は間違いなく「成長」だった。

「成長」は「成長させたい異能者の秘められた概念を活性化させ、それを補助する能力」だ。

 それにより、僕の「物語」の能力の一部である「破壊」が活性化され、架空巨大狼《カクージャイアントウルフ》の全細胞を結晶化させ、文字通り「破壊」したのであった。

 どうやら僕の「破壊」という概念は「破壊する物体に触れることで、その物体のデータ(と、あえて表現するが……)を読み取って、ダイヤモンドのような結晶に変化させることでバラバラに砕け散る能力」らしい。

 それが今回の模擬戦で、できてしまった、ということだ。

 僕の異能は、とんでもなく恐ろしいものなのかもしれない。

 使い方を間違えると、人道に反しそうだ。

 そうならないためにも、ちゃんとした使い方をしないとな。

 でないと、取り返しのつかないことになるだろう。

 これが今回の異能の開花で、わかったことだ――。

  *

 ――で、だ。

 僕たちが異能を使ったあと、どうなったかというと……――。

「――これにて模擬戦を終了しますっ! 入学生のキミたち、お疲れさまでしたっ! まずは、しっかりと休息を取ってもらいたいところです……ああ、そうそう――ひとつ言っておかなければいけないことがありますわ。わたくし、ハーティ・ハート・ハーティアは宣言しますっ! キミたちを騙していて、本当に申し訳なかった……と」

 ガヤガヤと入学生たちがハーティアの女王に対して、いろんな思惑を向ける。

「今回の模擬戦に勝利しなければ、キミたちの世界は消滅するという脅し文句を使ったわたくしですが、あれはウソですっ! ごめんなさいっっ!!」

「え?」「は?」というような声が聞こえる。

「あれはキミたちの異能を開花させるために必要なことだったのです。だからキミたちを試しました。『世界が消滅する』というのは、キミたちを焚き付けるために必要でした。だから、あの場で異能にめざめれば、これからの邪悪獣《ジャークビースト》との戦いで苦労することはないと思うのです。なので、あの模擬戦に勝利できなかったキミたち、大丈夫だよ。わたくしたちが一緒に手取り足取り異能の開花を助けますから。ゆえに本当にゴメンねっ! てへぺろっっ!!」

『なんじゃそりゃぁぁぁぁぁっっっっっっ!!!!』

 ……と、あの模擬戦に負けたであろう入学生たちが叫ぶ。

 いや、ほんとになんじゃそりゃぁぁぁぁぁっっっっっっ!!!! ……だよ。

「ですがね、ちゃんと考えていたからのことですよ。今回の模擬戦データをもとにキミたちの所属するクラスを決めていきます。キミたちのレベルに合わせたクラスになるので、お楽しみに。ではでは、模擬戦を含んだ入学式を終了しますっ! お疲れさまでしたっっ! ……――」

  *

「――はあ、まさか、そんなことになっていたなんて、ねえ……」

 初芽《ハツメ》は「ハーティアでの羅円《ラエン》家」で複雑そうな顔を見せた。

 ハーティアでは日本人の転移・転生者が多いため、日本式の住宅がいくつも建てられている。

 気絶していた麻音《アサネ》姉ちゃん、初芽《ハツメ》、生萌《イクモ》の三人は模擬戦後のあらましを今、この羅円《ラエン》家で聞いているところだった。

 なぜ僕が気絶していないのかというと、どうやら四人の中で一番「異能をコントロールできていた」からだろう。

 三人は異能を、まだ使いこなせていない……というか、精神の力を使って混乱させたり、回復させたり、成長させたりをしているわけだから、気絶するのは無理がない。

 対して僕は、その気になれば破壊する対象を増やすことができた。

 足に触れている地面を使えば、その地面から伝わるデータをもとに「全破壊」が可能になると思うのだ。

 あくまで推論でしかないが、そうなると大きい狼にのみ対象を絞っているだけでは、おそらくエネルギー消費は、そんなに多くない。

 明日、クラス分けがされるから、そのときに「どこまでの相手を破壊できる異能」であるかを「異能学院《いのうがくいん》」の審査員たちが調べているだろうが――。

「――そんなことより今夜はすき焼きよ~!」

「わぁいすき焼き! 生萌《イクモ》すき焼き大好き!」

「オイオイオイ……まあ、いいか。僕もすき焼き大好きだし」

「そうそう、タイくんも初芽《ハツメ》ちゃんも難しいことは考えないっ! どうせ明日には、すべてを知るわけだしね。あ、そうだ――」

 麻音《アサネ》姉ちゃんは、なにかを思うように。

「――今夜はすき焼きだけど、新しい環境で新しい出会いもあることであろう二人だけど、あまりにも好きすぎて、やきもち焼《妬》いて嫉妬しないようにね。でも、わたしは信じているからね……二人のこれからを。だから今夜は『すき焼き』にしたんだよね。プロポーズは済んだことだし、とりあえず今夜……一発いっとく?」

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