少女マンガみたいな恋をしよう(短編小説)

彼は少し照れたように笑うと、そっと私の腰に手を回し、優しく抱き寄せてくれた。
そして、そのまま唇を重ねる。
「んっ……」
「ちゅっ……ふふっ、大好きです」
「俺もだよ」
私達は互いに見つめ合うと、もう一度唇を重ねた。
今度はさっきよりも少しだけ長く。
それからしばらくの間、私達は互いの温もりを感じ合っていた。
「ねぇ、今日はずっとこうしてたいな」
「じゃあ、もう1回する?」
「……うん、して」
私は彼の胸に顔を埋めると、甘えるように抱きついた。
すると、彼は私を抱き締め返し、ゆっくりと頭を撫で始める。
それがとても心地よくて、自然と身体の力が抜けていくのを感じた。
「眠くなってきた?」
「うん、ちょっとだけね」
「そっか。じゃあ、このまま寝ちゃってもいいよ」
「でも、せっかくのお休みなのに……」
「大丈夫だよ。俺はどこにも行かないから。だから、安心しておやすみ」
「うん、分かった」
私は頷くと、彼に身を任せるように目を閉じる。
そして、すぐに睡魔がやってきて、そのまま意識を手放した。
「おやすみなさい、沙良さん」
意識が途切れる直前、そんな優しい声が聞こえたような気がした。
それからしばらく経ったある日のこと。
「はい、どうぞ」
「ありがとう」
いつものように彼に淹れてもらったコーヒーを受け取り、一口飲む。
やっぱり美味しいなぁ。
そんな事を考えながら、ふと窓の外を見ると、外では雪が降っていた。
道理で寒いわけだ。
「ねぇ、外は雪降ってるよ」
「えっ、本当? 全然気づかなかった」
彼はそう言うと、窓の方へと歩いていき、カーテンを開ける。
すると、そこには一面の銀世界が広がっていた。
「うわぁ、綺麗だね」
「うん、そうだね」
私の言葉に頷きながら、彼もまた嬉しそうに笑っていた。
「そういえば、今年はホワイトクリスマスだね」
「言われてみれば、確かにそうかも」
去年は確か、クリスマスイブに雪が降ったんだっけ。
そう考えると、今年が一番思い出深いクリスマスになるかもしれない。
そんな事を考えていると、不意に彼が口を開いた。
「そうだ、せっかくだし、これからデートしようか」
「えっ、今から?」
「もちろん。あ、でもその前に……」
彼はそう言うと、私の隣に腰を下ろし、そっと抱き寄せてきた。
突然の事に驚いていると、彼は私の耳元で囁くように言う。
「改めて、メリークリスマス。大好きだよ、沙良さん」
「っ! わ、私も大好き!」
その言葉を聞いた瞬間、胸の奥がキュンとなるのを感じた。
本当にずるいよ……こんな事されたら、ますます好きになっちゃうじゃん。
私は顔を赤くしながら、彼を抱きしめる腕に力を込めた。
それからしばらくして、私達は揃って家を出た。
そして、近くのショッピングモールへと向かう。
「わぁ、すごい人だね」
「本当だね。まぁ、これだけ人が多ければ仕方ないか」
中に入ってみると、そこは多くの人で賑わっていた。
その光景を見て、思わず圧倒されてしまう。
「どうする? 別のところに行ってもいいけど」
「ううん、ここでいいよ。だって、せっかくのクリスマスだもん。それに、今日のために新しい服を買ったんだし、どうせなら着てるところ見てもらいたいなって」
「そっか、それなら良かった」
私がそう答えると、彼は安心したように笑った。
そんな彼を見ていると、なんだかこっちまで嬉しくなってくる。
「ふふっ、どうしたの?」
「いや、なんでもないよ。ただ、かわいいなって思っただけ」
「そ、そうなんだ……」
不意打ちのように放たれた彼の言葉に、思わず顔が熱くなるのを感じた。
きっと赤くなっているであろう顔を隠すため、慌ててマフラーを引き上げる。
うぅ、恥ずかしい……でも、嬉しいかも。
その後も色々なお店を見て回ったり、ゲームセンターで遊んだりして、楽しい時間を過ごしていた。
そうして過ごしているうちに、いつの間にか時間は過ぎていく。
そして、気がつくと空はすっかり暗くなっていた。
「そろそろ帰ろうか」
「うん、そうだね」
私達は最後にツリーの前で写真を撮ってから、家へと帰ったのだった。
「今日は楽しかったね」
夕食を食べ終え、ソファに座ってくつろいでいると、彼が話しかけてきた。
その言葉に頷き、彼にもたれかかるようにして身体を預ける。
すると、彼は優しく頭を撫でてくれた。
それがとても心地よくて、自然と身体の力が抜けていくのを感じる。
「ふぁ〜……」
「眠い?」
「うん、ちょっと疲れちゃったみたい」
「そっか、なら今日はもう寝よっか」
彼はそう言うと、私をお姫様抱っこしてベッドへと向かった。
そして、そっとベッドの上に下ろすと、布団をかけてくれる。
「寒くない?」
「うん、大丈夫」
「よかった。それじゃあ、おやすみ」
「おやすみなさい」
そう言って、目を閉じる。
しかし、いつまで経っても眠気がやってくる気配はない。
どうやら、まだ眠れそうにないみたいだ。
仕方なく目を開けてみると、彼はもうすでに寝息を立てていた。
それを見て、つい笑みがこぼれてしまう。
もう、相変わらず早いんだから。
そんなことを考えていると、ふいに彼の寝顔が目に入った。その瞬間、急に胸がドキドキしてくるのを感じる。
(どうしよう……キスしたい)
そう思った時には、既に身体が動いていた。
ゆっくりと顔を近づけていき、唇を重ね合わせる。
「んっ……」
ほんの一瞬だったけど、それでも十分に幸せな気分になれた。
でも、それと同時に物足りなさも感じてしまう。
もっとしてほしい……そんな思いが込み上げてきて、気づけばもう一度唇を合わせていた。
今度はさっきよりも少しだけ長く。
それからしばらくの間、私は何度も彼にキスをした。
自分でも何をしているのかよく分からなかったけど、やめられなかった。
そして、ようやく満足できた頃には、すっかり息が上がってしまっていた。
「はぁ……はぁ……」
乱れた呼吸を整えながら、彼の顔をじっと見つめてみる。
すると、彼は穏やかな表情で眠っていた。
それを見た途端、一気に冷静さを取り戻す。
(私、何やってるんだろう……)
自分の行動に呆れてしまい、思わずため息が出てしまった。
こんなのただの変態じゃん……しかも、寝てる相手にするなんてさ。
そう考えると、だんだん恥ずかしくなってきた。
「ごめんね……」
小声で謝りつつ、彼の頬にキスをする。
すると、彼はくすぐったそうに身をよじらせた後、再び静かな寝息を立て始めた。
そんな様子を見ていると、また変な気持ちになってしまいそうになる。
「……だめっ」
必死に自分に言い聞かせるようにして呟くと、静かに目を閉じた。
そして、そのまま眠りにつくまで、ずっと彼と触れ合って……。
翌朝、目が覚めると、目の前には彼の顔があった。
「おはよう」
「お、おはよ」
突然のことに驚きながらも挨拶を返す。
「えっと、その……もしかして、見てた?」
「うん、ばっちり」
「っ!?」
やっぱり見られてたんだ……うわぁ、恥ずかしすぎる! 穴があったら入りたい気分だよ……。
そんな事を考えていると、彼が不意に私の頭を撫でてきた。
「えっ?」
「なんかすっごくかわいかったよ」
「そ、そんなこと言わないでよ……」
恥ずかしさのあまり、顔が熱くなるのを感じた。
「ねぇ、もう一回してもいい?」
「う、うん」
私が頷くと、彼はそっと顔を寄せてくる。
そして、唇同士が触れ合う寸前で止まったかと思うと、突然首筋に吸いついてきた。
突然の刺激にビクッと反応してしまう。
「ひゃっ!? ちょ、ちょっと!」
慌てて引き離そうとするが、しっかりと抱き締められていて離れることができない。
その間も首筋へのキスは続いていて、時折舌で舐められたりもしていた。その度に背筋がゾクゾクするような感覚が襲ってくる。
「やっ、あっ……んんっ」
抵抗しようにも身体に力が入らず、されるがままになっていた。
しばらくして満足したのか、彼が顔を上げる。
「ごちそうさまでした」
「……ばか」
満足そうに笑う彼を見ながら、私は小さな声で呟いたのだった。

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