ずっと家族だった姉が義姉だったので、恋人同士になりました。第2話

  *

 夕飯を食べ終えて部屋に戻ると、姉さんが入ってきた。
「弟君、ちょっといいですか?」
「ん? なに?」
 ベッドに腰掛けている僕の隣に座りながら、姉さんは話し始めた。
「改めてですけど、今日はありがとうございました」
「こちらこそ。楽しかったよ」
 そう言うと、姉さんは満面の笑みを浮かべた。
「私もです! 弟君とデートできて嬉しかったです!」
 本当に嬉しそうだ。
 ここまで喜んでくれるとは、僕も嬉しいな。
 すると、急に真面目な顔になったかと思うと、何かを決心したように頷いてから口を開いた。
「それでですね……その……お願いがあるんですけど……」
 もじもじしながらそう言う姉さん。
 一体どうしたんだろう?
「えっと……その……」
 中々切り出さないので、僕は姉さんが話し出すのを待った。
 やがて、意を決したのか、顔を真っ赤にさせながら勢いよく頭を下げた。
「私とお付き合いしてください!!」
 ……え?
 付き合うってあれだよね?
 恋人としてってことだよね?
 でも、どうしていきなり……?
「……ダメですか……?」
 不安そうな目でこちらを見る姉さん。
 それを見て、僕はすぐに返事をした。
「い、いや、そんなことないよ。むしろ、嬉しいくらいだよ」
 そう言うと、姉さんの表情がぱあっと明るくなった。
「ほ、本当ですか!?」
「う、うん」
「やったぁ……!」
 両手を上げて喜ぶ姉さんを見て、思わず笑みがこぼれる。
 そして、姉さんは再び真剣な表情になって言った。
「……それでは、これからよろしくお願いしますね」
「……うん、よろしくね」
 こうして、僕と姉さんは恋人同士になったのだった。

  *

 あれから数日後の夜、自室で勉強をしていると、部屋のドアをノックする音が聞こえた。
 返事をすると、姉さんが入ってきた。
 どうやらお風呂上がりのようだ。
 髪が少し濡れているし、頬が上気している。
「……どうかしたの? 姉さん」
「いえ……その……一緒に寝たいなぁと思いまして……」
「……え?」
 一瞬耳を疑ったが、聞き間違いではないようだ。
「……ダメですか?」
 上目遣いで聞いてくる姉さん。
 その瞳は潤んでおり、今にも泣き出しそうだ。
 そんな顔されたら断れないじゃないか。
「……わかったよ。おいで」
 僕がそう言うと、姉さんは満面の笑みで頷いた。
 そして、そのまま僕のベッドに入ってきた。
 二人分の体重を受けて、ベッドが少し軋む。
「えへへっ♪ 弟君の匂いがする〜」
 幸せそうに呟く姉さん。
 正直言って恥ずかしい。
「……あんまり匂い嗅がないでね」
「嫌です♪」
 即答されてしまった。
 まぁ、別にいいけどさ……それからしばらく沈黙が続いた後、不意に姉さんが口を開いた。
「ねえ、弟君」
「なに?」
「私のこと好きですか?」
 唐突な質問に戸惑いながらも、僕は答えた。
「……好きだよ」
「どのくらい好きですか?」
「……世界で一番好きかな」
 僕が答えると、姉さんは満足そうに微笑んでから抱きついてきた。
 そして、耳元で囁いた。
「私も大好きですよ♡」

  *

 翌朝、目を覚ますと、目の前に姉さんの顔があった。
 すやすやと寝息を立てて眠っている。
 その姿がとても愛らしくて、つい見惚れてしまう。
(本当に可愛いな……)
 そう思いながら見つめていると、姉さんの目がゆっくりと開いた。
「……おはよう……ございます……」
 眠そうに目を擦りながら挨拶をする姉さん。
 まだ完全に目が覚めていないのか、口調が覚束ない。
 そんな姿も可愛くて仕方がないのだが、このままだと二度寝しそうな勢いだったので声をかけることにした。
「おはよう、姉さん」
「……ふぁ〜……おはようございます……」
 欠伸をしながら挨拶を返す姉さん。
 その様子を見ていると、なんだか可笑しく思えてきてしまった。
 すると、突然笑い出した僕を見て不思議そうな表情をする姉さんだったが、次第につられるようにして笑い始めた。
 しばらくの間二人で笑っていたが、ふと時計を見ると結構いい時間になっていたので朝食を食べるために一階へ向かった。

  *

 朝食を食べた後部屋に戻ってくると、姉さんが声をかけてきた。
「今日はどうしますか?」
「んー、特に予定は無いけど……」
 どうしようかと考えていると、机の上に置いてあるチラシが目に入った。
 手に取って見てみるとそこには「遊園地」という文字が大きく書かれていた。
 そういえば最近行ってなかったっけ。
 せっかくだし行ってみるか。
「今日、遊園地に行くのは、どうかな? ちょっと急かもしれないけど……」
「思ったら即行動するところが弟君のいいところです! わかりました! 行きましょう!」
 そう言って微笑む姉さんの姿を見て、僕も自然と笑顔になった。
 そして僕たちは、さっそく遊園地へと向かった。

  *

 電車に揺られること数十分、ようやく目的地に到着した僕たちはさっそく入場ゲートに向かった。
 チケットを購入して中に入ると、まず目に入ったのは大きな観覧車だった。
 その次に見えたのはジェットコースターだ。
 他にも様々なアトラクションが見えるが、まずは何に乗るか決める必要があるだろう。
 そう考えた僕は、パンフレットを取り出して広げた。
 さて、どれにしようか……色々あるな……メリーゴーランド、コーヒーカップ、お化け屋敷など定番の物もあれば、空中ブランコやフリーフォールなどの絶叫系もあるな……うーん……迷うな……ここは無難にコーヒーカップにでもしておこうかな……よし、そうしよう。
「姉さん、まずはコーヒーカップに乗ろうかと思うんだけどいいかな?」
「そうですね! では、最初はそれにしましょうか!」
「了解。それじゃあ行こうか」
 僕たちは早速乗り場に向かった。

  *

 順番が来て乗り込むと、係員さんが扉を閉めた。
 それを確認してから動き出す乗り物。
 徐々にスピードを上げていき、やがて最高潮にたちしたところで大きく揺れだした。
 それと同時に歓声が上がる。
 隣を見ると、楽しそうな表情でハンドルを握る姉さんがいた。
 その姿はまるで子供みたいで……いや実際子供なんだけどさ……とにかく楽しそうだから良しとしよう。
「弟君! 楽しいですね!!」
「そうだね! すごく楽しい!」
 テンションが上がっているせいかいつもより大きな声で話す姉さんだが、周りの人たちも似たようなものだったので目立つことはなかった。
 やがて一周し終わり再び動き出したところで、突然姉さんが言った。
「次はあれに乗りましょう!」
 そう言って指差したのは、この遊園地で一番人気のジェットコースターだった。
 まさか、あれに乗ることになるとは……ちょっと怖いかも……まあでも、ここまで来たら覚悟を決めるしかないか……!
 そう思った僕は力強く頷き返した。
 それを見た姉さんは嬉しそうに笑うと、次の場所を目指して歩き出した。
 僕もそれに続くようにして歩き出すのだった……。

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