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面白い本・好きな本|『こち亀』は現代の浮世絵であり水墨山水画?篇

こちら葛飾区亀有公園前派出所』、通称『こち亀

言うまでもなく、とっても有名な少年漫画で、1976年から2016年までの40年連載されたすごいやつ。そして、唯一所有している大好きな漫画。

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小学校の時に、当時最新刊だった76巻を購入してから、お小遣いで少しづつ買い続け、高校の時に全巻揃う。その後も気づいた時に買い足して、全200巻が本棚に並ぶ。

そんな思い入れのある大好きな「こち亀」が、現代の「浮世絵」であり、「水墨山水画」でもあるのでは?という話。。

浮世絵 と こち亀

浮世絵」とは江戸時代の庶民の普段の生活を描いた絵画で、町人たちに人気のあった人物、流行、芸能、ファッション、ランドマークや行楽地、耳目を集めた天変地異などが描かれている。

有名どころでいうと、葛飾北斎の「富嶽三十六景や歌川広重の「東海道五十三次」などなど。

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浮世絵」の特徴は大きく3つ。

①大衆、庶民のための娯楽
②「時代の今」を素早く取り入れている
③精緻な描き込みによる史料的価値がある

で、ライターの稲田氏曰く、『こち亀』は、この3点を完全に満たしている、と。

こち亀』は警察官を主人公としながら、ホビーやサブカルの啓蒙書であり、ブームやトレンドを紹介する情報誌であり、社会や経済やビジネスの仕組みを子供にもわかるよう噛み砕いて説明する解説本であり、あらゆる知識の教養書であり、雑学書であり、下町文化の広報メディアであり、下町人情物語であり、東京の都市論でもある。

そして、老若男女すべての人が楽しめる「漫画」である。それも、とても緻密なリサーチと書き込みで、「時代の今」を表現している。

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eスポーツ、オンライン飲み会、ドローン配達、ゲーム課金、電力売電、スーパー銭湯

今聞くと、当たり前の単語も、すべてこの世に存在しない時代に、「こち亀」には描かれている。時代を先取りするほど、リアルに緻密に描かれた漫画「こち亀」。

浮世絵」は、かけそば1杯より安いものからあったと言う。大人から子供まで楽しむことができる存在で、巷の流行を教えてくれるメディアだったと。

これはもう、『こち亀』そのもの。


水墨山水画 と こち亀

水墨山水画」とは、自然の風景を題材として墨で描いた絵画で、自然の風景だけでなく、その中に旅人や山道を歩く樵など、日本の風土のなかで暮らす人を描いている。

有名どころで言うと、狩野芳崖の「冬真山水」や雪舟の「秋冬山水図」などなど。

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「水墨山水画」の特徴は大きく3つ。

①自然の風景だけでなく、その中に小さく人物を描く
②人と自然の関わりを叙情的に表現して物語が生まれる
③鑑賞者は絵の中の人物に乗り移って、風景を旅することができる

で、こち亀の作者秋元氏は、こち亀の『扉絵』について、水墨山水画の特徴とまったく同じことを言っている。

漫画本編に入る前の表紙である『扉絵』を、両さんのいる風景として綴っていこうというふうに意識が変わったんです。
単なる風景写真なら見てキレイとか、それだけでおわってしまうところを、『扉絵』なら漫画ならではのストーリーをいれられることに気づいたのは大きかったですね。

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表紙1ページで一つの物語をつくり、本編でもうひとつの物語をつくる。一度で2度美味しい漫画が生み出せたと。下町の風景の中に両さんがいるだけで、物語が生まれる。4コマ漫画ならぬ1コマ漫画

水墨山水画は1コマ漫画だったのか、という気づき。


『こち亀』社会論/2020

「こち亀」と「浮世絵」の密接な関係を読み解くなら、これ。

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『こち亀』は現代の「浮世絵」だ! 

庶民の金回り、地価変動と田舎ディス、テクノロジー信奉とガジェットの変遷、サブカルチャーの地位と文化系ヒエラルキー、ビジネス・アイデアとハック思考、漫画的表現とポリティカル・コレクトネス

……大衆社会を定点観測し続けた連載40年、全200巻の偉業から昭和~平成日本の歩みを追う。


両さんと歩く下町/2004

「こち亀」と「水墨山水画」の密接な関係を読み解くなら、これ。

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案内はわしにまかせろ!懐かしの下町賛歌&扉絵コレクション

横丁、踏切り、川端、橋、神社…。『こち亀』の愛称で親しまれる週刊少年ジャンプの人気連載『こちら葛飾区亀有公園前 派出所』の扉を飾った、普段着の下町風景。葛飾区亀有で生まれ育ち、昭和30年代からの下町の変遷を見つづけてきた作者が、『こち亀』の舞台となった街を再訪し、その地への思いと取っておきの話を綴っていく。

作者自選のペン画集にして極私的下町ガイド、そしてメイキング・オブ『こち亀』の三つの顔を持った画期的新書。山田洋次監督との初対談「葛飾に愛をこめて」を特別収録。




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