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クリエイターと価値観の関係性と重要性

こんにちは、漫画家/イラストレーターのタソです。
フリーランスとして絵でお仕事をいただくようになって、まる4年が経ちました。

そんな絵に向き合い続ける4年間の中で、気付いたことがあります。

それは、クリエイターにとって価値観が非常に重要であるということ。
クリエイティブという存在は、親や身の回りにいる人の価値観と同じように人の価値観に影響を及ぼし、クリエイターの価値観によって、世の中が左右されるのではないかということです。

性別による色の価値観

例えばどんな価値観かというと、性別による色の価値観です。

私は今30代後半なのですが、私と同世代以上の方は「服は女の子がピンク、男の子は青」「ランドセルは女の子が赤やピンク、男の子は黒」といった価値観に多く触れてきたのではないでしょうか。
また、そこから逸れたものを好んでいると、「女の子なのに、男の子なのに」と言われてきた世代だと思います。

私自身、周囲の価値観はもちろん、CMやポスター、イラストや漫画など、そういった価値観を表現したクリエイティブを見て育ってきているので、疑問に感じず「そういうもの」と思って育ってきました。

でも、今の時代は違います。
女の子が青のお洋服やランドセル、男の子がピンクのお洋服やランドセルを身に着けていても、「そういう時代になったよね」と捉えられるようになってきました。
それは、お洋服やランドセルのデザインを考えているクリエイターさんが、様々なカラーのランドセルを作り出したからではないでしょうか。
また、それらを売り出す広告でも、男の子がピンクのランドセルを背負っていたり…といった、性別による固定色といった表現が意識的に排除されているからではないでしょうか。

アニメなどによる価値観の変化

ここ数年、世の中の価値観をクリエイティブで変えようとしているんだなと感じたことがいくつかあります。
それは、アニメのプリキュアや、戦隊モノのドンブラザーズです。

プリキュアは女の子をメインターゲットにして作られている作品で、女の子たちが悪と戦うアニメです。
こういった作品に出てくる男の子は、セーラームーンでいうタキシード仮面的なポジション…つまり、女の子と恋愛関係になったり、女の子が困った時に助けに現れるヒーロー的なポジションだったりして、男の子はプリキュアにはなれませんでした。

でも、最近のプリキュアでは、男の子のプリキュアが出てきました。
女の子のプリキュアたちと同じ様に、可愛くてヒラヒラした衣装を身にまとった男の子が描かれたんです。

ドンブラザーズでは、男の子のピンクが出てきました。
今まで戦隊モノのピンクといえば中身は女の子であることが当たり前でしたが、男の子がピンクカラーで描かれました。

女の子だから、男の子だからといった別け隔てなく、自分の「好き」という感情を大事にして平等に楽しめる。
このプリキュアやドンブラザーズを見ている子どもたちには、女の子だからピンク、男の子だから青という価値観はもう無いのではないでしょうか。
また、子どもたちと一緒に見ている親世代も、こういう時代になったんだという風に感じていると思います。

まだ価値観が変わってないクリエイティブ

プリキュアやドンブラザーズのように新しい価値観で表現されているクリエイティブもあれば、まだまだ価値観が変わってないクリエイティブもあります。

その代表格は育児に関するクリエイティブだと思っています。
皆さんも一度は目にしたことがあるはず、「ママが育児をしているシーン」が圧倒的に多いです。
SNSは個人の発信なのでそういった内容が多いことは頷けるのですが、例えば自治体から配られるような育児本であっても、ママが育児をしているシーンばかりです。

でも今は共働き世帯が増え、ママが育児の大半を担うという生活は、正直時代に合っていません。
女性が社会進出する時代なら、もちろん男性は家庭進出する時代です。

もちろん、育児も仕事もとたくさんのものを抱えているママの中でも、全体的に育児を担いたい人もいるでしょう。
でも、そんな抱えすぎているママ側の私からすると、パートナー同士助け合い、男性も女性と同じ目線で育児をしていく時代を求めていますし、周囲には同じ様に考えているママばかりです。
でも、世の中のクリエイティブでは、まだまだママが赤ちゃんを抱っこしています。

もちろんそれもひとつの表現です。
パパも主体となって育児をしている家庭もあるとはいえ、実際にはママ主体で育児をしているご家庭が多いのは事実なので、そういうクリエイティブがあるのは当然です。
でも、そんなママが赤ちゃんを抱っこしているクリエイティブばかりが世の中に溢れているというのは、それを見たママやパパ、これからママやパパになるであろう人たちは、一体どう感じるのでしょうか。
自然と、ママが主体となって育児をしなければならない、ママ主体で育児するのは当たり前と感じてしまうのではないでしょうか。

世の中に、パパが赤ちゃんを抱っこしているクリエイティブがもっと増えたら…。
ママとパパが二人で協力している様子や、パパだけが育児している様子が描かれたクリエイティブがもっと世の中に広まっていれば、「育児はママだけがするものではないんだな」という価値観が、もっと多くの人に広まると思うんです。

イラストレーターとしてできること

では私はイラストレーターや漫画家として、一体どんなことができるのか。
それは、「こういう世の中になっていてほしいな」という「ちょっとだけ先の未来」を描くことなのではないかと思っています。

これが先すぎる未来だと、見る側にとってピンと来ず、SFになってしまいます。
なので「ちょっとだけ先の未来」というところが、大事なポイントだと思います。

性別によって身にまとう色にとらわれない世界。
女性も男性も同じ目線で家事育児をする世界。

このような、ちょっとだけ先の未来にこうなってくれていたらいいな、これが当たり前になっていたらいいなと思う世界を、クリエイティブで表現することが、今の私にできることだと思っています。

クリエイターは、世相を創る。

価値観のアップデートを怠らず、表現していきたいです。

さて、今回は価値観のお話でしたが、この「こういう世の中であってほしい表現」と「見た人がわかりやすかったり、違和感なく共感できる表現」というのは、また別のお話。
オリジナル作品を生み出すと同時に、商業クリエイターである私にとって、切っても切り離せない関係です。
またの機会に、そういったお話もできればと思います。


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タソのHP:https://taso-id.com/


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