三森ゆら

すこしふしぎの世界が好き。 マイペースに動いていきます。ゆるゆると話を紡いでいけたらな…

三森ゆら

すこしふしぎの世界が好き。 マイペースに動いていきます。ゆるゆると話を紡いでいけたらな、と思います。 スキやフォローなどしていただけたら喜びます。 繰り返し見直しておりますが、誤字脱字が見抜けないふぬけです。

マガジン

  • ショートショートのおけいこ

    ショートショートのお題を出してくださっている方の企画に参加させてもらったものたち。 #毎週ショートショートnote

  • 正直

記事一覧

計画通り(顔自動販売機・毎週ショートショートnote)

 顔の自動販売機で、自分好みの顔が簡単に取り付けられる様子になった今、世の中は同じような顔で溢れている。  目玉が飛び出しそうな程切り開かれた大きな目。その瞳は…

三森ゆら
1年前
10

エール(心お弁当・毎週ショートショートnote)

「心お弁当」  そう言って毎朝、私にお弁当を手渡してくれるのは母。 「心お茶入れたよ」  そう言って毎朝、私の分の緑茶を淹れてくれるのは父。 「心今日は寒いって」 …

三森ゆら
1年前
14

小島さん(伝説の安心感・毎週ショートショートnote)

 この春から研修医として働き始めた僕は、不幸にも最初のローテーションで救急科に配属された。  役立たずという言葉が身に染みる毎日。悔しくて泣く事も出来ない位、な…

三森ゆら
1年前
10

ワレワレハ(グリム童話ATM・毎週ショートショートnote)

 不思議な機械を置く店がある。  真っ暗で、小さな店の壁の隅に置かれた機械にだけ、弱々しいスポットライト。機械に会員カードを置くと、世界が変わる。店内がグリム童…

三森ゆら
1年前
9

メガネの弟(メガネ冠婚葬祭・毎週ショートショートnote)

 姉の中の俺は、もう既に十回は死に、十五回は結婚した。それにまつわる危篤やお通夜、告別式は三十回以上を超え、結婚相手との家族顔合わせ、結婚式はもう五十回近いので…

三森ゆら
1年前
14

赤いキャップの彼(はじめて買ったCD)

唐突ですが、わたしには小学生の息子がいます。 アホ全開の息子。 だけど当然、年を重ねるたびに 心も身体も大きくなっている。 わたしも気を引き締めなくては。 最近そう…

三森ゆら
1年前
7

オノマトペピアノ (オノマトペピアノ ・ 毎週ショートショートnote)

 先生に叩かれた手の甲が痛む。溢れた涙も拭かせて貰えず、冷たく『もう一回』そう言われる。  この教室に通い始めてから、ピアノが楽しくない。前の教室の先生は、にこ…

三森ゆら
1年前
18

海の中の孤独( 星屑ドライブ・毎週ショートショートnote)

 わたしの隣を流れるものは、赤色に発光している。 「ああ、もうあなたに追いつけない。あの青く光る場所に、一緒に辿り着きたかったのに」  確かに振り返らなければ、も…

三森ゆら
1年前
17

ポイントガード( だんだん高くなるドライブ・毎週ショートショートnote)

 彼の手にボールが渡ると、『また何かやってくれるかもしれない』『まだ諦めるには早い』という気持ちが湧いてくる。チームメイトも応援する者も、彼に期待した。  彼は…

三森ゆら
1年前
11

春の光 (外道一組・毎週ショートショート)

 寒くて動けない。土の中でただじっとしていることしかできない、長い冬が終わった。陽の暖かさは地面に伝わり、春の訪れを知る。  自由に動かせる体。仲間たちと、声高…

三森ゆら
1年前
10

quill 1

   邂逅  あの薄い鼻筋が際立つ横顔を、飽かず眺めていた時間があった。  その視線はいつも窓の外、遥か遠くに投げられていた。瞬きのためにゆっくりと下ろされるま…

三森ゆら
1年前
3

あの曲 (ヘルプ商店街・毎週ショートショートnote)

 その商店街ではひっきりなしに、とある曲が流れている。エンドレスリピートされるその曲は、あの有名なイギリスの四人組バンドの曲、『Help!』だ。  アイニードサ…

三森ゆら
1年前
14

難解です (ビジュアル系男子に教えられた琴・毎週ショートショートnote)

 顔に降りかかる赤色の長い髪をしょっちゅう触っている。どこかにひっかかったり、お互いが絡まったりしそうなピアスを耳たぶじゅうにくっつけて、細身のパンツを履きこな…

三森ゆら
1年前
9

メガネ (草食系男子が教えてくれたこと・毎週ショートショートnote)

 絶対にかわいいって言われたいから。今日もしっかりメイクをしている。左目だけ少し小さいのが気になるから、左のアイラインはより太く。  汗をかいてもいい匂いって言…

三森ゆら
1年前
12

夢のようなはなし

 どこでも住めるとしたら、と問われたら、夢のような話をしたい。実現可能な範囲だけでの話だけでなく、未来からきたネコ型ロボットを召喚しないと叶えられないような話が…

三森ゆら
1年前
6

いつか王子様が (名探偵ボディビルディング・毎週ショートショートnote)

 私は美貌を持て余している、と思う。ひっきりなしに声をかけられるけれど、満足させてくれる人はあまり居ないから。  なぜなら私の理想は高い。筋骨隆々の人が好きだ。…

三森ゆら
1年前
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計画通り(顔自動販売機・毎週ショートショートnote)

計画通り(顔自動販売機・毎週ショートショートnote)

 顔の自動販売機で、自分好みの顔が簡単に取り付けられる様子になった今、世の中は同じような顔で溢れている。
 目玉が飛び出しそうな程切り開かれた大きな目。その瞳はその開かれた面積を埋めるほどに大きい。黒目がちを超えている。
 細く高い稜線の鼻筋に、つんと尖った鼻尖や鼻翼。
 ハンバーガーにもかぶりつけない小さな顎と、感情とは関係なく引き上がった口角。
 そんな顔しか存在しない。大きな目、高い鼻、小さ

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エール(心お弁当・毎週ショートショートnote)

エール(心お弁当・毎週ショートショートnote)

「心お弁当」
 そう言って毎朝、私にお弁当を手渡してくれるのは母。
「心お茶入れたよ」
 そう言って毎朝、私の分の緑茶を淹れてくれるのは父。
「心今日は寒いって」
 そう言って毎朝、私に天気予報を教えてくれるのは兄。
「心おはよう」
 多分そう言って毎朝、私の足にじゃれてくるのは犬。
 それが毎朝のきまり。私の毎日の始まり。家族と始まる、私の朝。
 はずだった。
 今日からはそれががらりと変わって

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小島さん(伝説の安心感・毎週ショートショートnote)

小島さん(伝説の安心感・毎週ショートショートnote)

 この春から研修医として働き始めた僕は、不幸にも最初のローテーションで救急科に配属された。
 役立たずという言葉が身に染みる毎日。悔しくて泣く事も出来ない位、なにも成せない。
 それでも夜勤は来る。勤務者が減る分、一人にかかる業務と責任が増える。不安と重圧に押し潰されそうだ。
 そんな僕の心情を察して、ベテランの救命医が声をかけてくれた。
「大丈夫だよ。今日は忙しくならない。なんてったってスタッフ

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ワレワレハ(グリム童話ATM・毎週ショートショートnote)

ワレワレハ(グリム童話ATM・毎週ショートショートnote)

 不思議な機械を置く店がある。
 真っ暗で、小さな店の壁の隅に置かれた機械にだけ、弱々しいスポットライト。機械に会員カードを置くと、世界が変わる。店内がグリム童話の一場面に変化する。異世界に引き込まれる。そこで童話の一場面を体験できるのだ。
 難点は、好きな話を選べないことだ。ガラスケースに眠る、透き通る美しさの白雪姫を見られる事もあれば、湧き出たお粥まみれになった事もある。ラプンツェルの枝毛を切

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メガネの弟(メガネ冠婚葬祭・毎週ショートショートnote)

メガネの弟(メガネ冠婚葬祭・毎週ショートショートnote)

 姉の中の俺は、もう既に十回は死に、十五回は結婚した。それにまつわる危篤やお通夜、告別式は三十回以上を超え、結婚相手との家族顔合わせ、結婚式はもう五十回近いのではないか。
「まだ相手すらいないのに……。何度結婚して、何度死ねばいいんだ」
『その日は弟の結婚式だから』と、どこかの誰かとの約束を断って、姉は電話を切った。
「縁起のいい方の回数を多くしてやってんだから、感謝しなさいよ」
 細かな作業は何

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赤いキャップの彼(はじめて買ったCD)

赤いキャップの彼(はじめて買ったCD)

唐突ですが、わたしには小学生の息子がいます。
アホ全開の息子。
だけど当然、年を重ねるたびに
心も身体も大きくなっている。
わたしも気を引き締めなくては。
最近そう思うことがしばしばある。
なぜならば、
わたしの趣味や好みが芽吹き始めたのは
小学校の中学年くらいだから。

わたしが小学三、四年生の頃、
その人は突然わたしの前に現れた。
軽快な音楽にのせて手を叩き、
赤いキャップを被り、赤い服と短パ

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オノマトペピアノ (オノマトペピアノ ・ 毎週ショートショートnote)

オノマトペピアノ (オノマトペピアノ ・ 毎週ショートショートnote)

 先生に叩かれた手の甲が痛む。溢れた涙も拭かせて貰えず、冷たく『もう一回』そう言われる。
 この教室に通い始めてから、ピアノが楽しくない。前の教室の先生は、にこにこして、私のピアノを聞いてくれたのに。
 睨め付ける視線には逆らえず、私は鍵盤に手を乗せる。水が跳ねるみたいな楽しい曲。けれど練習をするほど怒られて、苦しいだけの曲。
 バンと大きな音がして、ドアが開いた。母だ。
「もうここに通うのは辞め

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海の中の孤独( 星屑ドライブ・毎週ショートショートnote)

海の中の孤独( 星屑ドライブ・毎週ショートショートnote)

 わたしの隣を流れるものは、赤色に発光している。
「ああ、もうあなたに追いつけない。あの青く光る場所に、一緒に辿り着きたかったのに」
 確かに振り返らなければ、もうその姿が見えない。
「あなたが一番最初に光った色が、とても綺麗だったから、あそこに着地したかった……」
 そう言い終えると、永らく隣にいたものは、黒い煙となり消えた。
 わたしはひとり、猛スピードで青色の地を目指す。

 この星の大気圏

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ポイントガード( だんだん高くなるドライブ・毎週ショートショートnote)

ポイントガード( だんだん高くなるドライブ・毎週ショートショートnote)

 彼の手にボールが渡ると、『また何かやってくれるかもしれない』『まだ諦めるには早い』という気持ちが湧いてくる。チームメイトも応援する者も、彼に期待した。
 彼は実際、敵陣に切り込んで、チャンスをたくさんつくったし、自らシュートを決めてきた。彼のドライブが、数々の勝利を運んできた。
 
 決勝戦、残り時間はあと2分。点差は9点。彼の手にボールが渡る。フル出場の彼。疲労は明らかで、腰もドリブルの位置も

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春の光 (外道一組・毎週ショートショート)

春の光 (外道一組・毎週ショートショート)

 寒くて動けない。土の中でただじっとしていることしかできない、長い冬が終わった。陽の暖かさは地面に伝わり、春の訪れを知る。
 自由に動かせる体。仲間たちと、声高らかに歌い、地上を目指す。
 色とりどりの花の蜜を食べよう。小さな虫たちをみんなで協力して捕まえよう。希望のつまった話をしながら、上へ上へと掘り進める。
 最後の土の塊を押し出して、いよいよ陽の光が巣穴に差し込む。やあやあ!ハロー!新しい世

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quill   1

quill 1

   邂逅

 あの薄い鼻筋が際立つ横顔を、飽かず眺めていた時間があった。
 その視線はいつも窓の外、遥か遠くに投げられていた。瞬きのためにゆっくりと下ろされるまぶたがまつ毛を揺らすのさえ、目に焼き付けていた。

 その横顔は、今もまた遥か彼方へ視線を巡らせている。雑居ビルの外付けの階段を登る足を止めて、虚空へ睨みをきかせているように見えた。
 また歩を進めようと、少し前屈みになった背中を見とめて

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あの曲 (ヘルプ商店街・毎週ショートショートnote)

あの曲 (ヘルプ商店街・毎週ショートショートnote)

 その商店街ではひっきりなしに、とある曲が流れている。エンドレスリピートされるその曲は、あの有名なイギリスの四人組バンドの曲、『Help!』だ。
 アイニードサムバディー、ノットジャストエニバディー、そのあたりまでは買い物客みんなが歌える。
 アーケードをくぐった瞬間から、そこそこのボリュームで流れるその歌で、みんな頭がいっぱいになる。買うべきものを忘れたり、妙に忙しない気持ちになる者がちらほら。

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難解です (ビジュアル系男子に教えられた琴・毎週ショートショートnote)

難解です (ビジュアル系男子に教えられた琴・毎週ショートショートnote)

 顔に降りかかる赤色の長い髪をしょっちゅう触っている。どこかにひっかかったり、お互いが絡まったりしそうなピアスを耳たぶじゅうにくっつけて、細身のパンツを履きこなしている。
 いつの間にか、いとこの兄はそういう装いをするようになった。別にそれはいい。服装は自由だ。僕は気にしない。でも弟がいとこを見てかっこいいと言う。それはなぜか心配だった。
 だから質問するんだ。一番心配な事を。
「どうしてそんなに

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メガネ (草食系男子が教えてくれたこと・毎週ショートショートnote)

メガネ (草食系男子が教えてくれたこと・毎週ショートショートnote)

 絶対にかわいいって言われたいから。今日もしっかりメイクをしている。左目だけ少し小さいのが気になるから、左のアイラインはより太く。
 汗をかいてもいい匂いって言われたいから。こまめに香水をつけ直す。多くの愛され女子とやらがつけている人気の香水。高いから、ほんの少しずつ。
 セクシーだねって言われたいから。制服のワイシャツのボタンは、胸の谷間が見え隠れするくらいに開けておく。チラリズムってのがいいん

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夢のようなはなし

夢のようなはなし

 どこでも住めるとしたら、と問われたら、夢のような話をしたい。実現可能な範囲だけでの話だけでなく、未来からきたネコ型ロボットを召喚しないと叶えられないような話がしたい。

 だって、どこにだって住んでみたい。

 青い海の真ん中で、ジャンプするイルカを見ながらランチ。富士山頂と肩を並べて、初日の出を眺め餅を焼く。グランドキャニオンの谷の底で、ひとりぼっちを感じたい。砂漠の真ん中で、おうちプール。オ

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いつか王子様が (名探偵ボディビルディング・毎週ショートショートnote)

いつか王子様が (名探偵ボディビルディング・毎週ショートショートnote)

 私は美貌を持て余している、と思う。ひっきりなしに声をかけられるけれど、満足させてくれる人はあまり居ないから。
 なぜなら私の理想は高い。筋骨隆々の人が好きだ。筋肉は多ければ多い方がいい。ボディビルダーの方は、本当に好みだ。
 胸に飛び込んで、筋肉に弾かれたい。筋肉がつくる溝に、指先をかけて眠りたい。はち切れたシャツのボタンを付け直したい。ブーメランパンツを洗濯してあげたい。こんなにも甘く夢見てい

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