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「よりよい体験」となる企画やイベントを目指すために... - 体験者目線での声を集めながら作るということ -


はじめに


この記事は、Cluster Creator #1 Advent Calendar 2023 への投稿記事です。

今年もAdvent Calendarは盛況のようで、#2 も開催されています
また例年通り、ユーザー企画による非公式アドカレも開催されています。
公式・非公式いずれも、多種多様な情報に溢れているので、タイトル一覧を流し見してみるだけでも面白いかもしれません。


ここまでの文面は昨年書いた記事からそのままコピペしました。
全く同じ説明ができる!という変わらないことへの安心感を覚えつつ、リンク先のURLを更新するために記事一覧や並んでいるユーザーの名前を昨年度のものと見比べると、一年間色々あったなと思いました。

変わらない中で移りゆく毎日。そんな一年間をたくさんの方と過ごせているのは素敵なことなんだろうなぁ、としみじみ思いました。

ということで、記事に入ります。

 

0. これは何の記事?

主に cluster のユーザーの方向けに、イベントや企画を作っていくうえで
① 体験者目線での声をあつめて
② それを運営や開発メンバーと共有しながら作っていくこと

はすごく大事だよ、ということを実例と共に紹介できたらなと思って書いています。

これはAIが描いた 「ユーザー体験をより良くするために」 というタイトルのイラスト

 
長いです。

以下に目次をつけますので、よければ気になるパートだけ読んでください。


 

1. このところ「体験」っていう言葉がより一層、広く浸透してきた気がする

「UX: User Experience」が大事だよ~。
ものやサービスを売るのではなく、体験を提供せよ~!
というようなことは、もう長らく言われていることかなと思いますが、
ふと思い立って Google Trends  を使って、「UX」という単語を見てみました。

いくつかのカテゴリで見てみましたが、特に「ビジネス・産業」では現在もまだまだ右肩上がりで伸び続けている様子でした。
(さすがに「体験」は汎用単語過ぎるのか、目立った特徴みられずでした。)

2023.12.06.しらべ。

そうした背景の影響があるのかないのか、
商品やデジタルプロダクト、それを取り扱うサービス、あらゆるコンテンツについて
「やってみた」「楽しかった!」「いい時間を過ごせた!」
ということを表現する文脈で
「体験した」「いい体験だった」「体験がよかった」
のように、意識的に"体験"という言葉を選んで発信している人が、SNSなどをはじめかなり増えてきたな・・・と、特にこの1~2年感じています。

(事実はどうか分かりません。たまたま僕がそういうコミュニティに属しているとか、僕自身の感度が上がっただけかもしれないです。)

これはAIが描いた 「いい体験をした!」 というタイトルのイラスト

 
 

さて、実は User Experience について、国際的に定義しているような ISO 規格もあります。

3.15 user experience
user’s perceptions and responses that result from the use and/or anticipated use of a system, product or service

ISO 9241-210:2019(en)

https://www.iso.org/obp/ui/#iso:std:iso:9241:-210:ed-2:v1:en


また、JIS規格「人間工学- 人とシステムとのインタラクション- インタラクティブシステムの人間中心設計」では翻訳版として

3.15 ユーザエクスペリエンス(user experience)
システム,製品又はサービスの利用前,利用中及び利用後に生じるユーザの知覚及び反応。

注釈 1 ユーザの知覚及び反応は,ユーザの感情,信念,し好,知覚,身体的及び心理的反応,行動並びに達成感を含む。
注釈 2 ユーザエクスペリエンスは,ブランドイメージ,表現,機能,性能,支援機能及びインタラク ションの影響を受ける。また,ユーザの事前の経験,態度,技能,個性によって生じる内的及び身体的な状態,利用状況などの要因の影響を受ける。

(後略)

JIS Z 8530:2021
人間工学- 人とシステムとのインタラクション- インタラクティブシステムの人間中心設計

とあります。
興味のある方はこちらから購入して読んでみるのもいいと思います。

おまけ①:上記JIS規格が、今の版になるまでの経緯について
おまけ②:UXとUIについての関係性の要点をいい感じで簡潔にまとめてくれている深津さんの神記事

 

2. 体験、どうやったらもっとよくなるんだろう?

「ユーザの知覚及び反応」
これをよりよくしていくために何をすればいいのでしょうか?

上述の JIS Z 8530 は、コンピュータを利用したインタラクティブシステムに関するものですが、その中の「5.5 プロセスを繰り返す」の項にて以下のように述べられています。

人とコンピュータとのインタラクションは複雑であり,開発の初期段階において,インタラクションの全てを明らかにすることは不可能である。
(中略)
ユーザのフィードバックを組み込んだ設計解を繰り返し提案することは,リスクの低減につながる。

JIS Z 8530:2021
人間工学- 人とシステムとのインタラクション- インタラクティブシステムの人間中心設計
5.5 プロセスを繰り返す

要は「触ってみるまでわからないので、たくさん触ってもらってフィードバックを貰いましょう」と述べられています。
開発者目線でなく、体験者の目線からのフィードバック収集を繰り返すことが、よりよいものの開発には必要だということです。

 

何かのシステムやウェブ、アプリケーションを作ったことのある方々ならおそらくこの内容に異論はないのではないかと思います。

あるいは cluster をはじめとするバーチャルワールドを作っている方も、この重要性は感覚的に知っているのではないでしょうか。

ひとり作っている中で夢想した「これは楽しいハズ!」のものは、たいていすべて想定した通りに機能せず、100%狙い通りに訪問者は動いてくれない、遊んでくれない。
出してみて気が付く「親切設計になってなさ」・・・。

フレンドやSNSでのコメント等のフィードバックを反映して、より遊びやすく・過ごしやすくなっていくということは、皆さんが日常的に自然と繰り返していることなのかなと思います。

これはAIが描いた 「ユーザーの声を聞こう」 というタイトルのイラスト

 

  

それでは、企画やイベントはどうでしょう?

 

これも基本的には同じだと感じています。

リアルの企画やイベントでもそうでしょうし、バーチャル世界のもの(=人とコンピュータとのインタラクションを介して"体験"する企画やイベント)は、ことさら当てはまることと思います。

企画やイベントも、よりよいものにしていくためには、体験者からの声をどれだけ多く、適切に取り入れるかは重要な要素だと考えられます。

   

3. 体験者の声を集めながら作る

企画・イベントは、長期の準備に対して開催は一度きりという場合も多く、アプリやゲームのデバッグのように繰り返し検証しながら意見を集めることはなかなかできず、難しいことも事実です。

そのような中でも体験者の声を聞くためにいくつか方法はあると思います。
特に効率的な方法の一つとして、過去の参加者に対してアンケートやインタビューを実施するという手法があると思います。
また、一度きりのイベントを作っている場合でも、本番前に運営外の人に部分的に見てもらう・できれば一連の体験してもらうという方法もある
と思います。

 

作り手は、長く作れば作るほど、同じ体験を何度も繰り返して麻痺してくるので、初見の体験者の気持ちとはかけ離れていきます。
これは仕方ありません。避けられません。
驚きとなったり感動したりするポイントも徐々に分からなくなりますし、躓くポイントにも慣れてしまって気づけなくなります。
いつも「いまこの瞬間だけ記憶喪失になってしまいたい」と思いますが、そうもいきません。

そういう時に第三者の目線を取り入れることが、参加者にとっては一度きりの企画やイベントを成功に近づけるための唯一の手段でもあると思います。

 

これはAIが描いた 「アンケートで、ユーザー体験をもっとよくしよう」 というタイトルのイラスト

 

また、大きなイベントの場合は特に、運営や開発には複数の人が関わっていることが多いと思いますが、外部の体験者目線での声は、こうした状況の中でも重要なものとなりえます。

よほど実験的なものや、特殊な趣旨のものでない限り、最優先されるのは参加者がよい体験をするのかどうかであることは言うまでもないと思います。
しかし、「よい体験を提供する」という同じ目標を共有したうえですら、開発や準備の段階で、それぞれの思いや認識が少しずつずれて、時にはぶつかることもあると思います。
そういう時に拠り所になるのが、やはり参加者 / 体験者の声であるとも感じています

参加者にどういう体験をしてほしくて作っているか。
これを明確にしましょう。
そんな中で、現状は参加者がどう感じるものになっているか。
これを調べましょう。

調べてしまえば、時間や手も限られている中でも、
「こういう所がいいと伝わっている、感じてもらえているから、よりトガらせていきましょう」
「ここで困っている人が多そうなので、まず着手しましょう」
という風に目線合わせを行うことで、開発や運営をスムーズにすることにつながるでしょう。

これはAIが描いた 「目線を合わせて作っていこう!」 というタイトルのイラスト

   

仲のよい参加者から直接感想を聞くということは簡単に取り掛かることができると思いますが、そうではない距離感の人や初見の参加者からの意見を集めるのはなかなか大変です。
一方で、そういう人たちの意見ほど、よりよい体験を実現するにおいて重要となるのは自明のことです。

最近 cluster では、イベントの退出時に外部のアンケートへのリンクをポップアップで出すことができるようになりました(現在は申請が必要)

これを使わない手はないと感じています。ぜひ使いましょう。
これを機に、アンケートをしてみましょう。

特に、同じイベントをシリーズ的に繰り返し行っている方は、毎回ではなくてもどこかのタイミングで簡単なものを一度実施してみると色々なものが得られるのではないかと思います。

思わぬところでみんなが置いてけぼりになっているとか、逆に予想だにしない良い点が見つかるとか、驚きは多いと思います。

開催者たちにとっては何度も繰り返しているイベントの一回かもしれませんが、誰かにとっては初めてのイベントかもしれません。
そういう人を取り残さないようにするのは大切なことだと思います。

 

 

アンケート、やってみたいけど、やり方がわからないよ・・・
という方は、ぜひご気軽にご相談ください。

「本職の調査会社レベルで」とはいかないと思いますが、案出しや解析などまでご協力できるかと思います。

 

4. 実例紹介 - バーチャル学会運営 -

何か紹介できることはないかという所ですが、折よくこの2023年、縁あってみっつはバーチャル学会の運営に参加させていただくことになり、UX班 のチームリーダーとして取り組んできたので、そこで経験したことを実例として書いてみます。
(実質的には班員は僕 + 運営委員長 + 前年度運営委員長という3人による新設の班だったので、全員で試行錯誤しながら実働部隊として奔走した感じです。)

UX班として果たす機能は、①今年度のすべての開発が本格的に開始する前に各種情報収集を行い、課題を発見して共有することと、②制作中の要所でクオリティチェックを行うこと、③また要所要所で判断に迷っている場合に体験者目線から情報と指針を提供することである と意識しながら取り組みました。

UX班 始動初期くらいに作っていた資料が出てきました。

 

4-1. 過去開催回の分析と課題の抽出

とても素晴らしいことにバーチャル学会では、過去開催回(2019-2022)で聴講者、発表者からのアンケート結果が集められていました。

それらを集計して、様々な切り口で見ていく中で、課題を浮き彫りにすることができました。

2022年の参加後アンケートの中では、各会場までの導線についてと、WEBサイトに関するスコアが他と比べて低かったことがわかりました。
また、次回以降に期待することや改善点についての質問では、公式ディスコードでのアナウンスがすぐ流れてしまって情報を辿りづらいこと、cluster会場でのボイスチャットの混線などが多くあげられていることがわかりました。

このあたりの情報を抽出するにあたっては、
ある選択肢で~~~と答えた人たちは、別の選択肢では~~~と答えている特徴があるようだ、というような観察を行ったり(クロス集計)、
ある選択肢の回答で「悪かった」「特に悪かった」という回答をしてくれている方のコメントを抽出したりしました。

運営ミーティングの資料

 

また、過去参加者の中から、
・バーチャル生活には慣れているけど学術方面出身ではなさそうな人
・学術出身で、VRSNSの界隈には属していなそうな人
といったように注目すべき属性の代表者となりそうな数名の方をピックアップして、直接声をかけさせていただき、インタビューを行いました

一緒に昨年度の会場を散策しながら、第一印象や躓いた点、分かりづらかった部分などを思い出してもらったり、申し込みから発表までにどういう事を考えていたかを振り返ってもらったりする中で、運営サイドでは予想できなかった課題を見つけることができました。

 

このように定量的、定性的な視点で課題抽出を行いました。
ちなみにデータの解析には特別なソフトを使うことなく、pythonを使って行っています。
(最近はもうコードも自分で書かずにほとんどをAIに書いてもらえるようになってきたので、多くの人が自前で出来るようになってきていると感じています。このあたりを解説、共有する場もあってもいいかもしれないなと思っています。)

 

4-2. 課題の共有と各種検証、立案

上述のような課題を、運営メンバーへ伝えました。
ここでやはり、それが実際の参加者からの声であったことは大きな力を持っていたと思います。
いきなり運営に参加してきた見知らぬ新メンバーが突然「ここ直しましょう」と言っても受け入れづらい部分があると思うのですが、「参加者の声を見ていくと、このあたりが課題のようです」と伝えることで、幾分か聞きやすくなっていたのだろうと感じています。

(ちなみに運営の方々が事前に課題だと感じられていた点と、実際の参加者の声はかけ離れていなかったです。素晴らしい感覚!)

  

課題共有の後は、今年どのようにその課題をクリアしていくかについての施策案出しと必要な検証を行うというステップを踏みました。

特にワールドのボイス周りやポスターの見やすさ関連については、会場制作班とUX班と共同で繰り返し検証を行いました。

テストワールドで各種確認。
さまざまなサイズや解像度のポスターを用意して様々な端末で見比べたり、高さ方向の音声減衰まで最適な距離を探したり。

 

   

また、ディスコードの情報(特に発表者向けの情報)を辿りづらいことは確かに大きな課題であると運営側でも認識していたので、
申し込み後に各ステップでのタスクを一覧で見ることができる、発表者専用のWEBページを作成することに踏み切り、試験的に運用しました。

発表者向けページの一部
発表者向けページの一部

運用や改変は主にみっつが行っていたのですが
「これは確実に意味がある、求められていることであるはずだ」
という意識で各種作業を行えていました。これは過去の参加者から生の声を自分自身が聞いていたからです。思い付きでやっていてはそういう心境にはなれなかったので、とてもよかったと感じます。
現在の所、好評の声もいくつか聞けていてありがたい限りです。

 

このように、課題を実際の参加者の声から抽出して、共有し、施策に落とし込むという流れで今年の学会開催に向けて動いてきたことが、ここでは紹介しきれませんが他にもたくさんあります。

 

4-3. 要所での確認

実際の施策や作ったものがうまく動作するか、参加者はちゃんと自然に体験に入り込んで過ごせるかなどを確認する必要があります。
本番は一度きりです。
本番でうまく機能しないリスクを減らすために、確認の機会は積極的に設けるようにしました。

 

中でも大きかったのは、11月に開催した、ワールド負荷チェックのイベントです。

各種検証の上で制作してきた会場で、実際に人がたくさん入って議論や会話を行った際に問題なく過ごせるか。
また、ワールドの中に設置している各種ギミックはうまく機能しているか、自然に使ってもらえるか。
参加者は迷わずに会場内を歩き回れるか。
などなどを観察する場として「会場のプレオープン」という形でイベントを開催しました。

実際の会場で発表した際、どのくらいの距離感で人が聴くのか観察中。

さらに、このタイミングでも一度参加者にアンケートも集めることができたので、多くのコメントをいただきました。
会場デザインやBGMなど「良い!」というコメントも中には含まれていて、嬉しい気持ちにもなれてよかったです。
本番に向けて調整・ブラッシュアップが大加速中です・・・!

 

他にも同じように、ディスコードサーバーの招待を始める前には、一部の参加者の方に見てもらってコメントをいただいてみたり、
ウェブサイトについてもWEBチームメンバーだけでなく他のチームから確認や導線などのFBをかけるようにしてきたりと、可能な限り広くの視点を入れながら各種実装を行うことができたと感じています。

 

 

宣伝

というようにして作られてきた、バーチャル学会ですが、今週末12/9-10で開催されます!!!!

発表も面白いものばかりですが、
ぜひこの記事を読んだ方は「どんな体験が待っているか」という視点で遊びに来ていただけたらいいなと思います。

参加後にアンケートも集めると思うので、良かったら回答してくださいね!

 

 

5. 最後に

5-1.

参加してくれた人にとってよりよい体験をつくるために、ユーザーの声を聞きましょう。
どんなに優れたクリエイター、パフォーマー、イベンターだとしても、
むしろ優れていればいるほど体験者の感覚とはかけ離れているはずなので、参加者の声に耳を傾けることは重要です。

時に耳が痛くなるような言葉に向き合わなければいけないこともありますが、そういう声を聞かせてくれる人ほど熱心に気にかけてくれているファンだったりもするので、なんとか一度受け入れましょう。

一度やって、やった側が満足して終わり。というようなものではなく、よりよい次の体験づくりにつながるように、という考え方もあってもいいのかなと思いながらこの記事を書いてみました。

自分としても色々なことを考えながら振り返ることができたのでとてもよかったです。

 

5-2.

書いてみていて思ったこととして、複数人で運営する中~大規模の企画や運営の中には、ディレクションをするリーダー的な役割とは別に、ユーザー目線での体験を保証することを第一に考えるような役割の人が1人メンバーに入っていてもいいのかなということです。
企業でいうと、最近はCXO(Chief Experience Officer)という役職を置いているところもあります。そういう役割の人です。

ただ cluster でのイベントや企画運営となると実際は「ここは分かりにくいかも」とか「ここはちょっと置いてけぼりになりそう」というネガティブ要素を見つけたり、「こういうガイドを付けたらもっとわかりやすくなるんじゃないかしら」とかアイデアを考えたりするような、藪を突っついて回る口出し屋さん的な動きになるのかもしれないのが懸念点かなと思います。

抜群な感性と実績や能力を持っているか、
あるいはひたすら走り回って体験者が本当にどう感じるのかを調べて共有する、という取り組み方をできる人であれば、
成立しないこともないのかな、となんとなく感じています。

あるいはもう一つの可能性として「めっちゃ普通に楽しむのが得意!」という特徴を持っている人がもしいたら、この役割に向いているのでは、と個人的に思っています。
イベンターでもなく、クリエイターでもなく、ニュートラルにこの世界で過ごすことだけを楽しんでいる人、そういう人は裏を返せば一番の体験者目線を持っているということなので、実はものすごく活躍するポテンシャルを秘めているのではないかと思っています。
ただ普通に「ここは変」と思ったところが、みんなが変だと感じる場所である、そんな人。
そういう「なにもしないでもいい」を突き詰めているような方がいたら、ぜひ意見を聞きに行ってみたいなぁと思ってます。

 

ともあれ、なんかいい塩梅で、自然にこういう体験者の声を聞きにいくような取り組みがもっと根付いていったらいいなと、思っています。 

 

 

99. 注意事項など

あえてここで書くかは悩みましたが、書いておきます。

大筋として「アンケート、とってみなよ!」という趣旨で記事を書いてみましたが、
いくつか気をつけることがあるので最後に追記しておきます。

 

★アンケートを取るときは、利用目的と利用方法を明確にして説明を!

特に結果を公表する予定はなく、純粋に今後の参考にするためのアンケートであったとしても、
可能であれば、どのような目的で、どういう利用方法をするのかを明確にして、同意をとるようにするのをお勧めします。

作例。バーチャル学会アンケートより。

 

★生命科学や医療に関わるような研究のアンケートは × !

研究活動目的のアンケート、特に生命科学や医療関連のものでは、倫理審査というプロセスを経ることが必須な場合が多いです。
ですので基本的には個人で行うことは難しいと考えてください。
詳しくは「研究 調査 倫理審査」などでgoogle検索してください。

 

★介入、侵襲に注意

上記の領域外でも、回答者の生活に介入するような設問
(例えば、「この設問を答える前に、1分間全力疾走してください」「20時間寝ていない状態でお答えください」)
はしてはいけません。

また、その設問に答えることで、回答者が身体的・精神的に傷害または負担を受ける可能性がある( = 侵襲性が高い)設問は、極力避ける必要があります。

リスクを0にすることはできないが、収集したい情報を得るにあたって、最小限まで軽減されている必要がある、というのが研究における調査設計の基本指針です。

研究に該当しないようなアンケートであっても、この点は同様に守られるべきですので、注意してください。
個人で行うようなアンケートの場合は、少しでも怪しいと思われるような設問は避けておくのが良いと思います。
少なくとも、そのような設問については、任意回答にしておくことや、なぜその設問が必要なのか十分説明がされていることは必須であると考えられます。

 

★結果の公表についても注意

倫理的な側面では、ある特性を持つ母集団に対してネガティブな印象を生じさせてしまう恐れのある結果は公表が難しい場合もあります。

 

★アンケートの回答者がどのような人たちなのかを理解しておくことも重要

例えばバーチャル学会の参加者アンケートであれば、
開催日である土日が休みであるとか、
スマートホンやPC、VR端末をもっているであるとか、
VRSNSを利用することができてそもそも参加できているだとか、
そういった「無作為に街中から人を選んできた集団」とは違う特性を持っている母集団であることを意識してアンケートの結果を眺めていくことが重要です。

「回答を得られた人の中では」という前提でしか結果を語ることができないので、回答してくれた人がどのような属性の人たちなのかを知るような設問も、適宜加えておくといいでしょう。

 

ほかにもまだありそうですが。。。

まだまだ気を付ける点はありそうですが、
このあたりに関しては厳密に断言することが難しいので、若干フワッとした書き方になってしまっているのが申し訳ないです。

基本は、調査に協力してもらう方が安心して答えられるように、という考え方のもと設計していれば大きなトラブルにはならないと思いますので、細心の注意を払って行うようにしてください。

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