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結婚に胡座をかいてちゃダメよ〜ドラマ『あなたがしてくれなくても』感想文


不倫を良いことだと思ってないし、応援してるわけでもない。だけど何でか毎週泣いてしまう。分かる、というのとも違う。そういう状況になったことがないのだから分かるわけがない。でも、自分に置き換えて仮定してみると、もちろんいろんな条件が揃わなければそういう気も起きないと思うのだけど、いろんな条件が揃ったら果たしてどうか?

『あなたがしてくれなくても』


タイトルが絶妙。なんかもう、タイトルだけでいろいろ想像しちゃう。だけどこれはいわゆる“エッチ”のことだけではない。例えば、一緒にご飯を食べるとか、一緒にお花見するとか、一緒に会議の準備をするとか。最終的には、何もしなくて良いからそばに居ること。このタイトルにはそんなとこまで含まれている。“一緒に〇〇したい”のベクトルが夫、あるいは妻にだけ向いていた時には、“してくれない”とか“してもらえない”時の失望が全部自分に返ってくる感じがする。ブーメランと同じで、期待が大きいと失望も大きい。それが、“〇〇したい”の相手が配偶者とは別に居る、そしてその相手は“〇〇してくれる”、となると、配偶者に対して期待を抱かなくてよくなるし、“してくれない”対象として存在していた配偶者の存在意義さえ無くなる。
急に期待されなくなった配偶者の方は、期待されていた時の負荷が軽くなってしまうことで夫婦のバランスが崩れた事に気付き慌てて、つい慣れない事をしては自分への“期待”を取り戻したくなる。お互いに、“今までとは何か違う感じ”を相手に感じていて、相手からの期待を失ったほうはどうにか取り戻そうと躍起になるけれど、一度離れた距離は縮まらない。焦るほどに墓穴を掘る。


そんな攻防を、毎週観せられている。
どこに泣く要素があるのか?というと、主役の奈緒さんと岩田剛典さんの“キュン”なシーン。不倫ドラマのはずが、何故かこの2人からはあまり甘美な匂いがしない。それはまるで、少女マンガによくある設定、真面目で地味なヒロインと、皆の憧れの存在である相手役の男の子が繰り広げる胸キュンストーリーみたいなのだ。皆の憧れの存在が、自分の魅力を分かってくれて必要としてくれたら、そりゃ少女マンガじゃなくても舞い上がっちゃう。しかも同じ悩みを抱えてる同士、苦しみや悲しみを深く分かち合えるとくれば、心を持っていかれてしまうよね。そういう経験がなくても、そりゃそうだよってそこは納得。奈緒さんと岩田さんのピュアな空気が、どうしてもこの人を選びたくなってしまうどうしようもない気持ちを、そしてそれがどれほど罪なことで、この先がどれほど“茨の道”なのかにも気づいていながら、今その瞬間の気持ちを抑えられない。そんな感じがすごく伝わる。このやるせなさが、私が泣いてしまう理由。


このドラマのうまいところは、そうなった2人のそれぞれの配偶者が、自分の存在意義を守るために頑張るのだけど、女性(奈緒)の方は夫(永山瑛太)の誠意にほだされてしまって、不倫より婚姻関係を優先しようとする。ま、誠意かどうかも分からんけど、とりあえずかつてあんなに好きだった旦那さんが一生懸命に自分と向き合おうとしてきたら、多少はその気になるかな、と思う。
対して男性(岩田)のほうは、あんなに仕事、仕事だった妻(田中みな実)が急に家事をやるようになると逆に、「何だ、やろうと思えば出来るんじゃん。じゃなんで今までやらなかった?」って思うなぁとそこには共感出来るし、「もう好きじゃないの?」なんて聞かれたら、うん考えてみたら好きじゃなくなったかもって思っちゃいそう。冷静に考えたら今まで妻のために、傷つけられながらもなんでこんなに頑張ってたんだろって。これはもう、不倫とか関係なく、夫婦関係が意味を持たなくなってしまってる。


女性側、男性側、惹かれ合う2人の間にも実は溝があるから、すれ違いドラマとしても絶妙。同僚に戻ろうと言う女性側、なかなか気持ちにふんぎりがつかず「最後にもう一度だけ」とLINEする男性側。からの、旦那から浮気を告白されて家を飛び出し男性の元へ走る女性側、一度は女性に会うために家を出るが途中で気が変わり奥さんの待つ家へ帰る男性側。観ている私は、いよいよかと思いきや、そうきたかと裏切られるのが楽しい。


ドラマをより盛り上げてくれる音楽。担当は、菅野祐悟さん。ドラマ『昼顔』も担当されていたのでまるで不倫ドラマ専門みたいに思われそうだけど、実はいろんなドラマや映画、アニメの音楽を担当されている。私は一度菅野さんのコンサートに行ったことがあるくらい、好きな作曲家さん。(私のおすすめはドラマ・ガリレオの『帝都大学』)また、以前にも書いたが劇中に流れる、稲葉浩志さんが歌う『ダンスはうまく踊れない』のカバーが、頭の中から離れない。くらいによくマッチしている。


不倫ドラマとはいうものの、今のところ一線を越えたのは瑛太さんだけ。でも、そういう関係がなくても、心を持ってかれたらそれはもうやっぱり不倫なのかな、と思えるドラマ。

このドラマから学ぶとするなら、
・結婚に胡座をかいてたら痛い目に遭う
・お互いに分かっているようで分かっていない。ちゃんと言葉で伝えなきゃダメ

ってことかな。あ、これ、ドラマでの紺野まひるさん(瑛太さんの姉役)のセリフです。






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