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甘野充のお気に入り

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#現代詩

同級生S君の夢《Dream Diary 32》

xxxx年/05/27(x)  大型の宇宙船の船内で、大勢の女性達が沢山のお菓子と一緒に無重力遊泳をしていた。プカプカ浮かぶスイーツの中を、フワフワと上下左右に進んだり、斜め方向にクルクル飛び回ったりして、彼女達は皆何かが始まるのを待っていた。私も無重力遊泳をしながら、小学校時代の同級生のS君を探していた。色とりどりのスイーツをかき分けて、私は数人の女性にS君を見掛けなかったか尋ねてみた。彼女らは皆エクスタシーに達した表情をしていたが、S君の名前を聞くと急に顔をしかめたり、

詩 「庭」

空と君 それだけでよかった

SFファンタジー詩「流星ロボット」 第1話

プロローグ「あるロボットたちの話し」 夜空の星を眺めながら 一匹の犬が 遠吠えを上げていた 「ウォーーーン ウォーーーン クーンクーン」 その声は 廃墟の都市に 寂しそうに響いていた・・・ 犬は もう何千年も  この星を捨てて 去っていった 主を想って 遠い夜空を 見あげて鳴いていた・・・ そして 鳴き疲れると いつものように 特殊合金の瞼を閉じて 眠りについた・・・ ある夜の事 巨大な宇宙船が 夜空に現れた 犬は 主が迎えに来たものと思い 立ち上がる

【詩】空を見る 

空を見る  悲しい時 空を見る 誰かに分かって欲しい時 悔しさで胸が押しつぶされそうな時  寂しくてたまらない時  空を見る 嬉しい時 空を見る 願いが叶った時  ひとつ乗り越えた時  優しい幸せに包まれた時  空を見る 決して負けない強さと 負けたことがある強さ 静かに歯を食いしばる 空は何でも知っている     このちっぽけな私の 胸の裏の染みまで 臆することなく 堂々と生きて行こう 勇気を携え 祈りを込めて 空を見る  ーーーーーーーーーーーーーーーーーー

溶けない心【詩】/雪解け【近況】

色の一部が沈殿した 窓の外は ブルートーンのビル群 君を失った寒色の世界 部屋の中は ダークネイビーが作る グラデーションの薄闇 脳の奥に沈殿した色を 僕は頭を揺らし 撹拌する スノードームのように 暖色におおわれ つかのまの弛緩 ……沈殿 頭を大きく振る 暖色はつかのま ……暗涙 ダークネイビーの薄闇と窓外のブルー 君を表現するための色が足りない さよならできない僕の心の色だけが この世にあふれている ©️2023 ume15 【近況】雪解け 以

【詩】夢

夢みたいなこと 何時迄も考えて 子供の時間は終わったんだよ 大人になった君は僕にそう言った ランドセルに詰め込んだ たくさんの思い出たちは 宝箱にしまわれて出てこない そろそろ先に進もうか だってこのままじゃあ 辛いだけでしょう? 君は沢山の常識を鎧にして生きている とてもじゃないけど壊せそうにないな 夢なんて言葉で終わりにすることのできない自分が 空回りして体が宙を浮きそうになる 愛だけじゃ食べていけないって 聞いたようなセリフを吐いて 追いやってしまうのを許した

詩 「光の中を」

零れたひかりは泡のように弾け きみの白さをぼやかした それは思いがけない 魔法のようで 臆病なぼくを一人にした

恐竜図鑑 【幻想詩】

この部屋に閉じ込められて 十年が経った。 もう雨は止んだようだ。 生あたたかい風が吹いている。 陥没した街道の脇から 恐竜の骨が見つかった。 雨に磨かれて 蝋燭のように輝いた。 そういえばあの少年たちは もう十年も姿を現さない。 ポテトチップスの匂いと一緒に、 押し入れの奥の 見えない部屋に籠ったまま、 もう変声期は過ぎていることだろう。 また雨が降り始めた... その音を聞いたのは 私ではなく 私の耳の中にいるカミキリ虫 まだ雨が降っていた... その音を聞いた少年た

【詩】あの頃と今

なんでもそろっているような状態からは 何も生まれない 何も不自由していなかったあの頃 なんで生きているのだろうなんて思っていた 死にたかったわけじゃない ただ、生きるのに退屈していた 毎日ただ時間をやり過ごしていただけ 過ぎていく時間に身を委ねていた やりたいこともまだ見つからなくて ただそこにいただけの毎日 そして時は過ぎ… 無常なこの世の中で 私だけが不変のものを求めてる ないものを探して取り残されていく… ©2023 alice hanasaki 散文

棺桶の女性の夢《Dream Diary 03》

xxxx年4月26日(x)その1  未来的な形態のビル群がキラキラと光を反射し合っている。私はそんな都市のビルの一室にいた。広いスペースの中にまるで棺桶のようなジュラルミン製の直方体が置いてあり、その上蓋が音も無く開くと、中から女性がむっくりと起き上がってきた。メタリックなシルバーとグリーンのバトルスーツを身に着けた彼女は、直方体から出ると私の方に向き直り、ゆっくりとした足取りで近付いて来る。私の前で停止するかと思ったが、戸惑う私にお構いなく接近して身体を押し付けて来る。私

【詩】ねがい

あなたといるときのわたしは ただの破片にすぎない そこのあなたも あなたも あなたも あなただって わたしの欠片しか知らない わかったような顔をしないでほしい わたし自身も知らない わたしの完全な姿を 散らばった破片を 集めることもせず わたしはいつもただ見ているだけ わたしという いのちの欠片 あなたという いのちの破片 混じりあっては空から降り積もる 絶え間なく降ってくる 雨も雪も霙も霰も すべてすべて ほんとうはみんなのいのちと涙

詩 「hear」

「生きて」 君の声がきこえる

短編 「母娘のCavatina」

〜°〜°〜°〜°〜°〜°〜°〜°〜°〜°〜°〜 Cavatina ; カヴァティーナ (イタリア語) ・ ・ ・ ・ 激しい衝撃が起きた__ 突然、樹里が運転していた 軽自動車が宙を舞い 割れたリアガラスから 身体が空中に放り出された。 (一体、何が起こったの?) 樹里はいつの間にか、 路面に横たわり 少し離れた視界の先に 大破した自分の車と、 この状況の原因と見られる トラックが停車しているのを見た。 全身を路面に強打してしまい、 息苦しい。 (私、このま

宙ぶらりん [短編小説]

激しく窓を叩く雨音。 部屋中がざわめく。 こんな嵐の夜は、自分は地球上に取り残された 唯一の人間のように思えてくる。 全人類が死に絶え、自分1人だけが生き残った ような感覚。 孤独で不安な夜に、私は彼を想う。 心の中で問いかける。 生きてる? それを、確かめる術はない。 ただ、問いかけることしかできない。 例えば、もし、呼吸もままならないほど 痛みに耐えきれないほどの病に伏してるとしたら 生きていてほしいという願いは、 おこがましい? わがまま?  音信不通は元気な便