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息抜きや趣味で観る本や映画、配信ドラマや演劇などの感想、雑文をぽつぽつと置きます。

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最近の記事

「パストライブス ー再会ー」【映画感想文】

※ネタバレ有り感想文です。 フィルムマークスにも感想をしたためたのだけれど、 少し別角度から感想をあげてみたくなったので、こちらのnoteにも書きます。 この話は恋愛映画であるとともに、一人の女性のまっすぐな生きざまを描いた話だとも感じました。その視点からの感想を、つらつらと書いてみたいと思います。 主人公の女性・ノラは、幼い頃から人生の目標を立てて、異国の地でもなんとか踏ん張って自立して生きてきた。そんな彼女が、唯一残してきた心残りが、24年前、出身地韓国での煮え切れ

    • 「オッペンハイマー」【映画感想文】

      ※内容に深く触れた感想文です。 本国から1年と少し遅れのようやくの公開。 観るかどうか、結構悩みました。 作品の出来不出来にとどまらない事前情報がさまざまに入り乱れていて、なにをどう受け取って良いのか。でもやっぱり観たい、と決意して、ならばせっかくだからとIMAXで鑑賞してきました。 鑑賞後の感想。 驚くほど、まっとうな伝記映画でした。とことん真摯に、とある天才物理学者の半生を描いた物語でした。ただ彼が、原爆を生み出した責任者であった、それだけが、悲劇であり痛恨でした。

      • 「う蝕」軽妙さと意外性の詰まった真摯な願いの詰まった会話劇【観劇感想文】

        ※ネタバレ有の感想文です。 兵庫芸術文化センターにて、「う蝕」を観てきました。 とても私好みのお芝居で、観られて本当に良かったと思えました。 物語は、6人の男性の会話劇によって進められます。 ……場所は日本のどこかの孤島。大規模な地盤沈下という未知の災害に襲われ、それは「う蝕」と呼ばれるようになった。 その災害によって多くの人間の命が奪われ、その個人の特定のために歯科医師たちが集まる。もともと島の医師だった男や、呼ばれてきた医師もいる。 やがて、医師の知り合いの男や役

        • 「落下の解剖学」決定的証拠のない法廷劇の顛末を描く【映画感想文】

          ※直接的なネタバレはしてませんが内容に深く触れた、感想文です。 ひとつの事件を追う法廷ドラマとして、すごく楽しめた。 コピーから想像するミステリとしての物語を求める方にはちょっと違うベクトルの話だろうな、とも。 私が観終わったあとすぐに思ったのが、 「この小説家は、この事件を小説にするんだろうな」ということだった。 作中で夫婦の激しい応酬の過程で明らかにされていく事実のひとつに、私生活の会話を録音して小説のネタにしようとしていた、という下りがあった。 だから、自分自身

        「パストライブス ー再会ー」【映画感想文】

        • 「オッペンハイマー」【映画感想文】

        • 「う蝕」軽妙さと意外性の詰まった真摯な願いの詰まった会話劇【観劇感想文】

        • 「落下の解剖学」決定的証拠のない法廷劇の顛末を描く【映画感想文】

          愛すべき飲んだくれたちの聖夜「海をゆく者」【観劇感想文】

          ※内容に触れたネタバレあり感想文です。 聖なる夜の、飲んだくれの5人の男たちの運命の一夜 2014年以来の再再演となる本作は、アイルランドの港町を舞台にしたクリスマスイブの夜をともに過ごすことになった5人の酒浸りの男たちの、ろくでもない話と喧嘩まがいのやり取りと真剣勝負のポーカーの模様がただただ綴られる物語です。 ある意味くだらなく、どうでもよく、アイルランドの社会風俗やならわしも知らない日本人にはよくわからない会話がポンポンとテンポよく継がれていきます。身内話を延々と

          愛すべき飲んだくれたちの聖夜「海をゆく者」【観劇感想文】

          アレンジが完璧@映画「カラオケ行こ!」【映画感想文】

          ※原作既読で、内容に触れている感想文です。 観る前の懸念を吹き飛ばした見事な「映画化」 観る前は、映画のコンセプトがちょっと違うのでは…、と思ってたのですが、初日から評判が良く、なんだかうずうずしてさくっと観に行きました。 結果、すっごく良かった。この映画、めっちゃ好きです。 まず、映画化にあたって、聡実のモノローグを無くして、オリジナルエピソードで彼の心情の変化を描く選択。この手法そのものがかなり思い切っていたと思うのですが、実に上手くハマっていました。 なぜかっ

          アレンジが完璧@映画「カラオケ行こ!」【映画感想文】

          雪はいつまでもやまない「ユンヒへ」【映画感想文】

          ※映画の内容に触れているネタバレ有り感想文です。 中年女性ふたりの恋愛を描いた、韓国クィア映画「ユンヒへ」 この映画は、以前一度鑑賞しました。全編を貫く静謐な雰囲気と、登場人物たちのやさしく温かなやり取り、そして雪に覆われた小樽の街の「盛らない」撮りかた、すべてが調和してひとつの世界を創りあげていて、印象深く観た映画でした。 先般アマゾンプライムでの配信が開始され、もう一度鑑賞したのですが、やはりつくづく好きな映画だな…と染み入るように感じたので、その理由をぽつらつらと

          雪はいつまでもやまない「ユンヒへ」【映画感想文】

          嘘が嘘を呼ばない、不穏で平穏な「リムジン」【観劇感想文】

          ※ネタバレ有りのつれづれとした感想文です。 新型コロナの影響で全公演中止となった演目が、3年のときを超えてカムバック。待ちに待った演劇でした。 日常に始まり、日常に終わる、「それだけ」の物語 物語は、ソファを中央に置いた工場と家のパブリックスペースのみで展開します。 ひなびた小さな町で工場を経営する若い夫婦は、ちいさな心配事や気がかりを抱えつつも、おだやかな暮らしを送っている。 そんなある日、狩猟へ出かけた夫は、誤って地区の組合長を撃ってしまう。幸い怪我は軽傷で済ん

          嘘が嘘を呼ばない、不穏で平穏な「リムジン」【観劇感想文】

          それから、を考えた「無駄な抵抗」【観劇感想文】

          ※ネタバレ有りの、とりとめのない感想文です。 ・古代ギリシャ悲劇「オイディプス王」をモチーフにした物語 ……とは聞いていたものの、話の筋書きは、呪いや運命など重いものを感じさせないものでした。 《……なぜか駅に電車が止まらなくなって半年が過ぎた町。寂れていくその町の住人たちの嘆きと諦めと苛立ちが交差して、やがて一人の元占い師・現カウンセラーが、相談者の女性と面談する。 ふたりは実は古い知り合いで、相談者の女性は言う。 私は昔、あなたに呪いの言葉をかけられたのだ、と……

          それから、を考えた「無駄な抵抗」【観劇感想文】

          Netflix「マスクガール」を観て【韓国ドラマ感想文】

          ※ネタバレあり感想文です。 全7話、息を吐かせないハイスピードサスペンス+ホラー 容姿にコンプレックスを抱えさせられた「普通の」会社員・キム・モミが、得意なダンスと歌を諦めきれずにマスクをつけて配信者として活躍、支持を集めていく。 ところが実生活で自身の勘違いの果てに思わぬ失恋を抱えて自暴自棄になって起こした彼女自身のトラブルが、やがて怒涛の半生のドラマを招いていき――という、人生一寸先は闇を地で行く、話の展開が全く読めない、ノンストップ・ハイスピードなサスペンスドラマ

          Netflix「マスクガール」を観て【韓国ドラマ感想文】

          劇団☆新感線「天號星」を観て入れ替わりに思いを馳せた【観劇感想文】

          ※大阪での一度きりの観劇、戯曲未購入、 思い出しつつのネタバレ有り感想文です。 ・いのうえ歌舞伎名物・人情チャンバラ劇を満喫! とりあえず粗筋から。 今回、時代は江戸の元禄、場所は大江戸八百屋町。 この町では仕事を差配する口入れ屋が大繁盛。 ところがこの店の裏稼業は悪党を始末する引導屋。なかなかきな臭い一面を持つが、この店以上に胡散臭く腹黒い連中もいて、なにやら企んでる様子。 そんな町に、生粋の冷徹な人斬りが紛れ込んでくる。 さらに何の因果か宿縁か、この人斬りが口入れ

          劇団☆新感線「天號星」を観て入れ替わりに思いを馳せた【観劇感想文】

          NTLで「善き人」を観て、好きな演劇の形を再確認した話【観劇感想文】

          ※物語の内容に触れています ※十年来の演劇観劇趣味を持つ人間がこういうの観たかったんだと再確認して感激して書いた、感想文です ・ナショナルシアターライブ=英国の演劇を映画館で観れるプロジェクト 存在そのものは知っていた、NTLive。 ただ外国の演劇を字幕で映画館で観て楽しめるのか不安で、実際に見ることは今までありませんでした。 今回、「善き人」を観ようと決意したのは、 ・グッドオーメンズで大変印象的だったデヴィット・テナント氏が主演 ・ナチスドイツ統治下で、「普通」の

          NTLで「善き人」を観て、好きな演劇の形を再確認した話【観劇感想文】

          「青いカフタンの仕立て屋」の描く変わらない伝統と変わるべき伝統【映画感想文】

          *ストーリーにかなり触れていますが、良い映画だからいろんな方に観てほしいなあ、という思いも込めて書いています。 *観てから少し時間が経っているので、思い違い等あるかもしれません。 「あなたの人生は素晴らしい」 この映画のキャッチコピーのひとつがこの文言です。 明快で、ストレートな、相手への情が感じ取れる言葉です。 この言葉を投げかけるのは、死に瀕した妻・ミナです。 この言葉を受けるのは、その夫・ハリム。彼は、作品タイトルにあるカフタンの仕立て屋を営む職人です。 物語は

          「青いカフタンの仕立て屋」の描く変わらない伝統と変わるべき伝統【映画感想文】

          映画「イノセンツ」を観て【映画感想文】

          ※ネタバレあり感想文です。 ・子どもたちだけの世界で完結する潔さが巧くて、鮮烈 キャッチコピー、「大人には、秘密」が示す通り、 この映画の展開そのものに、大人は一切関与しません。 子どもが戦うフィクションに対しては、「こんなにひどい目に辛い目に子どもが遭っているというのに、大人は何をしているんだ」という指摘があったりしますが、この映画においては、そもそも大人は蚊帳の外であり続けます。 まず、その潔さが良かったです。 中途半端に大人が介入したり、勘付いたりすると、この映

          映画「イノセンツ」を観て【映画感想文】

          映画「怪物」と「イノセンツ」の子どもたち【映画感想文・短文】

          ※核心的なネタバレはありませんが両方とも内容には触れています。 ※近い時期に観て、ふと連想して妄想した文章です。 「イノセンツ」に向けて書かれたこの鑑賞文が素晴らしかった こちらの文中での、この部分にとても感じ入りました。 無垢ではなく、無知で本能的。 子どもたちは、喜怒哀楽を示したり、悪戯や意地悪もできる。 けれどそれがどこまで他者に影響するか、相手の側からの感覚を測れない、想像できない、考えない。 たとえば殴られたら痛い、だから殴ったら駄目と言われれば頷ける。

          映画「怪物」と「イノセンツ」の子どもたち【映画感想文・短文】

          映画「怪物」を観て【映画感想文】

          ※ネタバレ有りです。 ※とても面白く観た人間のつれづれとした感想です。 ・まず、卓越した構成・脚本がとても巧かった 120分を超える時間、ずっと緊張感を保ったまま見続けられたのは、ひとえに脚本の巧さにあると思いました。 教師による児童への暴行事件という、キャッチーな事件の顛末を全体の軸に据えています。ただ、その事件の様相は三度その「事実」を替えます。母親の、教師の、児童の、それぞれにとって事件の「真相」は違うものだった。どれもが真実を含み、嘘をまじえていた。 何度も同

          映画「怪物」を観て【映画感想文】