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息抜きや趣味で観る本や映画、配信ドラマや演劇などの感想、雑文をぽつぽつと置きます。

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最近の記事

「ふくすけ 2024-歌舞伎町黙示録」狂乱が現実にはみ出してきてないか?【観劇感想文】

ロームシアター京都で「ふくすけ」を観てきました。 2024年で4回目の演目。 私自身は再演を映像で、再再演を劇場で観たことのある作品です。 ともかく強烈な毒気と破滅的な展開に圧倒された印象が強く残っていて、とりわけ「ふくすけ」役の阿部さんが表現する狂気とおかしみは唯一無二でした。 そう思っていたので、今回大幅に脚本に手が加わり、ふくすけ役も岸井さんがされるということで、どう変わるんだろう…と戦々恐々だったわけですが、変わった部分と変わらなかった部分含めて間違いなく「ふく

    • 「aftersun/アフターサン」の寂寥感から「ザ・ホエール」を想い出したこと【映画感想文】

      ※両方の作品の内容に深く触れた個人的な感想文です。 劇場で見逃した「aftersun/アフターサン」を配信で鑑賞しました。 最初にこの作品のポスターを観たときに、「なんか折りたたんだ紙を広げた後の線が入ったみたいな画像だな」という違和感があったんですね。でも観たらきっと意味がわかるんだろうな、とは思っていた。 そして、観ました。確かに、(制作側の思惑とイコールとも言いませんが)意図がわかる。 昔折りたたんだ紙を広げても、その折り目の線は絶対に消せない。 昔の思い出に、

      • 「ライカムで待っとく」バックヤードから投げられた沖縄の物語【観劇感想文】

        ※内容に深く触れた観劇感想文です。 ライカムで待っとく」をロームシアター京都で観劇しました。 タイトルを知ったきっかけは、別のお芝居でもらったチラシから。 もともと私には、行く行かないに関わらず、デザインが好みの芝居や映画のチラシをファイリングする趣味があります。 爽やかで勢いのある良いイラストと、待っとく、というぶっきらぼうなニュアンスのタイトルが好きで、このチラシも取ってありました。 その内、ちらちらとネットなので良い芝居だという評判を聞き、観てみたいなと思うように

        • 「関心領域」【映画感想文】

          ※内容に深く触れた感想文です。 「関心領域」、観ました。 戦争映画として、真摯な訴えのこもった作品でした。 同時に、観ているうちに加害者側の視点で物語を追わざるを得なくなり、「塀の外」に安穏といる居心地の悪さを観客に息苦しく抱かせていくという、実験的な手法で編まれた映画だと思いました。 映像に映し出されるのは、一見、家族の平和な日常です。 けれど耳は銃声や怒号を常に拾い、映像にも会話や背景の端々に違和感を漂わせるので、心拍は勝手に緊張していきます。 だってこの家はアウ

        「ふくすけ 2024-歌舞伎町黙示録」狂乱が現実にはみ出してきてないか?【観劇感想文】

        • 「aftersun/アフターサン」の寂寥感から「ザ・ホエール」を想い出したこと【映画感想文】

        • 「ライカムで待っとく」バックヤードから投げられた沖縄の物語【観劇感想文】

        • 「関心領域」【映画感想文】

          「帰れない男」【観劇感想文】

          ※内容に深めに触れた感想文です。 倉持裕氏の新作「帰れない男」をドラマシティで鑑賞してきました。 タイトル通りに、ちょっとした手助けの恩義に豪奢な屋敷に招かれた男が、なんやかんやと引き止められて帰れなくなり、屋敷の面々との日々を送る模様を訥々と描いた、静かな心理劇でした。 登場するのは、やたら親し気な屋敷の若妻、男と妻の様子に何も言わずにむしろ逗留を進める主人、もの言いたげな下男に女中。そして、客の男を訪ねてくる知人。 彼ら彼女らの会話が、絶妙に緩急をつけたテンポでつ

          「帰れない男」【観劇感想文】

          「ありふれた教室」【映画感想文】

          ※内容に深く触れたネタバレ有り感想文です。 問題に直面したときに、「この方法だとちょっとマズいかもしれないな?」と思っても、どうにか打開したければ、ちょっと正しいばかりではない方法を取ってしまうのは、やったことがなくてもその心境の理解はできる。 「ありふれた教室」は、そんな風に正当性にちょっとばかり欠けるものの、正義のために「良かれと思って」取った行動によって、単純な校内の盗難事件がどんどんと泥沼化して、じりじりとした蟻地獄に落ちていく様子「のみ」をひたすらに追った作品で

          「ありふれた教室」【映画感想文】

          「パストライブス ー再会ー」【映画感想文】

          ※ネタバレ有り感想文です。 フィルムマークスにも感想をしたためたのだけれど、 少し別角度から感想をあげてみたくなったので、こちらのnoteにも書きます。 この話は恋愛映画であるとともに、一人の女性のまっすぐな生きざまを描いた話だとも感じました。その視点からの感想を、つらつらと書いてみたいと思います。 主人公の女性・ノラは、幼い頃から人生の目標を立てて、異国の地でもなんとか踏ん張って自立して生きてきた。そんな彼女が、唯一残してきた心残りが、24年前、出身地韓国での煮え切れ

          「パストライブス ー再会ー」【映画感想文】

          「オッペンハイマー」【映画感想文】

          ※内容に深く触れた感想文です。 本国から1年と少し遅れのようやくの公開。 観るかどうか、結構悩みました。 作品の出来不出来にとどまらない事前情報がさまざまに入り乱れていて、なにをどう受け取って良いのか。でもやっぱり観たい、と決意して、ならばせっかくだからとIMAXで鑑賞してきました。 鑑賞後の感想。 驚くほど、まっとうな伝記映画でした。とことん真摯に、とある天才物理学者の半生を描いた物語でした。ただ彼が、原爆を生み出した責任者であった、それだけが、悲劇であり痛恨でした。

          「オッペンハイマー」【映画感想文】

          「う蝕」軽妙さと意外性の詰まった真摯な願いの詰まった会話劇【観劇感想文】

          ※ネタバレ有の感想文です。 兵庫芸術文化センターにて、「う蝕」を観てきました。 とても私好みのお芝居で、観られて本当に良かったと思えました。 物語は、6人の男性の会話劇によって進められます。 ……場所は日本のどこかの孤島。大規模な地盤沈下という未知の災害に襲われ、それは「う蝕」と呼ばれるようになった。 その災害によって多くの人間の命が奪われ、その個人の特定のために歯科医師たちが集まる。もともと島の医師だった男や、呼ばれてきた医師もいる。 やがて、医師の知り合いの男や役

          「う蝕」軽妙さと意外性の詰まった真摯な願いの詰まった会話劇【観劇感想文】

          「落下の解剖学」決定的証拠のない法廷劇の顛末を描く【映画感想文】

          ※直接的なネタバレはしてませんが内容に深く触れた、感想文です。 ひとつの事件を追う法廷ドラマとして、すごく楽しめた。 コピーから想像するミステリとしての物語を求める方にはちょっと違うベクトルの話だろうな、とも。 私が観終わったあとすぐに思ったのが、 「この小説家は、この事件を小説にするんだろうな」ということだった。 作中で夫婦の激しい応酬の過程で明らかにされていく事実のひとつに、私生活の会話を録音して小説のネタにしようとしていた、という下りがあった。 だから、自分自身

          「落下の解剖学」決定的証拠のない法廷劇の顛末を描く【映画感想文】

          愛すべき飲んだくれたちの聖夜「海をゆく者」【観劇感想文】

          ※内容に触れたネタバレあり感想文です。 聖なる夜の、飲んだくれの5人の男たちの運命の一夜 2014年以来の再再演となる本作は、アイルランドの港町を舞台にしたクリスマスイブの夜をともに過ごすことになった5人の酒浸りの男たちの、ろくでもない話と喧嘩まがいのやり取りと真剣勝負のポーカーの模様がただただ綴られる物語です。 ある意味くだらなく、どうでもよく、アイルランドの社会風俗やならわしも知らない日本人にはよくわからない会話がポンポンとテンポよく継がれていきます。身内話を延々と

          愛すべき飲んだくれたちの聖夜「海をゆく者」【観劇感想文】

          アレンジが完璧@映画「カラオケ行こ!」【映画感想文】

          ※原作既読で、内容に触れている感想文です。 観る前の懸念を吹き飛ばした見事な「映画化」 観る前は、映画のコンセプトがちょっと違うのでは…、と思ってたのですが、初日から評判が良く、なんだかうずうずしてさくっと観に行きました。 結果、すっごく良かった。この映画、めっちゃ好きです。 まず、映画化にあたって、聡実のモノローグを無くして、オリジナルエピソードで彼の心情の変化を描く選択。この手法そのものがかなり思い切っていたと思うのですが、実に上手くハマっていました。 なぜかっ

          アレンジが完璧@映画「カラオケ行こ!」【映画感想文】

          雪はいつまでもやまない「ユンヒへ」【映画感想文】

          ※映画の内容に触れているネタバレ有り感想文です。 中年女性ふたりの恋愛を描いた、韓国クィア映画「ユンヒへ」 この映画は、以前一度鑑賞しました。全編を貫く静謐な雰囲気と、登場人物たちのやさしく温かなやり取り、そして雪に覆われた小樽の街の「盛らない」撮りかた、すべてが調和してひとつの世界を創りあげていて、印象深く観た映画でした。 先般アマゾンプライムでの配信が開始され、もう一度鑑賞したのですが、やはりつくづく好きな映画だな…と染み入るように感じたので、その理由をぽつらつらと

          雪はいつまでもやまない「ユンヒへ」【映画感想文】

          嘘が嘘を呼ばない、不穏で平穏な「リムジン」【観劇感想文】

          ※ネタバレ有りのつれづれとした感想文です。 新型コロナの影響で全公演中止となった演目が、3年のときを超えてカムバック。待ちに待った演劇でした。 日常に始まり、日常に終わる、「それだけ」の物語 物語は、ソファを中央に置いた工場と家のパブリックスペースのみで展開します。 ひなびた小さな町で工場を経営する若い夫婦は、ちいさな心配事や気がかりを抱えつつも、おだやかな暮らしを送っている。 そんなある日、狩猟へ出かけた夫は、誤って地区の組合長を撃ってしまう。幸い怪我は軽傷で済ん

          嘘が嘘を呼ばない、不穏で平穏な「リムジン」【観劇感想文】

          それから、を考えた「無駄な抵抗」【観劇感想文】

          ※ネタバレ有りの、とりとめのない感想文です。 ・古代ギリシャ悲劇「オイディプス王」をモチーフにした物語 ……とは聞いていたものの、話の筋書きは、呪いや運命など重いものを感じさせないものでした。 《……なぜか駅に電車が止まらなくなって半年が過ぎた町。寂れていくその町の住人たちの嘆きと諦めと苛立ちが交差して、やがて一人の元占い師・現カウンセラーが、相談者の女性と面談する。 ふたりは実は古い知り合いで、相談者の女性は言う。 私は昔、あなたに呪いの言葉をかけられたのだ、と……

          それから、を考えた「無駄な抵抗」【観劇感想文】

          Netflix「マスクガール」を観て【韓国ドラマ感想文】

          ※ネタバレあり感想文です。 全7話、息を吐かせないハイスピードサスペンス+ホラー 容姿にコンプレックスを抱えさせられた「普通の」会社員・キム・モミが、得意なダンスと歌を諦めきれずにマスクをつけて配信者として活躍、支持を集めていく。 ところが実生活で自身の勘違いの果てに思わぬ失恋を抱えて自暴自棄になって起こした彼女自身のトラブルが、やがて怒涛の半生のドラマを招いていき――という、人生一寸先は闇を地で行く、話の展開が全く読めない、ノンストップ・ハイスピードなサスペンスドラマ

          Netflix「マスクガール」を観て【韓国ドラマ感想文】