見出し画像

ノマドランド 自由と安定の狭間に揺れる

「こんな生活いらんわ。」と、一緒に映画を観ていた次男が叫んでいた。「たまになら楽しいけれど。」と、付け加えて…。

次男と一緒に見ていた映画は『ノマドランド』。

車で路上生活をし、現金収入を季節労働などで得、遊牧民のように場所を移動しながら暮らす人々を書いた映画。

今は社会人となった次男がちょうど中学生位の時、私と元旦那の離婚成立が間もない時期だった。私はボックスカーに3人の子供と、キャンプ用品を詰め込んで、4泊5泊と計画のない旅に出た。毎年夏のノマド旅、淡路島一周、四国一周、山陰一周、紀伊半島を回る。車で寝泊まりしながら、各地で観光、海水浴、温泉、名物食べ歩きをした経験があった。予算が尽きると帰るだけ。

だから、次男は、車で寝泊まりする楽しさと不便さを知っているし、予算が尽きれば楽しみも終わることを知っていた。

『ノマドランド』2020年製作アメリカ映画。 クロエ・ジャオ監督。 フランシス・マクドーマンド デビッド・ストラザーン主演。2人以外は全て実際のノマド生活者出演。ルドヴィコ・エイナウディ音楽。『 ノマド: 漂流する高齢労働者たち』原作。

映画では、厳しい労働環境や、路上生活の不安定さなどの暗い影と、大自然の雄大さ、ノマド生活者同士の交流の温かさや輝きが描かれている。

私も思い出していた。旅で訪れた海や川の水の揺らぎ、山や木々のこぼれびなど光溢れる情景、夕暮れ時の僅かな赤い夕陽と黄昏。曇天続く空色。楽しい昼間の明るさと相反し、どこに泊まろうか?誰にも襲われないかどうか?など不安な夜を。

そして主人公は気の置けない素敵な彼にに出逢う。彼に一緒に親戚の農場で暮らすことを提案される。仲間のご高齢のノマド生活者の末路を知り、一度、彼を訪問してみる主人公。楽しく賑やかな家族との安定した暮らしを垣間見て、なぜか主人公はまたノマド生活に戻って行く。

彼と農場で家族に囲まれながら暮らすより、全て自己責任、終焉もどうなるか分からないまま、自由な生活を選ぶことを決意する。

車が故障しても、修理代も持ち合わせなかった彼女。季節労働やたまのアルバイトだけの細々とした生活。そして還暦を過ぎた肉体。車の限界、自分の限界に最後まで挑戦し続けようとするかのようだった。

私ならどうするだろう⁉️折角知り合った気の合う彼と安定した生活を選ぶだろうか。そうすれば多分、もうノマドの自由な生活には戻れない。

年老いて、いつまで働けるか分からないけれど、自由なノマド生活に縛りはない。いつでもどこにでも行動できて、仲間と励ましあう。誇り高い自己責任を貫くか…

 安定も欲しいけど、自由も欲しい。悩ましい問題だと切実に思うこの頃。

人生の選択って、何が正しいかなんて結局は自分次第。選んだ選択の末路も自己責任。選んだ事柄に後悔だけはしたくない。自由と安定の間で揺れるのも人生をじっくり考えているからだね。






この記事が参加している募集

映画感想文

よろしければサポートお願いします❣️他の方のnoteのサポートや、子供たちのための寄付、ART活動に活かしていきたいと思います。