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月1読書計画 6冊目 「過ぎ去りし王国の城 宮部みゆき」



2020年月1読書計画のルール、意気込みはこちら。

(月1読書感想文を書き始めて半年。ようやくnoteで自分の記事をリンクに埋め込む方法を学びました)


タイトル:過ぎ去りし王国の城 著者:宮部みゆき
読了:2020年7月25日(土)

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私の中では、「充実した休日」の定義の一つとして、本を読む時間をとる、というものがある。この4連休も充実した休日にするために、選定したのがこの本だ。

7月の中旬。毎年この時期になると、わくわくしたことに挑戦したくなるのは、小学生のときの夏休み前のあの感覚がまだ私の中に残っているからじゃないだろうかと思う。

それは今年も例外ではなく、手段として選んだのがファンタジー小説を読むということだった。

最後にファンタジー小説を読んだのはいつだったっけ。どの本だったかは覚えている。私は無類のハリーポッター好きだったので、その新刊か、もしくは一から読み直した時のいずれかの巻かだろうと思う。

ファンタジー小説は、十代のわたしを未知の世界へ連れて行ってくれた。その本にのめりこむ感覚を、はじまりたての夏休みの感覚にのせて、思い出したかったのだ。


宮部みゆきさんの書くファンタジーは、大人の読むファンタジーとしてとてもうまいなあと思う。

うまいという表現が正しいのかはわからないけれど、現代の世界とファンタジーの融合がすごく自然で(ファンタジーなので、自然な不自然さで、といったほうがいいかもしれない)、児童向けファンタジーのように壮大すぎず、ライトノベルのようにビビットな色すぎず、日常の少しくすんでいたり淡い色彩にうまく溶け込むファンタジーだなと思うのだ。


本書も、主人公の真は、その環境や人間性はまったく完璧ではなく、正義感たっぷりのいいやつというわけでもなく、適度にずるさや恥ずかしさをもった人物で、ファンタジー小説の主人公というにはちょっと頼りない。キーとなる同級生の珠美も、複雑な家庭環境と、学校でのいやがらせへの葛藤がある。

そこが妙にリアルだ。しかもファンタジーの世界でのひとつの大きな山をこえても、特に主人公たちに大きなご褒美や、大きな変化があるかといえばそうではなく、日常の取り巻く環境はなおつづくというのがファンタジーとしては少し寂しい終わり方だなと思う。

でも、それがすごく魅力的で、読了したときにこちらにそっと寄り添ってくれるのを感じる。

珠美と真は、これからも友情関係が続いていくといいなあ。二人ともこの不思議な体験を経て、かっこよくなったり、人気者になったりの突然の変化はないかもしれないけど、きっとお互いの存在に少しの勇気と支えをもらいながら、生きていくんだろうな。


おしまい。


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