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「育て方間違えた」と喧嘩する両親|私はあなた達に育てられて誇りに思ってる◎

こんばんは。宝条実空です。

現在、実家で暮らしています。

もう数日後には実家を離れてしまうので、母との思い出を振り返りたくなりました。


今から18年前、私は統合失調症になりました。

当時19歳。

医療系の専門学校に通っていましたが、病状が酷く中退。

当時は、精神疾患に対しての誤解が多い時代でした。

精神疾患=甘え

というような認識の人が多く、私の父もそのような考え方でした。


今は両親とも私の病気について寄り添ってくれています。

しかし、当時は私の病気のことで両親が言い争いをすることが多かったです。

「育て方を間違えたのでは?」と、母は嘆き、そんな母を父は責め立てる。

自分が病気にならなけでば、両親が口論することもないのに…と私は自分を責めました。

自分はなんて弱いんだ。

情けない。


って。


当時、母は「育て方を間違えた」と嘆いていましたが、私自身は「育て方を間違えられた」という感覚はありません。

逆に、「大切に育ててくれてありがとう」です。


私は子供の頃から人の表情や言葉に敏感でした。

4人兄妹の末っ子なのですが、母の話では、子供の頃の記憶を一番覚えているのは私らしいのです。

みんなが忘れている話、それも細かい部分まで覚えているようで、子供の頃の話を両親に話すと驚かれることが多いです。


だから、まるでタイムスリップしたように当時の思い出や感情が蘇るんですよね。


母は手芸が得意です。

洋裁に編み物。

手際よく作り上げていく母の手は、まるで魔法を使っているようでした。

はじめは、ただの一枚の布。

チャコペンで線を引いていく。

縫いしろは1cmの部分もあれば2.5cmの部分もある。

待ち針を細かく打ち、しつけ糸。

ミシン針に糸を通し、針を落とす場所を慎重に決める。

私には、ミシンはとても複雑な機械に見えていました。

糸を引っかける場所がたくさんあり、順番どおりにかけなければ糸は絡まりますし、きちんと縫うことができません。

母は迷いなく糸をかけていくのですが、

「一体、どこにどうやって糸をかけているんだろう?」

と、私は不思議に感じました。

ここからミシンのダダダーッ!という音が聞ける!

今か今かとワクワクしながら、母の横で待っているのですが。

ここでちょっと期待を裏切られます。

ダダッとミシンがちょっと進んだと思ったら、一旦止まりUターンしてくるんです。

返し縫いです。

この返し縫いが済んだら、今度こそ本命のダダダーッ!というミシンの音が聞けるんですね。

この音、直線が長ければ長いほど爽快です。


「止まらないで!行け行け、行けー!!」


直線縫いが角に到達。ミシンの音が止まると…


「……おぉ~」

緊張がちょっと緩みます。

スポーツの試合やヒーローショーを眺めているような感覚でした。

はじめはペラペラした、平面的な布だったのに。

脇に底にマチ。次々と縫い、どんどん立体的なレッスンバッグに仕上がっていくんです。

これがもう面白くて面白くて。

仕上げは、ワンポイントのワッペン。

別に無くても十分に可愛いので満足はしているのですが、ワッペンを取り出す母の姿を見ると「えっ!ワッペンもつけてくれるの!?」と、嬉しさに拍車がかかります。

ワッペンの位置と向きを慎重に調整し、その上に端切れ布をのせアイロンを当てる。

この頃は「あて布」というものを知りませんでしたので、「なんでワッペンの上に布を置くの?」という疑問がありました。


もうこの瞬間、ワクワクが止まらない!

母が布からアイロンを離すその瞬間まで、期待の気持ちでいっぱいです。

目が離せません!

「まだ?まだ?」と聞きたい気持ちをおさえます。

子供ながらに、作業中の母に話しかけるのは邪魔になるかも…と感じていました。

ほんの数十秒なのですが、この時間がちょっぴり長く感じるんですよね。


「もういいかな?」と母は言い、アイロンをスッと離す。

ようやくこの瞬間が来た!

はじめは「別にワッペン無くても良いよ」という気持ちでした。

でもやっぱり!

ワッペンがあると見栄えが違う!


完成品を見た瞬間は、キラキラキラ〜という効果音が聴こえる気がします。

私は嬉しさが止まりません。

でも、母はまだやることが残っているんですね。


糸くずを掃除したり、余った布を畳んだり、重たいミシンを片付けたり。

私のレッスンバッグを作るために、非常に多くの工程の作業をこなしています。


私は病気がきっかけで出来なくなったことが多いので余計に感じることなのですが、レッスンバッグを作るための行動力や気力ってすごく必要だと思います。

もちろん、母自身が洋裁を楽しんでいたというのもあるとは思うので、私が想像するような大変さとは違うのかもしれません。

でも、作業のあとには夕飯の支度もありますし、家事の合間に手芸をやるのは忙しいはずです。

自分の為にたくさんの工程をこなして作ってくれたことがとても嬉しいです。


「どんな布にしようかな?」

「持ち手の色はどれにしよう?」


母と一緒に手芸店に買い物行くのも好きだったし、布を選ぶのも好きでした。

「この布とこの持ち手が良い!」

私は自分の好きなもの同士を組み合わせるのですが、きっと母から見ると色も柄もチグハグな組み合わせに見えたのでしょう。

「こっちの方が良いんじゃない?」

母の意見が加わります。

両者の意見がなかなか一致せず、材料選びには時間がかかっていました。

母の手作りのレッスンバッグに楽譜を入れるときはワクワクします。

早く次のレッスンの日が来てほしい。

先生に怒られるのは嫌だけど、そんなことはどうでも良い。

とにかくレッスンバッグを持って出かけたい。

ピアノのレッスンだけでなく、友達と遊ぶときや学校の行事にも持っていきました。

「そのバッグ、可愛いね!」と友達や先生に褒められたものなら、私の心は飛び跳ねます。

バッグそのものを褒められたことは、もちろん嬉しいです。


でも、それよりも、


「母が作ったものを褒められた」


ということが、とても嬉しかったんですよね。


子どもの世界では自慢すると嫌われやすい傾向がありました。

だから、「いいでしょ?」なんて友達に言えません。


でもでも。

心の中では、

「そうでしょ!私のお母さんは凄いんだよ!」

と、声を大にして言っていました!


私が病気になったことで、「育て方を間違えた」と母は嘆いていました。

母は完璧主義で自分に厳しい人です。

自分に厳しすぎることで、落ち込んだり元気がないときもありました。


でもでも。

私は「育て方を間違えられた」とは思っていません。

母は子供だった私に、優しく手芸を教えてくれました。

その時間がすごく好きでした。

私も子供が生まれたら、母と同じように手芸を教えたり、手作りの作品を作ってあげたいと願っていました。

昔も今も自慢であり憧れの母です!

私の幸せを願い、私が病気になったことで人生に苦しむと思ったのかもしれません。

でも、私幸せです。

出来なくなったことはたくさんありますが、痛みを知ってからじゃないと見えない景色がありますし、色々な発見があって楽しいですよ!

日常の小さなことに幸せを感じるようになりました。

母には人生ハードモードに見えているかもしれませんが、小さなことにすぐ幸せを感じてしまう自分が意外に好きだったりします。


病気になり、たくさん心配かけましたし苦労もかけました。

母も老いてきていますので、一緒に過ごせる時間は限られています。

できることなら、私にたくさん手をかけてくれた分、私がサポートしていきたいところです。

楽をさせてあげたいです。

母のストレスを減らし、気楽な毎日を過ごしてほしいです。

自身の引っ越しを控えていますが、母を残していくことに負い目もあります。

グループホームへの入居に引っ越し…本当にこれで良いのか?という疑問もあります。


今の私は自分のケアがまともに出来ていない状態です。

もしこの状態で母の世話をしたとしても、母に更なる心配をかけるだけです。

下手したら共倒れの可能性もあります。


母が今後どんな状態になろうとも、まずはそれに耐えられる心の体力が必要です。

心の筋トレですね!

しっかり強くなって、どんな母でも受け入れられるような状態になれるよう目指します。


幸い、まだ母は大きな病気はありませんし、体力もある方です。

でもいつ何があるかなんてわかりません。

母が元気なうちに、私は少しでも自分を鍛えたいです。


でもこれも、私に兄がいることで、成り立つことだと思います。

兄が地元に残ってくれているから、私は身動きがとりやすいです。

もし私が一人っ子なら、こんな呑気なことを言えず、何が何でも家族のことを優先しなければいけなかったかもしれません。

母のことも兄のことも心配です。

私が都会に引っ越すことは、「自分が楽したいだけなのでは?」と疑問に思うこともあります。

自分が楽する分、そのしわ寄せが家族に向かってしまうのではないか。

両親も兄も、自分を犠牲にしているのではないか。

自分だけ自分の健康を優先して良いのだろうか。


色々迷いはありましたし、正解はわかりません。

ただ、私が楽しそうにしていたり何かに行動的になっている姿を見ることで、両親は安心するらしいのです。

人に遠慮して行動に移せない私の性質を、両親はよくわかっています。

だから、私が自発的に動くことは、「逞しくなった」とホッとするようです。(ハラハラもするようですが)


恩返しはたくさんしたいけど、自分が健康でいることが今自分ができる恩返し…なのかな?

主治医との診察で、「自分のお世話をしなさい」と口酸っぱく言われています。

家族のことになると自分の世話をすることに対して引け目を感じますが、自分の体が健康じゃないと家族の世話はできませんもんね。

わかっていても、心にブレーキはかかってしまいますね。


母とのエピソードになってしまいましたが、もちろん父にも感謝しています!

父とのエピソードは、また別の機会に書きたいです。


最近、自分の話が多くなりがちですが、書くことで頭も気持ちも整理されております。

また、温かいコメントに救われており、状況を冷静に見ることができています。


お付き合いくださり、ありがとうございます!

生活が落ち着きましたら、改めて恩返しさせて頂きたく思います!


何卒よろしくお願い致します。


宝条実空より


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私の体調をご配慮いただき、感謝致しますm(_ _)m



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