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レビューとレポート第52号

レビュー


[1]陳列、あるいは展示をめぐって──愛知県美術館「幻の愛知県博物館」レビュー
安井海洋
https://note.com/misonikomi_oden/n/n1e145a485ee7



レポート


[2]“愛と幸せはいま、圧倒的に足りていない”ーーキュンチョメ個展『魂の色は青』レポート & 超ロングインタビュー 
東間 嶺
https://note.com/misonikomi_oden/n/n4de28aa8edf8
(会期 2023年10月7日(土) - 12月17日(日))


[3]麻布台ヒルズギャラリー開館記念 オラファー・エリアソン展『相互に繋がりあう瞬間が協和する周期』 レポート
東間 嶺
https://note.com/misonikomi_oden/n/n1ac9c7edad51

会期:2023年11月24日(金)ー 2024年3月31日(日)




お知らせ

これから


梅津庸一さんが二人展をほぼ同じ時期に2箇所で開催します

梅津庸一・神崎倍充 二人展「ひげさん」

本展は信楽で丸倍製陶を営む神崎倍充と美術家である梅津庸⼀による2 ⼈展です。通常の2 ⼈展とはやや趣向が異なります。というのも神崎は⼯⼈(職⼈)として、梅津は作家(美術家)として活動しています。したがって神崎は⾃分が作るものを「製品」、梅津は「作品」と認識しています。では「製品」と「作品」の違いとはなんでしょうか……ところで本展のタイトルになっている「ひげさん」とは髭をたくわえた作家先⽣の呼称です。「ひげさん」はどちらかと⾔えば「作家」をやや否定的に捉えた蔑称でした。かつて信楽ではいわゆる個⼈で好きなものを作る陶芸家=作家よりも⼤きなのぼり窯や製陶所を有する職⼈の⽅が、強かったのです。……かつて絵画や彫刻などは「純粋美術」と呼ばれ、焼き物などの⼯芸は「応⽤美術」と分類されてきました。しかし近年では「伝統⼯芸」「クラフト」「現代アート」などの境界や定義は曖昧になりつつあり「焼き物」がどこに分類されるかは「作品/製品」⾃体の形式よりもそれが発表される場所や属するコミュニティーに規定されるようになりました。繰り返しになりますが本展は神崎と梅津による2 ⼈展ですがそれぞれの作った成果物を紹介するのみならず、美術/アートと産業をセットで捉え直すことで「ものをつくるとはなにか」「⽂化の担い⼿は誰か」という命題に少しでも近づきたいと考えています。

プレスリリースより

2023年12月14日(木)ー 2024年1月31日(水)
会場:艸居、艸居アネックス 
冬季休廊 :12月23日(土)ー 1月 8日(月)
http://gallery-sokyo.jp/exhibitions/exhibitions-7926/

画像:二人展に向けて作品を制作する梅津庸一



《水差しの口を塞ぐ》 2023年

2人で描く 絵画は今、何を問えるのか?
坂本夏子、梅津庸一

本展は坂本夏子と梅津庸一の共作による絵画展である。実はこの2人による共作は今回が初めてではない。10年前から断続的に行なっており今回で4度目になる。……本来、アート・コレクティブ「パープルーム」はゼロ年代に準備されたアートシーンに対するオルタナティブだったはずだがその前提すらも確認できなくなるのはまずい、そんな危機感も本展を開催する動機となっている。
本展は油彩画5点をメインとしたものだが、そこには自分たちが触れてきたもの、そしてこれからの展望が描かれ「質」として定着しているはずだ。さらに言えばそれは2人が絵画制作を始めた2000年代初頭から現在までの約20年の間の制作および鑑賞体験の蓄積を足がかりとした造形による批評的な身振りでもあるだろう。また共作は性質上、作品がそれぞれの作家に帰属せず宙ぶらりんな状態とも言える。したがってそれぞれのシグネチャーも曖昧になる。固有性を志向する作家からするとややストレスフルな作業でもある。それでも作品を文字通り共有、分有することで「他者」ひいては「集団」について思いを巡らせることになるのだ。最後になるが本展をもって相模原でのパープルームギャラリーは閉廊することが決まっている。最後の展覧会が初期パープルームで共に活動した坂本夏子と梅津庸一の共作展になるのは感慨深い。

WEBより

会期|2023年12月15日(金)ー 12月25日(月)(水曜日は休廊)
時間|15:00 ー 20:00
場所|パープルームギャラリー
企画|パープルーム
協力|パープルーム予備校
https://parplume-gallery.com/

画像提供:パープルームギャラリー



ここは未来のアーティストたちが眠る部屋となりえてきたか?
―国立西洋美術館65年目の自問|現代美術家たちへの問いかけ

中世から二十世紀前半までの西洋美術のみを収蔵/保存/展示している国立西洋美術館には、いわゆる「現代美術」は存在しません。そこは基本的に、すでに死者となって久しい遠き異邦の芸術家らが残した産物が集っている空間です。この展覧会ではしかし、そんな国立西洋美術館へと、こんにちの日本に生きる実験的なアーティストたちの作品群 ― 故人のものも含みますが ― をはじめて大々的に招き入れます。

2024年3月12日(火) - 5月12日(日)
国立西洋美術館

参加アーティスト
飯山由貴|梅津庸一|遠藤麻衣|小沢剛|小田原のどか|坂本夏子|杉戸洋|鷹野隆大|竹村京|田中功起|辰野登恵子|エレナ・トゥタッチコワ|内藤礼|中林忠良|長島有里枝|パープルーム(梅津庸一+安藤裕美+續橋仁子+星川あさこ+わきもとさき)|布施琳太郎|松浦寿夫|ミヤギフトシ|ユアサエボシ|弓指寛治

画像提供:国立西洋美術館 広報事務局



開催中


豊嶋康子 発生法──天地左右の裏表 展示風景
《名人戦》1992 年 作家蔵 撮影:山本糾

豊嶋康子 発生法──天地左右の裏表

豊嶋康子(1967-)は、1990 年より30 年以上にわたって、私たちを取り巻くさまざまな制度や価値観、約束事に対して「私」の視点から独自の仕方で対峙し続けてきた作家です。物や道具の仕組み、学校教育、経済活動から日常の様々な行為まで、私たちに避けがたく内面化、自動化されてきた思考や行為の枠組みやルールを、自身の感じる違和感や関心を梃として独自の仕方で読み替え、捉え返すことで、人の思考の型の形成、社会と自己の成り立ちの在り様を問うてきました。
……本展は、こうした豊嶋の制作の全貌を、初期作品から新作まで400 点近くを一堂に集め検証する初めての試みです。あまたある世の決まりごとに「私」を交差させる豊嶋の作品は、システムと不可分の存在であり続ける私たちに、多くの示唆を与えてくれます。「天地」や「左右」はどのようにして決まるのでしょうか?あるいは裏と表をひっくり返すことは?
自身の思考を素材とする一種の潔さとユーモアをもって、私たちをめぐる事物に対する「私」の応じ方をかたちにし、さまざまなシステムと「私」双方の「発生法」を捉えようとする豊嶋の制作は、私たちの思考や行為、そして自由の領域について、あらためて捉え返す契機を与えてくれるに違いありません。

PRより


東京都現代美術館 企画展示室 1F
2023年12月9日 -2024年3月10日
休館日:月曜日(1月8日、2月12日は開館)、12月28日-1月1日、1月9日、2月13 日
開館時間 10:00-18:00
https://www.mot-art-museum.jp/exhibitions/toyoshima_yasuko/

画像提供:東京都現代美術館
展示風景:プレス向け内覧会で撮影



キュンチョメ個展 魂の色は青

2022年以降は、フィリピンやハワイに滞在し現地の圧倒的な自然や、多様な価値観に触れ、思考を大きく更新させています。そして現在、海や大地、あるいは地球そのものに全身全霊で関わりながら「新しい幸福」の在り方を模索しています。
展示作品11点は全て新作で、海で制作された作品を中心に構成されます。作家は近年、様々な方法で海に潜り続けてきました。全身の力を抜き、環境に身を委ね、息を止めて海の深くまで行き、再び海面へ浮上する。そこでようやく、おもいっきり息を吸います。その「呼吸」は生の実感であると共に、世界と出会い直す瞬間であったのかもしれません。そのような数々の自然体験と共につくられた作品は、詩的でユーモラスな行為を通して幸福の探求へとつながっていきます。
また、海辺近くのカフェや、展覧会場の外にも作品が点在しており、美術館内だけでなく黒部の自然に触れながら作品と出会う構成になっています。会期初めの10月から11月にかけての一ヶ月は作家が現地に滞在し、「深呼吸を持ち帰る」ためのワークショップが定期開催されるほか、「記憶のアイスクリーム」(アイスクリームの記憶とアイスクリームを交換する作品)が突発的に開催されます。
本展覧会で提示される「新しい幸福」が、様々な不安や緊張が存在するこの時代を、共にしなやかに生きるための一つの指針となれば幸いです。

黒部市美術館(富山県)
2023年10月7日(土) - 12月17日(日)
休館日:月曜日(但し10月9日開館)、10月10日・11日、11月24日
開館時間 午前9時30分 - 午後4時30分(入館は午後4時まで)

https://kurobe-city-art-museum.jp/2023/08/08/キュンチョメ個展 魂の色は青/

画像 撮影:東間嶺

キュンチョメ個展「魂の色は青」の詳細なレポートは本誌へ掲載しております。



方法公式写真 2000 左から足立智美、松井茂、中ザワヒデキ 撮影:福永綾子
中ザワヒデキ 《 二三字三九行の文字座標型絵画第三番 》 1999 撮影:黒川未来夫 ( みそにこみおでん氏所蔵

IAMAS ARTIST FILE #09 〈方法主義芸術〉―規則・解釈・(反)身体

ゼロ年代初頭の芸術運動「方法主義」は、同時代芸術を批判し、原理や規則に因る絵画・詩・音楽を発表しました。岐阜県美術館と情報科学芸術大学院大学[IAMAS]の連携事業である「IAMASARTIST FILE #09」では、IAMAS教員2名(三輪眞弘・松井茂)がメンバーとして参加した「方法主義」の軌跡を辿り、その活動を再考します。
90年代初頭に「バカ CG 」という日本初のへたうまコンピュータ・グラフィックスで一世を風靡した中ザワヒデキは1997年「純粋芸術家」に転身し、当時の快楽的ポストモダニズムの芸術的状況に対抗する禁欲的で還元主義的な「方法絵画」作品群を発表し始めます。方法主義の提唱者である中ザワヒデキは、20世紀中葉のフォーマリズムによる諸芸術分断への批判として方法への還元を主張し、総合芸術としてではない諸芸術の連携を推し進めようとしました。4名の方法主義者たち(中ザワヒデキ、足立智美、松井茂、三輪眞弘)による野心的な芸術運動は、 2000 年 1 月 1 日の「方法主義宣言」(第一宣言)に端を発し、 1990 年 前後のポストモダニズムを背景とする「なんでもあり」の状況に確固たる「アンチ」の立場を唱えるなか、 2004 年 12 月 31 日に幕を下ろします。
本展覧会は、「方法」の活動終焉からおよそ20年が経過した今日の芸術の状況において、その活動の軌跡の意義を振り返ります。「方法」によって撒かれた芸術表現の萌芽は、現代のわたしたちに何を残したのでしょうか。あるいは、ポスト・ポストモダンである同時代芸術がなおその快楽的多様性ゆ
えに袋小路に陥っているのだとすれば、その打開策すら提案できるに違いありません。
「われわれ方法主義者は、放縦と怠惰を学芸にもたらした自由と平等を懐疑し、倫理としての論理を復権する。」(「方法主義宣言―方法絵画、方法詩、方法音楽」、2000年1月1日)

岐阜県美術館 展示室2
2023年 10月11日(水) - 12月24日(日)
10:00 - 18:00
※休館日:毎週月曜日(祝日の場合は翌平日)
※夜間開館 :10 月 20日(金)、 11月17日(金) は 20:00まで開場
※展示室の入場は閉館の30分前まで
https://kenbi.pref.gifu.lg.jp/events/iamas-af_09/
https://www.iamas.ac.jp/af/09/

関連展示
岐阜おおがきビエンナーレ 2023〈方法/Method〉
https://www.iamas.ac.jp/biennale23/

画像提供:岐阜県立美術館



ユリイカ2023年12月号 特集=長谷川白紙

加速し攪乱するシンガーソングライター
多種多様な音楽のエッセンス、柔らかな肉声、不可思議なことばの連なり、それらをデスクトップ上で混ぜ合わせた唯一無二の「歌」を、衝撃と混乱とともに轟かせてきた長谷川白紙。LAを拠点とするBrainfeederとの契約が発表され、ますます世界中で注目度を高める革新的なサウンドに身を委ねれば、これからの音楽が聴こえてくる。「わたし自身の身体による音楽の攪乱」——長谷川白紙自身によるマニフェストを受け取り、CDデビュー5周年を迎えた先にひろがるカオスな風景を描き出す。

http://www.seidosha.co.jp/book/index.php?id=3875&status=published


弊誌で特集したKOURYOUさんによる作品がユリイカへ掲載されています。ジャケット制作時のドローイングを再構成したものとのこと。




表紙について

ピアニストへの狭き門を巡って、ライバルたちがしのぎを削り、外は紅葉が吹き荒れるーーー
青春を音楽に捧げる若者たちの物語˚✧₊⁎༚˚⁎⁺˳✧༚

解説
ピアニストの夢を叶えるべく、変人・奇人の神童が集う音楽科の高校で切磋琢磨する主人公の物語です。
今回はアナログで描かれた少女マンガの表紙でよく使われたレースペーパーとエアブラシを使って、紅葉の絨毯のような背景を描きました。主人公の持っている楽譜はチャイコフスキーの「トロイカ」を参考にしています。

宮野かおり




あとがき

原稿募集中です。掲載希望される方は下記連絡先まで。
美術展のレポートやお知らせでの掲載や取材を希望される方はプレスリリースを下記連絡先まで送ってください。
展示内覧会へ招待いただければ取材へうかがいます。

展示や内覧会へ行き簡単なレポート出してくれる記者、展示レビューの執筆者を募集中です。

画像は全て許可を得たうえで掲載しています。無断転載はできません。

企画・編集:みそにこみおでん
スタッフ(校正担当):シロクマ

表紙絵:宮野かおり

連絡は下記へみそにこみおでん宛にお願いします。
E-mail: aspma260[あっと]gmail.com
X(旧:twitter):@misonikomioden
facebook: https://www.facebook.com/misomuoden

レビューとレポートバックナンバー
https://note.com/misonikomi_oden/m/m075a5bacea51