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レビューとレポート第53号

レビュー


[1]経験と表現の沁みわたる響きあい ——「Women’s Lives 女たちは生きている:病い、老い、死、そして再生」展評
香川 檀
https://note.com/misonikomi_oden/n/nb31972099590



レポート


[2]乾いた粘土が焼かれたら ― 穴が開くほどみた!梅津庸一個展「緑色の太陽とレンコン状の月」 ―
Romance_JCT
https://note.com/misonikomi_oden/n/n45073620e5cd


[3]豊田市民芸館開館40周年記念・河井寬次郎記念館開館50周年記念「河井寬次郎展 -寬次郎の魅力は何ですか-」 レポート
https://note.com/misonikomi_oden/n/n646fff6c64de
(2023年12月16日(土) 〜 2024年03月10日(日))




お知らせ

これから


コレクションズ・ラリー 愛知県美術館・愛知県陶磁美術館 共同企画

前本彰子《Silent Explosion──夜走る異国の径》1988年 愛知県美術館蔵
重要文化財《五輪塔形経筒外容器》平安時代末期 (久安2 年:1146 年) 愛知県陶磁美術館蔵

愛知県美術館と愛知県陶磁美術館のコレクションを合わせると、その数は17,000件以上にのぼります。本展は、そのなかから両館の4人の学芸員がそれぞれ独自の視点でテーマを立ててご紹介する、オムニバス形式の展覧会です。同じ愛知県立の美術館同士ですが、意外にもこのように大きな規模での共同企画を行うのは初めてのこと。愛知県陶磁美術館が休館中(2025年4月に再開予定)だからこそ実現したこの企画、2館のコレクションが出会うことで生まれる作品同士の共鳴を是非ともお楽しみください。

愛知県美術館WEB

愛知県美術館
2024年1月16日(火)~ 4月14日(日)

■トークラリー(学芸員による展示説明会)
1月21日(日)、2月10日(土)、4月6日(土)各回11:00-12:00
3月8日(金)18:30-19:30

画像提供:愛知県美術館



ここは未来のアーティストたちが眠る部屋となりえてきたか?
―国立西洋美術館65年目の自問|現代美術家たちへの問いかけ

中世から二十世紀前半までの西洋美術のみを収蔵/保存/展示している国立西洋美術館には、いわゆる「現代美術」は存在しません。そこは基本的に、すでに死者となって久しい遠き異邦の芸術家らが残した産物が集っている空間です。この展覧会ではしかし、そんな国立西洋美術館へと、こんにちの日本に生きる実験的なアーティストたちの作品群 ― 故人のものも含みますが ― をはじめて大々的に招き入れます。

プレスリリース

2024年3月12日(火) ~ 5月12日(日)
国立西洋美術館

参加アーティスト
飯山由貴|梅津庸一|遠藤麻衣|小沢剛|小田原のどか|坂本夏子|杉戸洋|鷹野隆大|竹村京|田中功起|辰野登恵子|エレナ・トゥタッチコワ|内藤礼|中林忠良|長島有里枝|パープルーム(梅津庸一+安藤裕美+續橋仁子+星川あさこ+わきもとさき)|布施琳太郎|松浦寿夫|ミヤギフトシ|ユアサエボシ|弓指寛治

画像提供:国立西洋美術館 広報事務局



開催中


梅津庸一・神崎倍充 二人展「ひげさん」

本展は信楽で丸倍製陶を営む神崎倍充と美術家である梅津庸⼀による2 ⼈展です。通常の2 ⼈展とはやや趣向が異なります。というのも神崎は⼯⼈(職⼈)として、梅津は作家(美術家)として活動しています。したがって神崎は⾃分が作るものを「製品」、梅津は「作品」と認識しています。では「製品」と「作品」の違いとはなんでしょうか……ところで本展のタイトルになっている「ひげさん」とは髭をたくわえた作家先⽣の呼称です。「ひげさん」はどちらかと⾔えば「作家」をやや否定的に捉えた蔑称でした。かつて信楽ではいわゆる個⼈で好きなものを作る陶芸家=作家よりも⼤きなのぼり窯や製陶所を有する職⼈の⽅が、強かったのです。……かつて絵画や彫刻などは「純粋美術」と呼ばれ、焼き物などの⼯芸は「応⽤美術」と分類されてきました。しかし近年では「伝統⼯芸」「クラフト」「現代アート」などの境界や定義は曖昧になりつつあり「焼き物」がどこに分類されるかは「作品/製品」⾃体の形式よりもそれが発表される場所や属するコミュニティーに規定されるようになりました。繰り返しになりますが本展は神崎と梅津による2 ⼈展ですがそれぞれの作った成果物を紹介するのみならず、美術/アートと産業をセットで捉え直すことで「ものをつくるとはなにか」「⽂化の担い⼿は誰か」という命題に少しでも近づきたいと考えています。

プレスリリース

艸居、艸居アネックス 
2023年12月14日(木) ~ 2024年1月31日(水)
冬季休廊 :12月23日(土) ~ 1月 8日(月)
http://gallery-sokyo.jp/exhibitions/exhibitions-7926/

画像:二人展に向けて作品を制作する梅津庸一 制作中に取材した際、撮影



豊嶋康子 発生法──天地左右の裏表

豊嶋康子(1967-)は、1990年より30年以上にわたって、私たちを取り巻くさまざまな制度や価値観、約束事に対して「私」の視点から独自の仕方で対峙し続けてきた作家です。物や道具の仕組み、学校教育、経済活動から日常の様々な行為まで、私たちに避けがたく内面化、自動化されてきた思考や行為の枠組みやルールを、自身の感じる違和感や関心を梃として独自の仕方で読み替え、捉え返すことで、人の思考の型の形成、社会と自己の成り立ちの在り様を問うてきました。
……本展は、こうした豊嶋の制作の全貌を、初期作品から新作まで400点近くを一堂に集め検証する初めての試みです。あまたある世の決まりごとに「私」を交差させる豊嶋の作品は、システムと不可分の存在であり続ける私たちに、多くの示唆を与えてくれます。「天地」や「左右」はどのようにして決まるのでしょうか?あるいは裏と表をひっくり返すことは?
自身の思考を素材とする一種の潔さとユーモアをもって、私たちをめぐる事物に対する「私」の応じ方をかたちにし、さまざまなシステムと「私」双方の「発生法」を捉えようとする豊嶋の制作は、私たちの思考や行為、そして自由の領域について、あらためて捉え返す契機を与えてくれるに違いありません。

プレスリリース

東京都現代美術館 企画展示室 1F
2023年12月9日 ~ 2024年3月10日
休館日:月曜日(1月8日、2月12日は開館)、12月28日-1月1日、1月9日、2月13 日
開館時間 10:00 ~ 18:00
https://www.mot-art-museum.jp/exhibitions/toyoshima_yasuko/


「豊嶋康子 発生法──天地左右の裏表」展 アーティストトーク(対談)「白井美穂と見る、豊嶋康子展」
2024年1月28日(日)15:00 ~ 16:30(開場14:45) 先着150名

展示風景:プレス向け内覧会で撮影



白井美穂 森の空き地

メディアを自在に横断し旺盛に制作を続ける、白井美穂の美術館初個展です。
1990年代前半に発表された貴重な立体作品を約30年ぶりに展示。
2000年代に入って華麗に展開する絵画を中心に、映像やオブジェを交えて構成し、知られざる巨人の全貌を明らかにします。
白井美穂の作品にある洗練された造形と、意味を複雑に重ねて提示する深い思考は、35年以上のあいだ驚異的な質を維持しています。
バブル経済が終焉に向かう1980年代末から90年代に白井は、社会的慣習や風俗を巧みに引用、流用し、家具や結界など既製品を用いて華麗で大胆なインスタレーションを展開しました。艶やかな黒色や反射する硬質な物質の使用が特徴で、また写真も印象的に使われています。
平成のただなかにあった2000年代半ば以降は、ピンクや水色といった明るい色が登場し、布や糸など柔らかい素材が用いられ、また絵画が中心的役割を果たすようになります。錬金術書の挿絵や物語からとったイメージに、宇宙や生命の循環への思索が織り込まれます。
「白井美穂 森の空地」展では、貴重な初期作品を再構成し、最新作とあわせて展示します。
もの、空間、イメージがからまり生まれる迷宮の、その先に開かれる「空き地」へ、どうぞお越しください。

府中市美術館WEB

府中市美術館
2023年12月16日(土)~ 2024年2月25日(日)
https://www.city.fuchu.tokyo.jp/art/tenrankai/kikakuten/Mio_shirai.html


白井美穂映像作品上映会とアーティストトーク
2000年代の映像作品を特別上映し、白井美穂とゲストが語ります
■日時:2024年1月13日(土)午後2時から(終了)
 ゲスト:松浦寿夫氏(画家・美術批評)
■日時:2024年2月12日(月祝)午後2時から
 ゲスト:沢山遼氏(美術批評)
開場は30分前、終了は午後3時半を予定
当館1階 講座室

アーティストトーク(対談)「豊嶋康子と見る、白井美穂展」
東京都現代美術館で個展開催中の豊嶋康子との対談
日時:2024年2月18日(日)午後2時から
会場:当館2階 企画展示室 (企画展観覧料が必要です)

展示風景:プレス向け内覧会で撮影



イン・ビトウィーン

早瀬龍江《戯れ》 1952  福岡市立美術博物館・福沢一郎記念美術館蔵

本展は近年当館の収蔵作家となった早瀬龍江(1905-1991)、ジョナス・メカス(1922-2019)、林芳史(1943-2001)に、ゲスト・アーティストとして潘逸舟(1987年生まれ)を加えた4名の作家に焦点を当て、作品や関連資料、関連作家の作品を交えながら紹介します。
日常と非日常、虚構と現実、過去と現在、国境、ジェンダーなど、世界には目に見える、あるいは目に見えない多くの境界があります。境界の存在は、向こう側を曇らせてしまうこともあれば、他方では自分の居場所を守るための拠りどころになることもあるでしょう。過去から現在まで、多くの作家がこうした境界の多様なあり方に着目し、作品を通してそれを浮かび上がらせようとしてきました。また、境界に立つ当事者としての自身のアイデンティティに向き合い、制作を続ける作家も少なくありません。


早瀬龍江(はやせ・たつえ/1905-1991)
北海道の奥尻島に生まれる。女子英学塾(現・津田塾大学)在学中に油彩を始め、福沢一郎の絵画研究所に通い、そこでシュルレアリスム絵画と出会う。ヒエロニムス・ボス風の幻想的な作品や、自身の容貌や食物、日用品等をモチーフにした作品を手がけ、美術文化協会などに発表する。1943年より夫・白木正一とともに現在の埼玉県飯能市に居住し、49年同地に白木美術研究所を設立。1958年白木と渡米し、89年までニューヨークに滞在、絵画や立体作品の制作を続けた。

埼玉県立近代美術館WEB

埼玉県立近代美術館
2023年10月14日(土) ~ 2024年1月28日(日)
https://pref.spec.ed.jp/momas/2023in-between

同時開催
アーティスト・プロジェクト#2.07
永井天陽 遠回りの近景
https://pref.spec.ed.jp/momas/artist-project207

画像:プレス向け内覧会で撮影


ユリイカ2023年12月号 特集=長谷川白紙

加速し攪乱するシンガーソングライター
多種多様な音楽のエッセンス、柔らかな肉声、不可思議なことばの連なり、それらをデスクトップ上で混ぜ合わせた唯一無二の「歌」を、衝撃と混乱とともに轟かせてきた長谷川白紙。LAを拠点とするBrainfeederとの契約が発表され、ますます世界中で注目度を高める革新的なサウンドに身を委ねれば、これからの音楽が聴こえてくる。「わたし自身の身体による音楽の攪乱」——長谷川白紙自身によるマニフェストを受け取り、CDデビュー5周年を迎えた先にひろがるカオスな風景を描き出す。

プレスリリース

http://www.seidosha.co.jp/book/index.php?id=3875&status=published


弊誌で特集したKOURYOUさんによる作品がユリイカへ掲載されています。ジャケット制作時のドローイングを再構成したものとのこと。




弊誌へレポートを寄稿してもらっている東間嶺さんが運営するオルタナティブスペースナミイタ、それが付属するアトリエトリゴヤ並びに隣接するアトリエ306へ、隣接する造園業者の敷地の火災が延焼しほぼ全焼しました。当該敷地を間借りしていた人物による失火が原因とのことです。これによりナミイタが活動できなくなっただけでなく、アーティストの数十年にわたる活動の記録と作品が破損、消失する事態となりました。
連日、罹災後の状況報告がnoteへアップされています。義捐金の募集もしているのでそちらをご覧ください。


画像提供:東間嶺




表紙について

12月タイトル
クリスマスが近づくある日、メイド養成学校のオンボロ・ミラ寮に届いた一通の手紙。
ポンコツ少女たちはひょんなことから怪盗をすることになって…!?

解説
サンタクロース伝説をモチーフに、少女たちの変身×怪盗物語を想定しています。学校で落ちこぼれている少女たちが、怪盗活動を通して成長し、自分に自信を持てるようになっていきます。敵キャラが出てきたり、怪盗の指示や援助をしてくれる謎の手紙の差出人など、気になる要素がたくさんあります。
少女マンガの怪盗モノといえば、立川恵先生の『怪盗セイント・テール』(なかよし、1994-96年)と種村有菜先生の『神風怪盗ジャンヌ』(りぼん、1998-00年)が当時流行し、テレビアニメにもなりました。ここでの怪盗は「良い」怪盗であり、人々を助けるスーパーウーマンでした。本作もそれに倣い、困った子供たちを助けるヒーローの設定です。
作画については、90年代に『美少女戦士セーラームーン』シリーズ(なかよし、1992-97年)で大活躍した竹内直子先生のカラー原稿を参考にしています。染料系カラーインクの特性を活かした繊細なにじみの表現は、少女にみずみずしさや宝石のようなキラキラした眩しさを与えるように感じられます。髪の毛やリボンの部分に注目してみてください🎀

宮野かおり




あとがき

原稿募集中です。掲載希望される方は下記連絡先まで。

弊誌お知らせへの掲載、あるいは取材を希望される方はプレスリリースを下記連絡先まで送ってください。
展示や内覧会についても招待いただければ取材へうかがいます。
スペースは美術館、ギャラリー、オルタナティブスペースどこでもokです。また美術に限定しませんのでお気軽に。

取材してレポートを執筆してもらえる記者、展示レビューの執筆者を募集中です。

画像は全て許可を得たうえで掲載しています。無断転載はできません。

企画・編集:みそにこみおでん
スタッフ(校正担当):シロクマ

表紙絵:宮野かおり

連絡は下記へみそにこみおでん宛にお願いします。
E-mail: aspma260[あっと]gmail.com
X(旧:twitter):@misonikomioden
facebook: https://www.facebook.com/misomuoden

レビューとレポートバックナンバー
https://note.com/misonikomi_oden/m/m075a5bacea51