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行ってきます。行ってらっしゃい。

「なにか悲しいことでもあったのかな? 」キョトンと首を傾げて尋ねてみたくなるほどに雨が降る。空が泣いてる。もうこれでもかってくらい泣くからむしろ気持ちが良くて。低気圧の頭痛にやられながら雨音を聴くことにした。

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先週からだんだんと天気が下り坂になると同時にわたしのこころも下り坂になるのがわかる。頭がすっきりしなかったりモヤモヤ雲がこころに停滞してしまったようで、もふもふの布団にゴロンとする時間が増えた。

なんでこんなにそわそわするのかな...
あ、そうか。今日は花火大会だからだ。

思い出したように飛び起きた土曜日の昼過ぎ。

数年ぶりに五月病にかかっていないせいか、初めて出会うか景色ばかりが瞳を捉える。

5月ってこんなにも繊細で綺麗で温かい季節だったんだ。

花火の余韻を引きずってアイスコーヒーを片手に夜の公園のベンチへとぼとぼ歩く。

「夜風に当たりたかった」そんな、風に吹かれたらふわっと夜空へ飛んでいってしまいそうな頼りない理由をつけて、もう少し一緒にいたいと時間を引き伸ばす。

わたしたちが一緒に過ごした校舎。紺色の膝丈スカートをなびかせて教室の窓、どんなふうに5月の空を見上げてたっけ。

「大人になった」今も、わたしたちはこうやって肩を並べる。体育のあとの炭酸缶ジュースが、アイスコーヒーに変わっただけで。

本当はなにひとつ変わってない。

***

フリーでライターを始めてもうすぐ半年になる。と言っても、最初の2ヶ月の収入はほとんど飲食店でのアルバイトだったし朝起きるのが辛かったり、ここだけの話し死にたいと強烈に思う朝もあった。そのときはわからなかったけど、鬱っぽい症状が根っこから取れていなかったんだと思う。

それでも書いた。

お金になろうがならまいが、書いた。

桜の蕾が膨らむ頃には、ライターのアルバイトも都内の企業で始めた。

最初は怖かった。怖がってる自分に、少し驚いた。自分にとって会社は怖い場所で、また同じことが起きるのではと内心ハラハラしていた。わたしにとって「会社」が精神的に大きなハードルになってしまっていたらしい。

家でも、会社でも、カフェでも、しがみつくように書いた。

そしたらだんだん、身体がペースを掴んでくれて。少し遅めの電車に揺られる朝が綺麗だと思えたり、オフィスで人とたわいもない話をしたり。こころの揺れが収まってくるのがわかる。大きくドッタンバッタンと音を立てるシーソーのような激しい揺れから、そよ風で鳴る風鈴くらいに。規則正しい生活が心地よくなっていった。

なんだ、できるじゃん。

完璧ではないけれど、一歩一歩"心地いい"に近づいてる。だからこそ気づけた。心に隙間風が吹き抜けるモヤっとした気持ちに。

その隙間を突き止められたのは、お世話になっているメディアの編集長に人生相談にのってもらったのがきっかけだった。


自分と同じビジョンに向かって走る仲間が欲しいんだと思います


自分の口からぽろりと、溢れるように出た。

フリーでずっとやっていくことに納得感が生まれなかった。違和感、というほどの大きなしこりではない。自由度が高い働き方はわたしに合っているし少し前のわたしは、とりあえずフリーで書き始めようと、ぬるりフリーライターになったのだ。そうせざるを得ない選択の一つだった。

だけど今は、もう少しだけ顔を上げられるようになった。ただ文章を極めたいんじゃない、ビジョンを追いかける手段としてわたしは文章を書くことを選んだんだ。

好きだから。文章を書くことが、心底好きだから。

行ってきますと行ってらっしゃいが編む居場所

新卒で入社した会社では、先輩たちが「行ってきまーす! 」と黒いバックを肩にかけて元気よくオフィスを出ていく姿となるべくまっすぐに「いってらっしゃい! 」と返すのが自分の声が好きだった。

なんだか、仲間だよ居場所だよって目に見えるカタチが一瞬のコミュニケーションに現れるようで。いざ自分が営業に行くときは、ちょっぴり意識した大きな声で「行ってきます! 」を言う。

モヤモヤに、あの瞬間が、吹き抜けた。

ああ、そうだ。わたしは行ってらっしゃいと行ってきますが言える仲間が欲しかったんだ。

働き方は与えられるものじゃなく自分でつくっていくもの。居場所もきっとそうだ。

「すぐに」できなくても、向かいたい方へ「歩く」。いつか必ず、たどり着く。


だって今日は良い天気。

バケツをひっくり返したように雨が降っていた日もあれば、カラッと青空と太陽が大活躍の日もあるのだから。

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