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2022年暮らした街の回顧録:静岡・用宗

1年間家を持たずに旅するように暮らしてきた私が、2022年に暮らした街を振り返る回顧録エッセイです。当時書いた日記やnoteを読み直し、さらに「今感じること」を付け加えたようなもの。多拠点生活の中で、奇跡のように出会った街に感謝の想いを込めて。じっくりと丁寧に書いていきます。

2021年の暮らした街を振り返ったnoteはこちら。

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2022年に初めて訪れた街として印象に残っているのは、静岡市にある用宗という街。この1年間で3回も立ち寄ってしまったお気に入りの場所。「海の近くで日常を送る」という理想の生活がハッキリと思い浮かぶようになったきっかけの街でもある。

しらすが有名な港町でもある

静岡駅から2駅ほどしか離れてないにもかかわらず、「もちむね」とひらがなで書かれた小さなホームを降りると、ゆったりとした雰囲気で私を出迎えてくれた。「なんだか、のんびりしているなあ」と思ったのが第一印象。「なんとなくよさそうだな~」となんの根拠もない感覚を抱いたのも覚えている。

富士山もしっかり見えたりする

用宗を初めて訪れたのは、2月の本格的な寒さのなか。寒い寒い朝の時間に散歩に出かけた。私が滞在していた家から海へは、まっすぐ道を進んで3分くらい。こんなに海が近い場所に住むなんて。海のない岐阜県で生まれ育った私にとっては驚きの連続だった。路地を抜け、その先にうっすらと青い水平線のようなものが見えたときに、その驚きはますます膨れ上がった。

この景色に出会ったことを忘れられない

路地と標識の向こうに見える、青い海。そんなもの、いってしまえば単にそれだけであるのに、ここまで心が動くとは。なんてことない青い景色に、心がスッとして満たされてゆく感覚がしっかりと伝わってきたのだ。

飲み込まれてしまいそうなほどの、青

やっぱりこの、海がすぐそばにあるこの小さな街は、私の肌にとても合った。晴れた日には朝と夕方、2回も散歩に出かけたくなってしまうほどに。

近所の人同士で話してたりもした

ただ、そうやってこの景色を「いいもの」として捉えているのは、私だけじゃないようだ。夕方になると犬の散歩をする人、ランニングをする人、腰かけて海をぼーっと眺めている人、たくさんの人の姿が行き交う。

完全に、海が日常に溶け込んでいる暮らし、だ。私がずっとずっと恋い焦がれてきた暮らし。この人たちが生まれたときからこの暮らしを享受していることに、ある種の嫉妬を覚えるほどに。

そこに暮らす人たちにとって海とは、いまさら「この海が好きだ!きれいだ!」と毎回感動するものではないかもしれない。けれど、その域を超えた、「日々の暮らしにある、なんだかいい感じのもの」として寄り添い続けているように私は感じた。

どこを歩いても海が見える

海のある暮らしに全然なじみがない私は、とりあえず海のある暮らしをしてみたい、といろんなことを試してみた。海沿いを1時間以上ひたすら歩いてみるとか、海の近くにあるパン屋さんでパンを買って海を見ながら食べてみたりとか。

外で食べるパンは格別

海を眺める時間を意識的に取るようになったら、いろんな発見があった。太陽の光に照らされて海がこんなにもキラキラに輝くこと。釣りをしている人の少し猫背な後ろ姿。海から感じる爽やかに吹き抜ける風。朝5時頃でも散歩をしている人がいること。

こんなにキラキラ輝くものなんだ

あったかくなってきた5月にふたたび訪れたときは、日が昇るのが5時前だった。がんばって4時半に起きて、朝日を見に海へ向かう。普段だったらそんなことしないのに。コーヒーを家で淹れて、海をぼーっと見ながら味わったこともあったっけ。ぼーっと、ただただ波が寄せては返す姿を眺めていたり道行く人を観察していたり。

すぐそばにある、暮らしを愛すること

用宗で過ごした2週間ほどの期間は、特別に観光をしたり遠出をしたりしたわけではない。今振り返ってみても、歩いてしかいなかったんじゃないか、海しか眺めていなかったんじゃないか、と思えてくる。

何もしていないのに時間が足りない

けれど、なんにもしていないのに、時間が足りない、と思ってしまうほど、用宗で過ごした時間は私にとって豊かだったと、今になってもそう強く感じる。海のある暮らしの心地よさを全身で受け止めて、理由も分からぬまま不思議と心地よい時間が流れていく。

これからも、この心地よさの中で私はいつまでも過ごしていたいなあ、と思うのだ。

私は「海」が好きなのではなくて。「海がすぐそばにある暮らし」と「海のそばで暮らしている人たち」が好きなんだと改めて気づけた街。いまでもふとどこまでも果てしなく広がる青い海に、会いたくてたまらなくなるときがある。また、会いに行こう。

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用宗で過ごしたときのことと、用宗で出会った人のことを書いたnoteです。

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