【ちょっと大人向けの絵本】いつかあなたをわすれても
「ホテルローヤル」で直木賞を受賞された桜木紫乃さんの初絵本「いつかあなたをわすれても」。絵本っぽくない表紙なので、いったいどんな絵本なんだろう…と興味津々で手に取ってみました。
最初、恋愛要素のある絵本なのかな?と思ったりしたのですが、全然違いました。認知症になったおばあちゃんが色々なことを忘れていく様子と、そのことに対して冷静に向き合う母親の姿が、孫である女の子の視点で書かれています。
10代の女の子が主人公であり、文章も難しくはないので、お子さんが読んでもいいとは思いますが、小学生くらいだと途中にでてくる母親の感情があまり理解できなかったり、不思議だな、と感じるかもしれません。
(作中の女の子も、母親の話を「ふーん、そういうものなのかな?」という感じで聞いています。)
大人向けに書かれた絵本であり、しかも祖母、母、娘と、登場人物は女性ばかり(穏やかな感じの父親もちょっとだけ登場しますが)ということもあり、特に女性、なかでも親が高齢者になった世代(私もそうです)にはより響く内容だと思います。特に大きな事件があるわけではなく、母親の語りや娘の思いが描かれているのですが、私はきゅーっとした気持ちになったり、穏やかな気持ちになったり、過去のことを思い出したり、未来のことを思い描いたり、いろんな感情になりました。
「さとちゃん」というのは少女の祖母のことです。母親(祖母)が娘(母)にやきもちを妬くという、母娘ならではの感覚を描いています。
孫が老いていくおばあちゃんを見て「老い」や「介護」などについて考えさせられる絵本というのは他にもありますが、この絵本はその間に母親を挟んで、「祖母と母」「母と娘」の関係についても考えさせられます。それによって、大人向けの絵本になっているのだと思います。
うちの6年生の娘は、普段目にする絵本と毛色が違うので、思うところがあったようで何度か読み返していました。
私の母の年代の方が読んでも、また思うところはあるでしょう。
子育てがひと段落して、介護をすることになるというのが、そう遠くない未来に来ているな、と感じる今日この頃。40代くらいになると、一度は親が認知症になってしまったら、自分が将来認知症になってしまったらと考えることはあると思うのですが、介護する側になったとき、この本の母親のように、悲しまずに冷静に受け入れられたらいいな。
また時間を空けて読み返したい絵本です。
この「いつかあなたをわすれても」は桜木さんの作品「ホテルローヤル」、「家族じまい」とつながっていて、実体験も入っているようなので、絵本ではありませんが、この2作品も読んでみたいです。
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