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グローバル教育が世界を変える

今グローバルで起きていること

今グローバルで起きていることは、人類が直面している大きな変革である。地球の人口の2割を占める中国の経済発展は、地球規模でCO2(二酸化炭素)の排出による温暖化、世界天然資源の枯渇化、グローバル規模での経済戦争を巻き起こしている。
 
 2018年にアメリカのトランプ大統領が仕掛けた中国との貿易戦争は世界経済にも波及してきている。貿易戦争は欧州・日本へのデフレ圧力になり、貿易摩擦の生じた業界によっては大きな経営圧力となり国内生産の縮小を与儀なくされた企業も多く、世界的に益々企業間の競争が増している。
 
 世界的な企業競争が加速している中で、企業の時価総額ランキングを見るとアップル、アマゾン、グーグル、アリババと言ったIT企業が数十兆円規模で世界の資金を集め、世界経済をリーディングしている。それらのIT企業を牽引しているのはスティーブ・ジョブズ、ジェフ・ベゾス、ラリー・ペイジ、ジャック・マーといった世界的なリーダーである。
 
 日本ではソフトバンクの孫正義、ユニクロの柳井正、楽天の三木谷浩史といったリーダーが企業経営を牽引しているが、世界的な規模で考えると大きく引き離されている。また、世界的に経済をリーディングしているIT業過で考えると日本のIT企業は世界的な企業が育っておらず、IT業界に於いて日本は後進国となっている。
 
 世界第2位の経済大国であった日本は2010年にその座を明け渡した以降、少子高齢化・生産性低迷・社会保障負担の増大などで国内需要の低迷と輸出産業の競争力の低下により経済の低成長が続き、世界経済の成長から益々引き離されてきている。
 
 その経済低迷の原因の多くは日本国の少子高齢化、社会保障費の増大等による構造的な問題であるが、一番の問題は、その構造的な問題を事前に予想していたにも関わらず日本国として大きく構造変換が出来なかったことにある。

日本国に於いて大きく変革が出来ない原因

日本国に於いて大きく変革が出来ない原因は政治・経済界のリーダーの不在と、リーダーを生まない日本の社会的な風土、文化と種々の保守的な教育を含む社会制度にある。この問題は過去の歴史的・地政学的な背景と日本人の民族的な遺伝子や感じ方・考え方のメンタリティが影響しているため、簡単に解くことは出来ない。
 
 国の変革を生むような大きな問題は、その問題を地球規模でグローバルに把握し考えられる感性と知識が必要であるが、残念ながら今の日本の教育では地球規模でグローバルに考えられる感性の鋭い人材を育てる気運が低かったと同時に、そのようなグローバル人材を育てられる人もいなかった。
 
 まず大切なことは、グローバルで起きている日本の危機を把握し、その危機を回避するために行わなければならないことを重要度、緊急度の評価軸で整理して、その課題を国家として認識してコンセンサスを得ることである。その為には、危機を多くの政治・経済界のリーダー、教育界のリーダーと共有する必要がある。
 
 しかし、日本の危機を救うような大きな変革のステップは、重層的かつ複雑なシステム系で出来ており、かつイデオロギーのようなマインドセットによる制約や抵抗勢力の存在、既得権層や利害関係者の構造的な問題が存在しているため、うまく進めることが難しい。また、その難しさを理解できる人も少ない。

 複雑系に陥っている危機的な問題を解くためには

この複雑系に陥っている危機的な問題を解くためには、複雑系を理解できるシステム的な思考力と、原因と結果の因果関係を客観的に解きほぐす論理力と、その論理を関係者に伝えることの出来る感性と情熱が必要である。但し問題には、解く側以上に、解かれる側に本質的な問題が内在することを良く考慮する必要ある。
 
 変革のステップとして有名なものに「コッターの変革の8ステップ」がある。これは企業の変革について解かれたものであるが、国の変革で考える場合は、この変革ステップにシステム思考をベースとした「学習する組織」の概念と、国民の変革を推進するためにはマスコミやソーシャルメディア等の様々なチャンネルの活用が必要である。
 
 基本的なコッターの変革ステップは下記の通りである。
1)危機感の共有、2)危機感を共有した変革チームの結成、3)ビジョンと戦略シナリオの立案、4)変革ビジョンの理解者の拡大、5)理解者による変革活動のプロモート、6)短期的な成果の実現、7)短期的成果を活かして更なる変革を推進、8)新しい方法を文化として定着させる。
 
 この変革ステップは多くの変革に適用できる。かつて日産のV字回復を果たしたカルロスゴーンは、日産の危機感を共有した上で全社の危機的課題に対応する組織横断型のファンクショナルチームを結成し、短期的成果を出すことで新しい日産の企業文化を作った。
 
 また、長い目でみれば、ワールドカップに於ける日本代表の活躍は、世界に於ける日本サッカーの挫折から始まり、危機感を持ってJリーグを設立して、日本にサッカー文化を根付かせることで若いサッカー選手の育成、底上げを行い、その若い選手が世界レベルの海外チームに遠征して実力を上げることで日本は2018年に漸くワールドカップの決勝リーグで悲願の1点を入れることが出来た。
 
 日本は世界のサッカーで勝つための基盤としてJリーグを1993年に結成して、ワールドカップの決勝リーグで1点を取るまでに25年の歳月を経た。これは30年以上前に日本サッカーを世界のサッカーで勝てるようにするための情熱を持った人たちがビジョンを語り、Jリーグを基盤とした戦略シナリオを作成し、実行して初めて叶えられたことである。日本中のサッカーファンの願いと思いが勝利には結びつかなかったが、貴重な決勝リーグの1点に繋がったことは歴史的な出来事であったと思う。

日本が世界を導くような世界的なリーダーを輩出するためには

翻って、日本が世界を導くような世界的なリーダーを輩出するためにはどうすれば良いのであろうか。まずは、コッターの変革の8ステップの最初にあるように、危機意識を共有し、ビジョンを掲げ戦略シナリオを練って、そのシナリオのPDCAを回す仕組みを作り、短期的成果から長期的な成果に繋がる実績を出していくしかない。
 
 そのシナリオの一つとして個人的な思いでしかないが、下記のようなシナリオを考えている。

1)2050年、日本が世界の成功モデルとして若者と高齢者が共存できる幸福な福祉国家を実現する

2)働き方改革に加えて教育改革により小中高大の一貫したグローバルリーダー教育の実践

3)グローバル教育の基本に「システム思考」と「倫理教育」を据え、小学校から基礎教育を行う

4)上記グランドデザインの元、グローバル教育を国家的に行うための推進組織を作り、その推進組織をハブとしたグローバル教育ネットワークを産学官の連携で作る(グローバル教育の基盤となる)

5)高校・大学では、グローバル教育を受けた学生が起業家となり日本のイノベーションを加速する

6)企業としての評価額が10億ドル以上の「ユニコーン企業」を2050年までに100社作る

7)日本が世界からAI(人工知能)の研究者を呼び込みAIの倫理教育に関する国際センターを作る

8)AIを活用した世界最高の生産性を少子高齢社会で実現して日本が世界のお手本になる
 
 以上のシナリオはまだ妄想段階でしかない。しかしいずれにしても、グローバル教育が世界を変えるための教育基盤になると思われる。そしてグローバル教育が世界を変えるためには「システム思考」と「倫理教育」が鍵を握っているのではないかと思う。

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