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第2話:わたし達の前に横たわるジェンダーの「壁」

男性育休の法改正までのヒストリーを語るマガジン。前回の第1話では「法改正で男性育休の何が変わった?」について書きました。

第2話の今回は、私たちがこの活動を始めた2018年当時の背景や、女性の前にも(実は男性の前にも)大きく横たわっていたジェンダーの「壁」についてお話しします。


(1)国難対策、女性に押し付けてません?

人口減少社会、待ったなし。日本の人口は14年連続で減少し、50年後には働ける人が今の半数にまで減ると言われています。まさに国難です

この国難に対して、政府は当時も「女性の社会進出」や「少子化対策」を掲げ、女性の就労率や出生率の向上を目指していました。でも、働いてほしい、子どもを産んでほしい、という要求はすべて女性に向けられていたように思います。

2018年のイベントで使ったスライド

国難なのに、人口の半数を占める男性は関係ないの?その疑問が、私たちの出発点でした。

(2)「女性の社会進出」と「男性の家庭進出」

問題を女性だけに押し付けないためにはどうすればいいか?2018年、私たちは、「女性の社会進出」と本来セットで語られるべきもの、表裏一体のものとして、「男性の家庭進出」をメッセージとして打ち出しました

「家庭進出」がセンセーショナルなタイトルとなった、前田晃平さんの名著『パパの家庭進出がニッポンを変えるのだ!』が出版された2021年より3年も前のことでした。(※この本は名著なので、まだ読まれてない方はぜひ)

メッセージを打ち出した私たちが、まず初めに取り組んだのは、「男性の家庭進出」が成されれば、「女性の社会進出」が達成されるのか?の検証です。

まず、この検証に用いた2つのデータをご紹介いたしましょう。

データ1:ガラスの天井指数

1つ目のデータは、英国「エコノミスト」誌が毎年発表している「ガラスの天井指数」です。

経済協力開発機構(OECD)加盟国を対象に、男女の高等教育や労働力率、賃金や育児費用など10項目から算出したもので、指数が低いほど女性の社会進出を妨げる障壁が高いことを意味します。

日本は、OECD加盟国29か国中、28位に低迷していました。(※2022年も28位

ガラスの天井指数(2018年版)

データ2:夫婦の家事育児時間

もう1つのデータは、6歳未満の子どもを持つ夫婦の1日あたりの家事・育児時間です。

当時、夫が家事・育児に費やす時間は67分(女性の約1/7)で、他の先進国と比べて最低の水準でした。(※令和3年の統計はこちら

6歳未満の子どもを持つ夫婦の家事・育児時間(内閣府資料を基にmiraco作成)

データ1とデータ2の相関

「女性の社会進出」と紐づくデータ1と、「男性の家庭進出」と紐づくデータ2の相関をグラフ化したのが下図。

男性が家庭に進出しないと、女性は活躍できないことは一目瞭然…ですよね?

「女性の社会進出」と「男性の家庭進出」の相関

(3)男性として感じた「壁」

2017年に、待機児童問題の解消を訴える活動を始めたmiraco。複数いる男性メンバーの1人として、私も子育て環境を少しでも良くしたいと思って取り組んできました。

政治家に会ったり、取材を受けたりする時は、女性メンバーだけでなく、男性メンバーも同席し、男性も子育ての問題を真剣に考えていることを伝えてきました。miracoが主催するイベントにも、男性の姿が多くありました。

しかし、翌日の新聞やテレビに踊るのは「母親らが…」の見出し…

活動の中で、男性としても『性別役割分担意識』の壁を幾度も感じてきました。(当時の忸怩たる思いの詳細は、私の「なぜmiracoで活動するのか?」の記事に詳しく綴ったのでお読みいただければ嬉しいです)

(4)「壁」をぶっ壊したい!

女性の社会進出にも壁。男性の家庭進出にも壁。性別役割分担意識にも壁。壁、壁、壁。壁ばかり。

職場に働きかけて、身の回りに小さな穴を空ける。そんな活動も個人的にコツコツ続けていましたが、連なる壁に1か所だけ小さな穴を空けても、広がる空や明るい未来は見える雰囲気はありませんでした。

1か所ではなく、あちこちで。上からも、下からも。この壁をぶっ壊したい!当時、そんな思いを抱いていました。

当時、私の頭の中にあったイメージ

次回:社会活動に必要なもの、戦略の立て方

次回、第3話では、この壁をどうやって壊すかを考えるための戦略や戦術を考えるために用いた手法や、社会活動に必要なものについて紹介したいと思います。

別の社会問題の解決に向けて活動しようとしている方々の参考にもなるかも知れません。ぜひお楽しみに!

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(文責:りょうたっち)

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