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第1話:法改正で男性育休の何が変わった?

(1)男性育休の新マガジン、スタート!

こんにちは。みらい子育て全国ネットワーク(miraco)では、男性の育児が当たり前になる…そんな空気を醸成したいという思いから、活動の一つの柱として、男性育休の法改正に向けた取り組みを行ってきました。

政治家との直接対話やロビー活動、市民と政治をつなぐイベントなど、様々な立場の人と議論し、手を取り合いながらチャレンジしてきた活動が実を結んだのが、2021年6月に可決された育児・介護休業法です。

新連載のマガジン『男性育休の「壁」を崩す法改正までの道のり』では、戦略や計算をした部分や、想定外のラッキーで雪だるまが転がっていった部分なども含め、miracoメンバーが法改正に向けた活動の中で体験したことを手触り感をもって綴りたいと思います。

マガジン初回の今回は、まずアクションの結果から。2022年4月から段階的に施行された『育児・介護休業法法改正』で何が変わったのかを紹介します


(2)この法改正で何が変わったのか?

この法改正では、従来の育休制度の改善と、「産後パパ育休」という新しい制度が設けられました。その概要をまとめたのが下の画像です。

法改正の概要(厚労省の資料等を基にmiraco作成)

この法改正では、職場風土を改善するために企業に対して、①個別周知の義務②取得率公表の義務、の2つの「義務」が追加されました。また、産後すぐの子どもの育児に夫が主体的に関わりやすくすることを目指した「産後パパ育休」の新設が法改正の大きなポイントとなります。

ちなみに、②の義務によって公表された取得状況は厚労省の「両立支援のひろば」から検索できます。あなたの会社、情報開示されてます?

(3)法改正の効果は?

この制度の効果としては、以下のようなものが期待されています。

1) 母親の体調回復や精神的負担の軽減

母親の産後の体調回復や精神的負担の軽減が特に必要となる産後8週にターゲットを絞った産後パパ育休。申請期間が短くなり、分割取得や休業中の就業も可能となることで、父親が育休を取得しやすくなりました。産後うつの可能性がある初産婦は、なんと4人に1人。妊産婦の死因のトップは、自殺です。パートナーの命を守る…その観点でも、産後パパ育休の取得を考えてみてはいかがでしょう?

2) 男性の背中を押す、選択肢に気付かせる

会社や上司の反応を気遣って、育休を取得したくても取得したいと言い出せない空気も一部の職場にはあったと思います。また、そもそも自分が育休を取得するという選択肢を頭に思い浮かべることすらなかった男性も少なくはなかったことでしょう。

今回、制度の周知や取得の意向確認を、企業から従業員に個別にすることが義務付けられました。会社側からの働きかけによって、育休取得に向けて背中を押す効果や、男性に育休という選択肢を考えるきっかけを与えることが期待されます。

3) 子どもや母親…家族への好影響

実際にこの制度を利用した方々からは、「子どもと一緒に過ごす時間が増えて嬉しかった」「家事育児を通して妻への感謝や尊敬が深まった」といった声が聞かれます。産まれて間もないわが子と父親が過ごす時間は、父親にとってはもちろん、子どもや母親にとってもかけがえのないものとなるでしょう

また育休は、男性が家庭にコミットしたり、家事育児のスキルを習得するきっかけにもなるとも言われています。育休から復職した後も、家事育児は続きます。共に生活を営む上で、心強い仲間や戦友が家庭内にいることの好影響は計り知れません

父子の愛着形成にも、産後は大事な期間(もちろんずっとその先も)

4) パフォーマンスもレジリエンスも高い職場へ

育休取得者の声からは「職場からも応援された」といった感謝の気持ちも聞こえてきます。私たちは感情をもたない機械ではありません。心を持った人間です。取得に反対されてパタハラ(パタニティハラスメント)をした職場や上司の下で働くのと、快く送り出してくれた仲間と共に働くのとでは、パフォーマンスに雲泥の差が生まれることは言うまでもありません。

また、身の回りに育休を取得した男性が増え、育休が当たり前になることによって、男性が休む可能性があることが前提の風土が醸成されます。業務や情報の共有や、属人化の解消にも繋がります。病気や介護によって一時的に社員が離脱することに対して、職場のレジリエンスはグッと高まることでしょう。

(4)男性の育休、本当に増える?

法改正後、男性の育休取得率にも変化が現われつつあります。2021年度は13.97%でしたが、改正法の施行元年である2022年度は17.13%に伸びました。未だに低いという見方もできますが、10年前の1.89%と比較すると約10倍に伸びたとも言えます。

この先、取得率が3割、4割…と伸び、男性の育休が当たり前の社会になるのか…真価が問われるのは正にこれから。また、取得したけど実は数日だけの「なんちゃって育休」ばかりでは意味がありません。取得率だけではなく取得日数についても注視してみてください。

次回:横たわっていた「壁」

マガジンの第1話の今回は、改正された育介法と期待される効果を紹介しました。次回からは、2018年まで時計を巻き戻して、男性育休の「壁」を崩す法改正までの道のりを振り返っていきたいと思います。第2話は当時、私たちが崩したいと思った「壁」についてお話しします。

法改正に動いた市民活動ヒストリー全11話、ぜひお楽しみください!このnoteのフォローもお忘れなく!

#男の産休 #男の育休 #法改正 #市民団体 #社会活動 #育休の壁
(文責:りょうたっち)

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