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78.チームつくば(2)

昭和記念公園の立川口ゲートを通って、カナール(水路公園)の脇を直進する。多くの人々が右手の方へ流れていった。その先にはみんなの原っぱ方向に向かう道がある。
ここは今回の箱根駅伝予選会の走行コースで、選手たちは園内の周回コースからいったんこの道に入り、北口駐車場手前で折り返して戻っていくことになっている。(下図参照)

道の途中に、陸上自衛隊立川駐屯地につながる臨時出入口がある。前回、駐屯地方向に歩いている人たちの後ろに付いて行ったら、突然ヘリコプターに遭遇した、あの場所だ。特別な時にしか開いていないらしい。
多くの観衆が、予選会スタート地点を目指して駐屯地方向に向かっている。今回はおのぼりさんのようにキョロキョロしないし、記念撮影もしないぞ。早く行って選手たちが見える場所を確保するのだ!
はやる気を抑えながらずんずん歩いていくと、前方の群衆の先にフューチャーブルーの幟が見えた。筑波大学のウェアを着た、数人の学生らしき集団が歩いている。
イヤッホー!なんてラッキーなの!筑波大学の陸上競技部の人たちかな?後ろにくっついていけば、他の陸上部員さんたちが集合している場所にたどり着けるかもしれない。後ろで一緒に応援させてもらえるかな。
でも、あんまり近づくとストーカーっぽいから( ̄▽ ̄;)、少し離れて付いていこう。
他の人々と同じく、彼らは途中から道を外れて臨時出入口をとおり、駐屯地内に入っていった。

そのとき気づいた。
集団の中にいる、ひとりの学生さんに。

池田親くん。

背が高いから、すぐにわかった。6月まで駅伝主将を務めていた池田くん。
同じく4年生の植田樹くんもいた。植田くんは理工学群の学生だが、春先までは箱根駅伝復活プロジェクトのメンバーとしてがんばっていた。そして2年前、箱根駅伝予選会のことを何にも知らない私が、昭和記念公園の西立川口で「ファーストコンタクト」したのが、ほかならぬ彼であった(それは後になって知ったのだが)。
おそらく植田くんは、6月よりも前に、就活もしくは院進のために事実上プロジェクトを離れていたのではないかと想像している(あくまで私の想像です)。当時まだ就職環境は厳しく、国立大だからといって簡単に就職できる状況ではなかったし、院進するなら進学対策が必要だからだ。
彼らは他の陸上部員の面々とともに、談笑しながら木立の間をぬっていった。

箱根駅伝復活プロジェクトを離れた彼らが、応援に来ている。
9月末の筑波大記録突破会のときも、Yさん情報でプロジェクトを離れた4年生たちが応援に来ていたと聞いていたけれど、じっさいに本人たちを見かけて、心が躍った。
箱根の神様、彼らに会わせてくれてありがとう。

彼らは、木立を抜けた先の開けた場所で、しばし歩みをとめた。

どうする、どうする。

今だ、今しかチャンスはない。
私はまたもや、清水の舞台から飛び降りた。心臓がバクバクする。
「こんにちは、あの、クラウドファンディングしてる者です。」
不審者オーラ全開で声をかける。
だが、今日の私は最強だ。だってクラウドファンディングでもらったTシャツを着ているのだから。

学生さんたちは、すぐに合点したようだった。
「えと、記念撮影させてもらっていいですか?この子と一緒に」
あせあせと、リュックからいだてんまぁるを取り出した。
「いいですよ!こんな感じでいいスか!?」
池田くんが笑いながら、いだてんまぁるをわっしとつかんだ。
植田くんがそのようすをニコニコ眺めていた。

スマホを構えながら、ちょっぴり泣きそうになった。
写真がブレブレなのはそのせいだ。
いだてんまぁるは、ドヤ顔でカメラに収まった。

私たちは、チームつくばだ。

お礼のあいさつをした後、私は、彼らの後を追うようにスタート地点に向かった。

その先には、さらに心強い「チームつくば」の仲間がいた。

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